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AO・推薦入試エクストラ10月25日号

私立大における公募制の併願・複数受験の戦略と注意点

AO入試情報

◆国公立大のセ試併用型はラスト3か月の基礎学力強化がカギ

文科省の29年度大学入学者選抜の概要によると、AO入試でセンター試験(セ試)を課すのは、国立大が27校76学部、公立大が7校8学部となっている。国立大では実施学部の48.7%、つまり約半数がセ試併用型で実施する。

言うまでもなく、セ試の用い方は次の3パターンに分かれる。

(1)最終合否でセ試の一定得点以上を合格対象とする
(2)書類・面接・小論文等との総合点で合否を決定
(3)セ試で一定得点以上に2次選抜を実施

国立大では(1)(3)の用い方も相当数にのぼるので、セ試併用型ではセ試得点力が志望校の合格水準に達するかどうかが出願の分岐点になる。一般的に医学系では80~85%以上(北海道大医は90%)と基準が高いが、薬学系は70~75%程度(一部に80%)、その他では平均レベルの60~65%前後の設定が多いが、できるだけ高得点を取るのが望ましいことは無論である。特に「書類+セ試型」のケースは、セ試得点が合否の決め手になる。

そこで、面接・小論文対策と併行して、ラスト3か月はセ試対策にベストを尽くす必要があることを生徒には十分周知徹底し、助言とフォローに万全を期したい。10月を迎えたこの時期になると、実力が伸び始める生徒も多い反面、長期の受験学習と思うように学習成果があがらないために心が折れかけている生徒も決して少なくないはずである。

生徒の学力と志望校の合格水準をよく検討して、個別にラスト3か月の取り組みを話し合い、生徒の奮起を促してほしい。AO入試を志望する生徒には、必ずそれぞれの夢がある。それを原動力として、基礎学力を効率的・集中的に身につける努力を継続できれば、AO入試でセ試基準点をクリアすることは決して難しくはない。ひいては、それが一般入試へのベスト対策ともなる。進路指導部と生徒の皆様の今後のご健闘をお祈り申し上げている。

◆2018AO入試でセ試を課す国公立大と基準点一覧

今年度のAO入試でセ試を課す大学・学部の一覧をご紹介する。詳細は弊社の「AO入試年鑑」を参照してほしい(カッコ内は基準点がある場合の数値を示す)

