AO・推薦入試エクストラ10月10日号
国公立大のセ試併用型はラスト3か月の学力強化がカギ
AO入試情報
国公立大のセ試併用型はラスト3か月の学力強化がカギ
文科省の28年度大学入学者選抜の概要によると、AO入試でセンター試験(セ試)を課すのは、国立大が27校76学部、公立大が7校8学部となっている。国立大では実施学部の48.7%、つまり約半数がセ試併用型で実施する。
言うまでもなく、セ試の用い方は次の3パターンに分かれる。
- (1)最終合否で一定得点以上を合格対象とする
- (2)書類・面接・小論文等との総合点で合否を決定
- (3)セ試で一定得点以上に2次選抜を実施
国立大では(1)(3)の用い方も相当数にのぼるので、セ試併用型ではセ試得点力が志望校の合格水準に達するかどうかが出願の分岐点になる。一般的に医学系では80~85%以上(北海道大医は90%)と基準が高いが、薬学系は70~75%程度(一部に80%)、その他では平均レベルの60~65%前後の設定が多いが、できるだけ高得点を取るのが望ましいことは無論である。
そこで、面接・小論文対策と併行して、ラスト3か月はセ試対策にベストを尽くす必要があることを生徒には十分周知徹底し、助言とフォローに万全を期したい。10月を迎えたこの時期になると、実力が伸び始める生徒も多い反面、長期の受験学習と思うように学習成果があがらないために心が折れかけている生徒も決して少なくないはずである。
生徒の学力と志望校の合格水準をよく検討して、個別にラスト3か月の取り組みを話し合い、生徒の奮起を促してほしい。AO入試を志望する生徒には、必ずそれぞれの夢がある。それを原動力として、基礎学力を効率的・集中的に身につける努力を継続できれば、AO入試でセ試基準点をクリアすることは決して難しくない。ひいては、それが一般入試へのベスト対策ともなる。進路指導部と生徒の皆様の今後のご健闘をお祈り申し上げている。
◆2016AO入試でセ試を課す国公立大と基準点一覧
今年度のAO入試でセ試を課す大学・学部の一覧をご紹介する。詳細は弊社の「AO入試年鑑」を参照してほしい(カッコ内は基準点がある場合の数値を示す)。
- ■旭川医科大
- 医=医(75%以上/1,200点)
- ■北海道大
- 医=医学系(810/900点)、保健学系、応用理工系(520/800点、数学または「物・化」のいずれか150点以上)、工=環境社会工(数学150点以上、物75点以上)
- ■弘前大
- 医=医
- ■東北大
- <3期>法・教育・経済・医・歯・薬・工・農
- ■千葉大
- 教育=小学校(60%)
- ■東京工大
- 工=第2~7類
- ■東京農工大
- 農=環境資源科学(390/600点)
- ■横浜国大
- 教育=教科教育(570/900点)、理工=建築都市・環境系(海洋空間のシステムデザインEP)
- ■信州大
- 理=地質科学(450/900点)
- ■富山大
- 理=地球科学(210/400点)
- ■金沢大
- 医薬保健=薬・創薬科学(640/800点)
- ■福井大
- 工(AOⅡ)=機械工、電気・電子工、情報・メディア工、建築建設工、材料開発工、生物応用化学、物理工
- ■静岡大
- 理=地球科学
- ■三重大
- 工(2月実施)=機械工・分子素材工・情報工
- ■京都大
- 総合人間(85%/800点)、文(760/900点)、教育(80%/900点)、経済(630/900点)、理(630/900点)、医=人間健康科学(760/900点)、薬(740/900点)、農(720/900点)
- ■大阪大
- 理(研究奨励AO)=全学科(675/900点)
- ■神戸大
- 発達科学=人間行動・人間環境、医=医、海事科学=グローバル輸送科学(600/900点)
- ■鳥取大
- 工=社会システム土木系
- ■島根大
- 法文=社会文化、教育=学校教育Ⅰ類(55%/300点)、総合理工=理工特別コース(55%以上/500点かつ数理2科目が60%以上/400点)
- ■岡山大
- 教育=学校教育・養護教諭、法=法(昼‐120/200点)、薬
- ■広島大(総合評価方式Ⅱ型)
- 教育=初等教育(600/900点)、特別支援教育・自然系(585/900点)、技術・情報系(250/500点)、社会系(585/900点)、教育学系(600/900点)、心理学系(600/900点)、法夜(275/500点)、経済=経済昼A(560/900点)、経済昼B・夜(250/500点)、医=医<科学オリンピック型>(720/900点)、保健(600/900点、看護専門型560/900点)、薬=薬(700/900点)、薬科学(700/900点)、歯=歯(650/900点)、口腔健康(500/800点)、工=第一類(390/600点)、第二類・第三類(420/600点)、生物生産(A型=380/700点、B型=390/600点、C型=540/900点)
- ■愛媛大
- (AOⅡ)法文=人文社会、教育=学校教育・特別支援教育、社会共創、理=全学科、農=全学科
- ■高知大
- 教育=科学技術教育、土佐さきがけプログラム=生命・環境人材育成コース、グリーンサイエンス人材育成コース
