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仕事のホンネ 現場に聞け!!
【テーマ】社会に出てとまどったこと

現代では“助けて”と言えない社会人が増えているが、これが現実だと思う。「助けて」といえないのは、社会人すべてに共通する問題である。「助けて」といえないで自殺する人は50代のほうが多いし、「助けて」といえずに老老介護の挙句、親に手をかけた60代、痴呆したパートナーを殺した70代などのニュースは珍しくない。だから、これは世代論ではなく、コミュニケーションの問題なのではないかと思った。北の地方都市に帰省して地下鉄に乗ると、車内の風景が、東京とずいぶん違っていた。そもそも荷物を載せる網棚がない(東京ほど、ひどいラッシュにはならないから)ので、上のほうがすっきりしているのだが、それだけではなかった。車内の中吊り広告が、三分の一程度しかぶらさがっていない。車両側面の広告スペースも半分くらい空いている。不況だからとよく言われる。でも、もう20年近くずっと続いている状態って、不況といえるんだろうか?30代になって間もない妹と話すと、「不況だ、不況だって言うからそう思うけど、実際そうでもないかも。別にブランド品を買わなくても、みんなユニクロやバーゲンで買い物しているし、外食だってしてるし、海外旅行にいかなくても、近場で楽しくやってるし。高級品売っててニーズにあわないところが、困ってるだけじゃないの」
という答えが返ってきた。要するに、実に不況慣れしている。今が特別悪いと思ってもいないかわりに、これから改善するという幻想も抱いていない。給料が、毎年あがるなんて発想もないし、ボーナスがバブルの頃の金額に回復するなんて、笑い話だと思っている。中学生のころからずっと不況だ、なんだ、といわれてきたからか、将来に対する期待がそもそもない。これに対して、30代後半の弟は、ちょっと違いそうだ。詳しい話はしなかったけれど、「こんなはずじゃなかった」という感じ。下の人間がなかなか入ってこなくて、なんだか、いつまでたっても下働きが続く。社会に出る前は、漠然と、会社に入ったら終身雇用と年功序列に守られて、30代半ばになったら当然課長くらいにはなって、部下をたくさん使うと考えていたのに、現実とのギャップはあまりにも大きい。毎年経済が成長するという時代に思春期を過ごして、不況が続くことを前提にしてこなかったから、妹と違って、これが当たり前だとは思えない。だから、自分の今の姿を受け入れることが、なんとなくできない。じゃあ、「社会」や「会社」が悪いのか? というと、入社したころに、たいした仕事もしないで高給をとっていた窓際族(いまや死語ですね、この言葉)を見て、嫌悪感を抱いたことがあるので、年功序列にすべきだ! と主張するわけにもいかない。会社の中で、人事評価の体系が変わったことにも理解がある。でも、自分の生き方を、変化した価値観にすぐに合わせるのは、難しい。
手探り状態になりながら、この枠の中で、頑張ってなんとかするしかない、という結論に達する。対する私、40代前半。入社したころは、バブルの残り香がまだあったけれど、新入社員にバブルの恩恵があるわけはない。地方から東京に出て、殺人的なラッシュ時の電車に乗るだけでも疲れたし、残業してもタクシーはつかまらない。周りの先輩や上司を見ても、お互いに接待しあって、ムダなお金と時間を費やして、疲れただけで、バブルって、何だったの? そんなに良かったわけでもないんじゃないの、という感じ。それに、部下がいなくても大変だけど、いたらいたで、いろいろあるんだよね、とやや達観している。というわけで、まとめると、妹 坂の上の雲なんて、雨雲にきまってるじゃん、無視無視、弟 見果てぬ夢に未練が残る、姉(私) 山のそばまでいったけど、別に良いことなかったよ、わが三兄弟の年齢差は、約10才。非常に卑近な例ではあるけれど、三人を比べると、性格や性別、その他個人的事情以外に、世代によって価値観が違うことって、十分あるのだと思った。
日本で公にリストラが議論されたのは、90年代だったと思う。たしかパイオニアが発表して、マスコミ等でずいぶん叩かれた。それから、大型倒産が相次いで、リストラは禁句ではなくなった。ただ、それでも90年代のころまでは、リストラの対象者は50代以上の人だった。それが、最近では30代でも当たり前に、リストラや派遣切りの話を聞くようになった。今の30代は就職氷河期に大学を卒業して、アルバイト、派遣などの仕事を続け、正社員になれないまま現在に至っている人も多い。今日の番組で印象に残ったのは、以前のホームレスは、親のいなくなる世代である50代以上が多かったのに、今は30代にも多いという点。彼らは親、兄弟といった家族がいるにもかかわらず、家族を頼らず、ホームレスを選んでいるということだ。「リストラされる30代」という現象に戦後初めて直面して、どうしていいのかわからないのではないだろうか。
だからこそ、失業することを人生の敗北のように受け止め、助けを求めることが、敗北を認めるかのように考えている。また、彼らの親の世代は団塊の世代より上だろうから、社会現象としてはこういったことを理解していても、いざ自分の子供がそうなる事態に直面すると、「若いのに失業=何か人間的に問題」と反射的に思うのかもしれない。ところで、かつて離婚は、人生の「汚点」だった。今では、「バツイチ」と気軽に言われ、隠すことでもなくなっている。職場にも、結婚と同じく相性はあるし、自分に非がなくても、突然天災(倒産、リストラ)に見舞われることはある。だから失業も、その人の全人格を否定するように考えるのではなく、もう少し、気軽に受け止めたらどうだろうか。そんなことを言っても、困窮した生活の足しにも、再就職の助けにもならないのは事実だが、少なくとも「助けて」と声を上げられる人は増えるのではないかと思う。もちろん、そういった人々を受け止めるセーフティネットの充実は不可欠だ。それでも、コミュニケーションの問題というものは残る。
話すことも、書くことも、日本人だからあたりまえにしているのだけれど、「会わなくてもいい」「話さなくてもいい」コミュニケーションを望ましいと思う人は増えていると思う。人間関係を構築することが苦手になって、友人とも「本音で語り合う」ことは少ない。日常会話でも、空気を読んで、適当に調子を合わせることに神経質になっている。コミュニケーションが希薄化して、自己主張して、人を説得する機会が少ない。こういうことは、それなりに訓練していないと、難しい。だから、深刻な自分の状態を訴えるということも、困難なのだと思う。日本人は、自分の考えを主張することが苦手だ、と言われてきた。その必要がなかった、ということもできる。豊かで同質な社会では、主張しなくても生きていけたから。社会が大きく変化して、これからは、「知らない人と平気で話す」ことが、これまで以上に求められているのかもしれない。


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ブログ紹介
ブログタイトル 生命科学の道しるべ
なぜ生命科学を選択したかが重要ではない、生命科学は仕事や生活との関連性はあるのか

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