<国立大>
■旭川医科大
医=医(75%以上/1,200点)
■北海道大
医=医学系(810/900点)、保健学系、応用理工系(520/800点)、環境社会工(数学150点以上、物75点以上)
■弘前大
医=医、保健
■岩手大
先端理工特別プログラム(1次+セ試が560点以上/840点)
■東北大
<AO入試III>法・教育・経済・医・歯・薬・工・農
■山形大
<AO入試III>工昼(360点以上/600点)
■茨城大
工、農(国際食産業科学)
■宇都宮大
地域デザイン科学(コミュニティデザイン・建築都市デザイン/一般選抜)
■千葉大
教育=小学校(60%)、国際教養(70%)、工(75%)、園芸(70%)
■東京工大
工=第2~7類
■東京農工大
農=環境資源科学(420/600点)
■横浜国大
教育=学校教育(570/900点)、経済、経営、理工=海洋空間のシステムデザインEP、都市科学=都市社会共生・環境リスク共生
■信州大
理=地球学(450/900点)
■富山大
都市デザイン=地球システム科学・材料デザイン工(210点以上/400点)
■金沢大
医薬保健=薬・創薬科学(640/800点)
■福井大
工<AO入試II>=機械・システム工、電気電子情報工、建築・都市環境工、応用物理、物質・生命化学
■静岡大
理=地球科学
■豊橋技術科学大
工(240~300/400点)
■三重大
工(2月実施)=機械工・分子素材工・情報工
■滋賀大
データサイエンス=データサイエンス(550/900点)
■京都大
総合人間(85%/800点)、文(760/900点)、教育(80%/900点)、経済(720/900点)、理(630/00点)、医=人間健康科学(75%/950点)、薬(80%/900点)、農=資源生物科学、応用生命科学、食料・環境経済、森林科学、食品生物科学(720/900点)、地域環境工(640/800点)
■大阪大
文(75%以上)、人間科学(80%以上)、外国語(総点80%・外国語85%以上)、法・経済(80%以上)、理=研究奨励型、世界適塾AO入試(80%以上)
■神戸大
国際人間科学=発達コミュニティ・環境共生、医=医、海事科学=グローバル輸送科学
■鳥取大
工=社会システム土木系
■島根大
教育=学校教育I類(55%/300点)、人間科学(55%/300点)、総合理工=理工特別コース(55%以上/500点かつ数理2科目が60%以上/400点)
■岡山大
教育=学校教育・養護教諭、法=法(昼‐120/200点)、薬
■広島大(総合評価方式II型)
教育=初等教育(600/900点)、特別支援教育・自然系(585/900点)、技術・情報系(250/500点)、社会系(585/900点)、教育学系(600/900点)、心理学系(600/900点)、法夜(275/500点)、経済=経済昼A(560/900点)、経済昼B・夜(250/500点)、医=医(720/900点)、保健(600/900点、看護専門型560/900点)、薬=薬(700/900点)、歯=歯(650/900点)、口腔健康(500/800点)、工=第一類(420/600点)、第二類・第三類(420/600点)、生物生産(B型=390/600点、C型=540/900点)
■徳島大
薬(450/600点)
■愛媛大
<AO入試II>法文=人文社会、教育=学校教育・特別支援教育、社会共創、理、農
■高知大
土佐さきがけプログラム=生命・環境人材育成コース
■九州大
<AO入試II>法、理=物理・化学・地球惑星科学・数学・生物、医=保健、歯、芸術工=全学科、農
■長崎大
<AO入試II>歯=歯(70%)、薬=薬科学(75%)、工(2科目が75%以上)
■大分大
医=医
■宮崎大
教育=学校教育
<公立大>
■青森公立大
経営経済=全学科(入学前教育の一環)
■山形保健医療大
保健医療=看護
■宮城大
看護・事業構想・食産業(入学後の指導の参考)
■首都大学東京
人文社会=人文社会・人文(65%以上)、都市環境=都市政策科学(入学後の参考)
■都留文科大
教養(3期)=学校教育‐自然環境科学
■大阪府立大
工(海洋システム工学)
■兵庫県立大
環境人間=環境人間
■島根県立大
総合政策=総合政策
■九州歯科大
歯=歯(630/950点)、口腔保健(450/850点)

推薦入試情報

◆私立大における公募制の併願・複数受験の戦略と注意点

言うまでもなく公募制推薦入試は、第1志望校に限って受験するのが鉄則だが、生徒によっては合格校を確保するために、第2・第3志望を受験せざる得ないケースも生じる。ここでは、一般推薦(学校長推薦)を中心に併願・複数受験のポイントを整理しておこう。

(1)志望校の難易度を把握する
一般入試のように模試等の合格難易度はないが、推薦入試の難易度も、過去の合格実績、合格者の評定平均値の平均、合格最低点などからほぼ難易度の判断はできる。合格者の評定平均値等を公表していない大学でも、進路指導部からの問合せにはある程度応じてくれるケースもある。いずれにしろ、第2・3志望の設定は、第1志望より難易度の低い大学を選択したほうが安全であることは言うまでもない。
(2)同系列の試験方法で受験できる大学を選択
第1志望が書類・面接・小論文であれば、これと同系列の入試方法を取る併願校もしくは受験負担の軽い併願校を選択するのがベター。第1志望が書類・面接なのに、第2志望以下は小論文や学科試験といった併願には大きなリスクが伴う。
(3)専願制を破らないで済む併願・複数受験を徹底
志望校が全て併願制(特に西日本)であれば、何校受験しても問題は生じないが、専願制と併願制の複数受験なら、専願制優先に徹して臨む必要がある。併願校の方が知名度が高くても、専願校合格なら、専願校に入学するのが原則だ。
(4)専願リレー受験の場合は日程に注意
専願制間の複数受験も必ずしも不可能ではないが、十分注意する必要がある。第1志望の合格発表後でも出願の間に合う併願校をあらかじめ検討しておき、第1志望の合格発表から第2志望校の出願開始までに余裕がない場合はあらかじめ出願書類を用意しておく必要がある。
(5)納付金を無駄にしないで済む併願を実行
推薦入試の場合、専願・併願を問わず、一括納入のケースが多い。併願制の場合は、一定期間までに入学を辞退すれば、入学金以外は返還するが、複数受験では納付金をできるだけ無駄にせずに済む日程上の戦略に特に留意する必要がある。