- ■九州大
- (AOⅡ)法、理=物理・化学・地球惑星科学・数学・生物、医=保健、歯、芸術工=全学科、農
- ■長崎大
- (AOⅡ)歯=歯(70%)、薬=薬科学(75%)、工(最高得点科目が80%以上)
- ■大分大
- 医=医
- ■青森公立大
- 経営経済=全学科
- ■山形保健医療大
- 保健医療=看護
- ■首都大学東京
- 都市教養=都市教養
- ■兵庫県立大
- 理(数学は各科目90点以上、または理科が計150点以上<うち1科目は90点以上>)、環境人間
- ■島根県立大
- 総合政策
- ■九州歯科大
- 歯=歯(630/950点)、口腔保健(450/850点)
推薦入試情報
◆2016推薦入試出願時の必須チェック事項
いよいよ2016年度推薦入試への出願が目前に迫ってきた。一般入試と異なり、高校側が責任を持って送り出す推薦入試の場合、担任や進路指導にはこの時期必ずやっておきたいチェック事項がある。その主要事項を簡潔に整理しておこう。
- <提出書類のチェック>
- 生徒が志望する大学への出願書類の最終チェックが必要。大学や推薦区分により、それぞれ提出書類は異なる。高校側で事前に統一の出願書類チェック表を用意し、生徒に記入・提出をさせるぐらいの周到さが必要で、どれか1つの書類が欠けただけでも出願不受理となるので十分注意したい。調査書では成績基準や履修状況および履修条件の確認、特記事項等が適切に記入されているかを綿密にチェックしておきたい。推薦書については、特に推薦理由を明確かつ効果的に表現する必要がある。生徒が作成する書類(志願理由書、活動報告書、自己推薦書等)については、当然ながら誤字・脱字を含む下書きの事前チェックが欠かせない。ただし、過度の添削は禁物である。
- <面接力の最終チェック>
- 大学での試問事項を想定して、すでに何回かの面接トレーニングを実施されているはずだが、この直前期にはどの程度面接力が向上しているか、最終確認をし、欠点が残っていないか確認してほしい。国公私を問わず、面接は推薦入試の根幹をなすので、面接力の向上はきわめて大切だ。
- <小論文作成力や基礎学力の最終チェック>
- 小論文や基礎学力試験における弱点、不十分さが残っていないか確認して、適切に指摘・指導することによって、短期間でも十分生徒のフォローはできる。
以上の点を総合したうえで、受験生の合格可能性が60%程度以上と判断されれば、出願へゴーサインを出してよいが、合格可能性が50%を切るようなら、専願制の鉄則にふれない第2志望校(併願校)も準備しておくべきだろう。
◆推薦区分ごとの主要書類と併願手順の鉄則
推薦入試では、推薦区分によって提出書類にも差異があるが、自己推薦を除いて学校長の推薦書、調査書は必須の提出書類となる。ただし、近畿地区の一部では推薦書を要しない公募推薦がやや増加傾向にある。各区分の主要書類を整理しておこう。
- (1)一般・特定教科・専門課程・女子学生・奨学生推薦
- この5区分では推薦書・調査書が中心。ただし大学によっては志願理由書のほか自己推薦書、活動報告書等の提出を求めるケースもある。国公立大のセ試併用型では推薦入試用の成績請求票も必要になる。
- (2)スポーツ推薦
- 学校長と部活動指導者の両方の推薦書が必要になるケースがあるので要注意。調査書も必須でほかに競技成績証明書、スポーツ競技歴書、活動報告書(資料)など。
- (3)有資格者推薦
- 推薦書、調査書のほか大学が指定する資格・検定の取得証明書(原本提出のケースもあるので要注意)、活動報告書など。
- (4)課外活動推薦・一芸一能推薦
- 推薦書、調査書のほか課外活動報告書、活動歴書、活動実績・検定取得証明などが必要で、なるべく詳細な資料を時系列方式で添付したほうがよい。
- (5)自己推薦
- 中心となるのは受験生本人の自己推薦書だが、調査書も必須のケースが多く、活動報告書や高校側の志願者評価書などを求めるケースもある。
- (6)宗教関連推薦
- 学校長推薦書、調査書のほか洗礼証明書、宗教関係者の推薦書、宗教活動報告書などが必要になる。
- (7)地域推薦
- 学校長推薦書、調査書のほか地方自治体の首長や指定機関の推薦書が必要になる場合があるので注意したい。
- (8)その他の推薦
- 学校長推薦書、調査書のほか入試内容に応じて、関係団体・同窓会・OB教員等の推薦書等が必要になる。
また、どの区分であれ志願理由書、活動報告書等を提出させるケースもかなり多いので、大学の指定内容には十分注意しなければならない。
最後に推薦入試における併願手順については、専願制のみ注意すればよい。組合せは次の3パターンになる。(1)専願制第1志望+専願制第2志望(第1志望の合格発表後に試験を実施する大学がベスト)、(2)専願制第1志望+併願制第2志望(両方合格の場合は専願制に入学)、(3)併願制第1志望+併願制第2志望(入学手続締切日に注意して志望順位を決め、納付金を節約する)。専願制と併願制を組合わせて、両方に合格した場合、専願制に入学するのが鉄則である。詳細は弊社「推薦入学年鑑」の解説ページを参照してほしい。
ニュースフラッシュ
