AO・推薦入試エクストラ6月10日号
◆弊社調査で2019年度AO入試の実施状況が判明
AO入試情報
◆弊社調査で2019年度AO入試の実施状況が判明
現在、弊社では全国版「AO入試年鑑」を7月上旬に全国の高等学校へお届けするために作業を進めているが、5月25日時点で全ての国公私立大・短大のAO入試の実施状況調査が次のとおりまとまったのでご報告する。
<設置区分> | <募集校数> | <AO実施校数> | <AO実施率(前年度)> |
---|---|---|---|
国立大 | 82校 | 57校 | 69.5%(68.2%) |
公立大 | 90校 | 29校 | 32.2%(29.9%) |
私立大 | 582校 | 480校 | 82.5%(81.5%) |
公立短大 | 13校 | 4校 | 30.8%(35.7%) |
私立短大 | 296校 | 264校 | 89.2%(86.3%) |
国立大では、2017年度に大阪大(6学部)のほか、滋賀大・香川大・熊本大が新規実施したが、2018年度では茨城大、豊橋技術科学大、徳島大の3校が加わり、2019年度は九州工業大1校のみ。ただ全体の実施率は7割近くまで上昇、この3年ほどでかなり増加している。公立大では前橋工科大、長野県立大、大阪市立大(医)の3校が加わる。
私立大は、学生募集校が前年の580校から582校へ増加。新規実施の顔ぶれは札幌保健医療大、作新学院大、岐阜聖徳学園大、筑紫女学園大の4校(京都外国語大は前年度導入で、実質的には5校増)。AO実施校は前年より7校増加し、実施率もやや上昇している。
公立短大は、募集校が1校減、AO実施校も1校減で、AO実施率は依然として低いままである。
私立短大は、本年度も募集停止が5校あり、学生募集校は300校から296校へ減少するが、新規実施校が実に9校にのぼり、AO実施率は過去最高の89.2%となっている。新規実施としては盛岡大短大部、日赤秋田短大、大垣女子短大、京都外国語短大などがある。
◆地区別:2019AO入試の地区別実施状況
弊社が調査した2019AO入試の地区別実施状況を示すと、次のとおりとなっている。
地区 | 国立大 | 公立大 | 私立大 | 公立短大 | 私立短大 |
---|---|---|---|---|---|
北海道・東北 | 9校 | 8校 | 43校 | 1校 | 29校 |
関 東 | 13校 | 4校 | 179校 | 0校 | 77校 |
中 部 | 8校 | 4校 | 77校 | 1校 | 49校 |
近 畿 | 8校 | 3校 | 102校 | 1校 | 50校 |
中国・四国 | 9校 | 3校 | 36校 | 1校 | 25校 |
九 州 | 10校 | 6校 | 43校 | 0校 | 34校 |
国立大は各地区とも同程度の実施状況だが、関東地区の実施校数が最も多い。公立大に関しては北海道・東北地区、九州地区の実施状況が目立っている。
私立大におけるAO実施校は、やはり関東地区が179校と群を抜いて多く、次いで近畿、中部となるが、実施率で見ると中部、関東の2地区が高く、逆に最も低いのは北海道・東北地区の74.1%となっている。
私立短大の場合、実施率が全国平均(89.2%)を上回っているのは、関東、中部、中国・四国、九州で、最高は九州地区の94.4%。次いで関東地区92.8%、中部地区90.7%で、北海道・東北地区は78.3%と最もAO導入率が低い。
推薦入試情報
◆私立大:公募制推薦入試の地区別特徴を形成する4大要因
私立大の公募推薦入試の動向を形成する要因として、(1)成績基準の高低や有無、(2)専願制か併願制か、(3)選考方法(受験負担の軽重)、(4)大学の知名度、の4つがあげられる。これら4つの要因がどうからむかによって、各地区の入試動向が決定づけられるといっても過言ではない。
- <北海道・東北地区、関東地区>
- 人気私立大の多くが3.5~4.0以上の高基準で、中堅私立群でも3.0~3.3以上の明確な基準を設けているケースが多い。専願制が主流であるため、志願者数は多いところでも千人前後の規模で、年度ごとの変動も小幅にとどまる。選考法では基礎学力試験より小論文が多いのも、受験生には心理的なブレーキとなっている。
- <中部地区>