◆国公立大における併願・複数受験の留意点

国公立大の推薦入試に関しては、併願・複数受験にきびしい制約が伴い、原則として1校1学部しか受験できないが、複数受験が全く無理かと言えば、必ずしもそうではない。その具体的な手順、留意点を紹介しておこう。

(1)第1志望はセ試免除型、第2志望はセ試併用型で受験
国公立大の推薦入試はセ試免除型が11月出願、セ試併用型が12月~1月の出願となっているケースが多いので、第1志望をセ試免除型、その合格発表後の第2志望をセ試併用型にすれば複数受験が可能になるが、大学によってダブル受験はできない場合も多いので各要項の留意事項の記載に注意してほしい。ただし、第2志望の当該校学部に推薦決定者がいない場合に限られることは言うまでもない。
(2)セ試免除型間の併願も可能
国公立大の推薦入試は全て専願制である。入試日程が短期間に集中しているが、弊社の年鑑で検討すれば、第1志望の合否発表後でも出願の間に合う第2志望校を探すことは可能である。ただし、高校推薦枠にアキがある場合に限られる。
(3)セ試併用型間の併願は不可能
セ試を課す大学の複数受験は、推薦入試用のセ試成績請求票が1枚しかないので、自動的に不可能ということになる。
(4)国公立大と私立大の併願
国公立大と私立大の推薦入試を併願する場合、第1志望が国公立大なら、第2志望の私立大は日程からみて、併願制校を選択せざるをえない。ただ、国公立大合格なら、私立大に納付した入学金は戻ってこないと覚悟しておく必要がある。私立大が第1志望なら、国公立大への出願はしてはならない。

その他、大学によっては推薦募集要項に「本学以外の推薦入試への出願は認めない」などの注意書きがある場合もあるので十分注意してほしい。

ニュースフラッシュ

◆文部科学省が例示した民間語学検定の概要

2020年度からスタートする「大学入学共通テスト」で最大の注目点は英語試験の改革だろう。グローバル社会で求められるコミュニケーション能力に対応するため、これまでの「読む・聞く」だけから「話す・書く」を加えた4つの技能を評価する内容に変わる。

しかし、機械的に採点できない「話す」試験を数十万人規模で一斉に実施するのは不可能だ。そこですでにある英検やTOEICなどの民間試験を共通テストとして活用するわけだが、民間試験にはビジネスや留学を想定したものなど様々である。そのため、大学入試センターが内容や実施態勢などが共通テストに必要な水準を満たしているかどうかを検討し、今年度中に選定する予定だ。

そして、各試験の成績の示し方が異なることから、各テストの結果を公平に比べるため「CEFR(セファール)」という欧米を中心に広く使われている国際標準規格を用いる。このデータを出願先の大学が受け取り、2次試験の出願資格や試験免除、得点加算などに用いる。

ちなみに、各試験の概要を示すと以下の通り。

受験者数 年間回数 会場数 受験料
ケンブリッジ英検 非公表 10~16回 12 9,720~25,380円
英検 約339万人 3回 本会場400 2級5,800円
準会場1万7千 準2級5,200円
GTEC 約94万人 2回 1,770 5,400円
CBT58 CBT9,720円
IELTS 約3.7万人 約40回 最大約90 25,380円
TEAP 約1.4万人 3回(CBT2回) 最大約35 4技能15,000円
TOEFL‐iBT 非公表 40~45回 最大86 235米ドル
TOEICL&R 約250万人 10回 最大251 5,725円
TOEICS&W 約3.2万人 24回 最大43 10,260円

上記は文科省の公表資料だが、どの項目をとっても差異が大きい。受験会場数もそうだが、受験料の最高と最低での開きは大きく、いくら文科省の要請でも値下げの幅には限界があるだろう。家庭環境によっては、受験機会の不平等にもなりかねない。そうした諸々の課題を解決するためもあって、2023年度までは大学入試センターの英語試験と民間試験を併用する期間として設定した。念のためだが、各大学の個別(2次)試験から英語試験がなくなることはない。ただ、高度な英語資格を持つ場合(英検準1級以上など)は、試験免除の措置を取る大学も少なくないと予測される。

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