大学×SDGs2025
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03チョコレートやオリジナルのトートバッグなどを販売いまは買わなくても、これからの選択肢に入れて欲しいアクションを起こすことができる学びの環境企業、生産者、消費者をイメージした手で「ICU」を描いたトートバッグと、ICUのマスコット「はちろう」をプリントしたハンカチタオル。「かわいい」から手に取ってもらおうと「はちろう」を取り入れた2月に開催したフェアトレードのチョコレートとコーヒーを試食してもらいながらパネルを見てもらう販促イベント。おいしさを知り、フェアトレードへの認識を深めてもらった Photos by Kyoka Horiuchiフェアトレード班は、学食で定期的に「フェアトレードギャラリー」を開催して商品を販売している。今年2月はチョコレート16種類を集めて販売したところ、多くの学生や職員が購入した毎年キャンパスで開催する「フェアトレードリユニオン」は、フェアトレードに関心のある高校生や大学生、一般の人が参加するイベント。企業や団体、行政などの講演を聴いてグループワークを行っている6月のフェアトレードギャラリーでハンカチタオルを初めて披露。トートバッグ、チョコレート、フィリピンの黒糖クッキー、スリランカのウバティーも販売した Photos by Yosuke Kobayashiイベント中は、フェアトレードについて詳しく説明したポスターパネルをつねに展示する。「通りすがりにポスターを見てもらうだけでも意義があります」と河西さん Photos by Kyoka Horiuchi布柴先生:フェアトレード班は、毎月のようにイベントを開催していますね。河西さん:はい。1月は、キャンパスでフェアトレード商品が買えることを知ってもらうために、コーヒーとチョコレートの試食の機会を設けました。パネルも展示して、発展途上国の労働問題や企業とフェアトレードの関わりなどを知ってもらい、その後の購買活動につなげました。翌月は、フェアトレードのチョコレートを購入するときの指針をもってもらおうと、2ブランド16種類のチョコレートを販売する「Fairtrade Chocolate Shop」を開催しました。15種類が完売するなど好評でした!布柴先生:オリジナルグッズの販売もはじまりました。どんな商品を開発したか紹介してくれますか?河西さん:国際フェアトレード認証をうけたトートバックとハンカチタオルです。これは、日本国際基督教大学財団の助成金を活用した「Fairtrade on ICU Campus」プロジェクトの一環で、たくさんの方の協力で実現することができました。開発した理由は、身につけることのできる布製品を通じてフェアトレードの楽しみ方を提供したかったからです。4月と6月のイベントでは、大勢の方が購入してくれてとても嬉しかったです。布柴先生:ICU生のみなさんは、リベラルアーツの学びを通じて日常的にSDGsに触れていますよね。私は、学んだことを生かして活動につなげることが授業のゴールだと思っています。助成金の調達なども含めて、河西さんたちの行動は社会に出てから大きく役に立つことばかりだと思います。布柴先生:なぜ、河西さんたちはフェアトレードに取り組もうと思ったのですか?河西さん:大学生になって、私たちはアルバイトで自分自身が稼いだお金で買い物をするようになりました。そうしたお金で購入する製品が、生産者の生活を脅かしていたり、環境を破壊したり、児童労働を引き起こしていたら、とても悲しいと思いました。フェアトレード認証のマークがついた商品を購入することで社会問題の解決につながるのなら、それをICU生の消費活動の選択肢のひとつにしてもいいのではないでしょうか。布柴先生:でも、フェアトレード商品は一般の製品と比べると高価ですよね。河西さん:実は、私も友だちへのプレゼントなど、特別なときに購入する程度です。イベントでも「高いから」と断られてしまうことはよくあります。でも、学生一人ひとりが1回でもフェアトレード商品を選ぶ機会が増えれば、積み重なって大きな変化につながります。今回購入しなかったとしても、いつか商品を選ぶときにフェアトレード商品も候補に入れてほしい。そんな想いでイベントを開催しています。布柴先生:商品を購入するとき、私たちには見えていないものがあります。なぜ、300円でTシャツが買えるのか? その背景には安い賃金で働いている人たちがいるわけです。それを知れば、フェアトレード商品を買えなくて300円のTシャツを買ったとしても、せめてそれを大切に長く着る意識が芽生えるのではないでしょうか。河西さんたちは、「見えていないものを知らせる」という大切な活動をしているんです。河西さん:私は、この活動ができるICUの環境に感謝しています。多くの人たちの力が積み重なってイベントができていることに活動を通じて気づけたり、それを想像できる力を身につけたりするのは、とても恵まれていることです。布柴先生:SDGsの目標と自分とのつながりを認識し、解決に向けて自分たちにできるアクションを考えても、それを実際の行動につなげて学校の環境改善を実践するところまでは難しいかもしれません。しかし、ICUでは学生がキャンパスの課題を見つけ、改善策を考え、それを大学に提案して改革していく土壌があります。提案がすぐに採用されるかどうかはわかりませんが、試行錯誤しながら実現につなげることで、批判的に思考することや解決に向けたアクションを創造することが習慣化され、やがて社会で役立つさまざまなスキルも身につくのです。最後に、フェアトレード班はこれからどのような活動を行っていきますか?河西さん:チョコレートのワークショップやフェアトレードに関する映画の上映会を通じて、もっと多くの人に知る機会を提供します。さらに、興味をもった学生が知識や理解を深められるように、「講演会や勉強会もできたらいいね」とメンバーで話しています。布柴先生:それは楽しみですね。ぜひともICUのキャンパスがより素晴らしい学びの環境になるように、さまざまなことにチャレンジしてください!フェアトレードは、開発途上国の人々がつくった製品を適正な価格で購入することで、生産者や労働者の自立を支援する国際的な取り組みです。国際基督教大学(ICU)では、SDGs推進室のフェアトレード班がその意義をキャンパスで広く啓蒙しています。具体的にどんな活動をしているのか、メンバーの河西凜さんと推進室 前室長の布柴達男特任教授が語り合いました。

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