- 全般に成績基準が緩やかで併願制も多いが、志願者が千人を超える私立大はごく一部に限られる。その中では中京大の志願者数が群を抜く。選考方法では、基礎学力試験を課すタイプが増加傾向にある。また、年度により隔年現象がよく見られる地区なので要注意だ。
- <近畿地区>
- 例年、公募志願者数が全国の5割強を占める最激戦地区である。それは成績基準撤廃、併願制、軽量型学科試験中心(プレ一般型)という3つの要因がそろい、なおかつ人気の高い中堅上位校群の多くが一般推薦を実施するためである。特に近畿大、龍谷大、京都産業大の3校が抜きん出ており、大学・学部・学科によっては、15~30倍もの激戦となるケースが珍しくない。
- <中国・四国地区>
- 成績基準が全般に緩やかで併願制が主流だが、地元大学の推薦活用は低調である。知名度の高い私立大が限られ、高学力層は国公立大や他地区の有名私立大へ流れる傾向が目立つ。
- <九州地区>
- この地区の主要私立大は専願制が中心で、成績基準もやや高く、全般に推薦戦線はさほど活発ではない。ほとんどが1倍台の競争率で、志願者数も少ないが、その中では福岡大の人気が群を抜く。
◆弊社調査でみる私立大の地区別志願・合格状況(2017年度)
弊社では例年、公募制昼間部(一般・ユニーク推薦)の志願者数・合格者数の調査を行っている。データ非公表や指定校制等を含むケースもあるが、公募制全体の動向を把握するための目安として実施している。2018年度の集計はまだ完了していないので、2017年度の集計結果を用いて、各地区の志願者数・合格者数をみると、下記グラフのとおりとなっている。
近畿地区の公募推薦戦線は群を抜くスケールで、平均倍率も3.2倍と全国で最も高い。関東地区と近畿地区を比べると、志願動向は「東低西高型」の構図が明白に見て取れる。
ニュースフラッシュ
私立大志願者「実数」の公表が不可欠
大学入学者の志願者数には「延べ数」と「実数」の2種類がある。これまで、なるべく人気度で目を引くよう「延べ数」で公表するのが一般的だった。ところが、最近は志願者を「延べ人数」だけでなく「実数」も公表する私立大が増えている。2018年度入試では延べ志願者上位10大学(大学通信調べ)が、全て実数も公表した。これまで延べ人数の多さでアピールできたが、1回の受験で複数の学部・学科を併願できる入試システムが拡大している現状の中で、志望校の実数が把握しづらかった。 2018年度一般入試(セ試利用含む)におけるデータは次のようになっている。
大学 | 募集人員 | 志願延べ数 | 志願実数 | 延べ数÷実数 |
---|---|---|---|---|
近畿大 | 4,961 | 156,225 | 31,242 | 5.00 |
法政大 | 4,276 | 122,499 | 61,210 | 2.00 |
明治大 | 5,413 | 120,279 | 61,287 | 1.96 |
早稲田大 | 5,555 | 117,209 | 54,056 | 2.17 |
東洋大 | 5,664 | 115,441 | 44,538 | 2.59 |
日本大 | 7,804 | 115,180 | 57,596 | 2.00 |
立命館大 | 4,804 | 98,262 | 39,358 | 2.50 |
関西大 | 3,752 | 92,216 | 33,233 | 2.77 |
中央大 | 4,255 | 88,182 | 38,486 | 2.29 |
千葉工業大 | 1,379 | 78,905 | 14,733 | 5.36 |
朝日新聞の調査によると、近畿大、法政大、日本大、中央大、千葉工業大の5校は今年度から実数を公表するようになった。
各校のデータを見ると、延べ人数の実数に対する割合が最も小さいのは明治大の1.96倍。7校は2倍から3倍の間で、だいたい2~3学部を併願する状況を反映している。近畿大と千葉工業大の2校は5倍の開きがある。千葉工業大の場合、理系の単科大なので1回の試験で最大17学科を併願できる。延べ人数でみる大学の人気ランキングで上位にくると、確かに大学としての宣伝効果は大きいが、受験生を惑わす要因になりかねない。それにも関わらず、実数の公表を義務づけていない現状は、高等教育の情報公開としてはなはだ不十分ではないだろうか。