◆法務省が今年度司法試験の合格状況を公表
9月上旬、法務省が司法試験の合格状況を公表した。受験者は8,016人、合格者は1,850人で合格率は23.1%。新司法試験が始まって以来、最低を記録した前年の22.6%を若干上回りこそしたが、依然として低い水準にとどまっている。
合格者の年齢は21~68歳で、平均年齢は29.1歳と高く、法科大学院を卒業と同時に試験にパスする層がうすいことも明らかだろう。合格者のうち男性は1,451人(78.4%)、女性は399人(21.6%)であった。受験資格が3回から4回に緩和されたことによる4回目の受験者は、158人が合格した。受験回数の制限が妥当かどうかも、再検討するきっかけになる可能性がある。
制度発足から法科大学院はピーク時74校が開学したが、現時点で学生の募集停止をしたか、停止を公表している大学は実に29校にのぼり、来年度以降も学生募集を行うのは45校に減少している。
大学別に合格率をみると、30%を超えているのは、(1)一橋大(55.6%)、(2)京都大(53.3%)、(3)東京大(48.9%)、(4)神戸大(48.3%)、(5)慶應義塾大(45.5%)、(6)愛知大(36.4%)、(7)中央大(35.8%)、(8)早稲田大(30.8%)の8校のみ。私立の愛知大では受験者22人、合格者8人となっている。
一方、合格者数でみると、(1)中央大170人、(2)慶應義塾大、158人、(3)東京大149人、(4)早稲田大145人、(5)京都大128人、(6)一橋大79人、(7)神戸大72人、(8)明治大52人などが上位を占める。なお、法科大学院を経ずに司法試験の受験資格を取得した予備試験の通過者は301人にのぼり、うち186人が合格し、合格率は61.8%と高い。司法試験合格者の1割を占めたのも初めてのことである。
いずれにせよ、法科大学院の制度設計は破綻状況に陥っている。個別の大学ごとに大学院を設置・運営するのは限界で、大胆な連合・集約などの施策を検討すべき時機に至っているようだ。
【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座
AO入試(7):2016学部系統別実施状況と動向
<国公立大>
2016年度現在、文科省の公表資料によると、国立大では全学部の39.5%、公立大では18.9%の学部でしかAO入試は実施されておらず、当然ながらAOでの実施学部層が薄い分野も多々あるので注意したい。文系では人文科学系は少なく、比較的に社会科学系が多いが、法学系での実施はきわめて少ない。全般的には保健・医療系、理工系、農学系などの自然科学系や教員養成系での導入が目立っている。
弊社の集計で実施学部状況を示すと次のようになる(複合学部は複数集計)。
■系統 | <国立大> | <公立大> |
---|---|---|
人文科学 | 9(6.5%) | 7(18.4%) |
社会科学 | 23(16.4%) | 17(44.8%) |
教育(教員養成) | 18(12.9%) | 1(2.6%) |
理学 | 22(15.7%) | 4(10.5%) |
工学 | 28(20%) | 5(13.2%) |
農・水産・獣医 | 13(9.3%) | 0(0%) |
保健・医療 | 22(15.7%) | 3(7.9%) |
生活科学 | 1(0.7%) | 0(0%) |
体育・スポーツ(健康) | 2(1.4%) | 0(0%) |
芸術 | 2(1.4%) | 1(2.6%) |
<私立大>
私立大では推薦入試と比べてもそう差がないほど実施学部数が増え、しかも全系統にわたって豊富にそろっているのが特徴だろう。弊社の調査では、各系統の実施学部数、比率(%)は次のようになっている(複合領域の学部は複数扱いで集計)。また、比較のため推薦入試の実施学部数・占有率も示す。
■系統 | <AO入試> | <推薦入試> |
---|---|---|
人文科学 | 232(17.4%) | 290(16.7%) |
社会科学 | 475(35.6%) | 545(31.5%) |
教育(教員養成) | 151(11.3%) | 181(10.5%) |
理工 | 119(8.9%) | 153(8.8%) |
農・水産・獣医 | 12(0.9%) | 27(1.6%) |
保健・医療 | 131(9.8%) | 284(16.4%) |
生活(栄養) | 81(6.1%) | 108(6.2%) |
スポーツ(健康) | 62(4.7%) | 68(3.9%) |
芸術 | 70(5.3%) | 76(4.4%) |
推薦入試と比較して実施状況が活発といえるのは、社会科学系、教育系、理工系、生活科学系、体育・スポーツ系、芸術系など。逆に実施状況がまだ活発とは言えないのは、農学系や保健・医療系などだろう。
しかしながら、私立大におけるAO入試の実施状況は着実に拡大傾向に向かっている。2015年度の文科省の入試統計は11月ごろ公表されるが、志願者数合計が初めて9万人台に乗るかどうかに注目したい。今後は、保健・医療系での実施の拡大が、私立大AO入試の動向を大きく左右するだろう。