総合型・推薦型選抜エクストラ10月10日号
2021学校推薦型選抜出願時の必須チェック事項
総合型選抜情報
◆私立大:2021総合型選抜の全国統計レポート(2)
私立大2021総合型選抜における専願区分、成績基準、資格・活動実績基準に関する弊社の統計レポートをお届けする(比率は少数第2位を四捨五入)。
<専願区分> | (大学数) | (比率) |
---|---|---|
専願制 | 440校 | 71.9% |
併願制 | 142校 | 23.2% |
専・併 | 17校 | 2.8% |
非公表 | 13校 | 2.1% |
総合型選抜でも全体の約7割は専願制で実施し、併願制は23.2%だが、AO時代と比べると併願性がかなり増加している。その要因としては、併願制で実施していた自己推薦入試の移行、近畿地区の公募制推薦(併願)が総合型選抜に移行したことがあげられる。出願期が早いので、3年次の早期に第1志望校を絞り込んだ生徒でないと、総合型選抜は活用しにくい。
<成績基準> | (大学数) | (比率) |
---|---|---|
設定なし | 474校 | 76.2% |
複数条件の1つ | 18校 | 2.9% |
必須条件 | 130校 | 20.9% |
学校推薦型選抜との大きな相違点の1つが、成績基準の設定がきわめて少ないことだろう。必須条件としているのは全体の20.9%(前年19.4%)で、8割近くは成績基準を設けておらず、多くの志願者が流れ込む最大要因となっている。
<資格・活動実績基準> | (大学数) | (比率) |
---|---|---|
設定なし | 460校 | 64.0% |
複数条件の1つ | 78校 | 10.9% |
必須条件 | 180校 | 25.1% |
成績基準と異なり、取得資格や活動実績を設定する割合は、複数条件の1つと必須条件を合わせて36.0%と全体の4割近くを占める。逆の見方をすれば、資格や活動実績を持つ生徒には、総合型選抜は現役合格へのパイプとなりうる入試であると言えよう。
ただし、上位私立大群では総合枠がさほど大きくなく、出願要件と合格可能性を慎重に検討する必要がある。
◆私立大:地区別2021出願条件の設定状況
ここでは2021総合型選抜の出願条件に関する地区別の弊社統計をご紹介する。各地区の特徴を十分把握しておいてほしい。
地区 区分 |
北海道 東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国 四国 |
九州 |
---|---|---|---|---|---|---|
専願制 | 41校 | 151校 | 74校 | 95校 | 37校 | 42校 |
併願制 | 6校 | 66校 | 22校 | 34校 | 5校 | 9校 |
專・併 | 0校 | 6校 | 3校 | 8校 | 0校 | 0校 |
非公表 | 1校 | 7校 | 1校 | 3校 | 0校 | 1校 |
学校推薦型選抜では併願制が主流の中部・近畿・中四国地区においても、総合型選抜は専願制主流なので要注意。一方、関東地区の学校推薦型選抜は専願制が主流だが、総合型選抜では併願制も全体の28.7%とかなり多い。
地区 区分 |
北海道 東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国 四国 |
九州 |
---|---|---|---|---|---|---|
設定なし | 43校 | 179校 | 72校 | 102校 | 36校 | 42校 |
複数条件の1つ | 0校 | 9校 | 1校 | 5校 | 1校 | 2校 |
必須条件 | 5校 | 50校 | 22校 | 33校 | 9校 | 11校 |
成績基準を必須条件として設けるケースは、かつては近畿地区が最も多かったが、この2~3年は関東地区で36校→39校→50校と急速に増加している。ただ、一部の有名私大を除き、全般的に総合型選抜の基準は緩やかである。
地区 区分 |
北海道 東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国 四国 |
九州 |
---|---|---|---|---|---|---|
設定なし | 36校 | 174校 | 73校 | 103校 | 37校 | 37校 |
複数条件の1つ | 9校 | 32校 | 6校 | 15校 | 3校 | 13校 |
必須条件 | 10校 | 80校 | 23校 | 43校 | 9校 | 15校 |
必須条件としての設定率が最も高いのは関東地区で28.0%、次いで近畿地区の26.7%、九州地区の23.0%が高い。
推薦入試情報
◆2021学校推薦型選抜出願時の必須チェック事項
いよいよ2021年度学校推薦型選抜への出願が目前に迫ってきた。一般選抜と異なり、高校側が責任を持って送り出す学校推薦型選抜の場合、担任や進路指導にはこの時期必ずやっておきたいチェック事項がある。その主要事項を簡潔に整理しておこう。
- <提出書類のチェック>
- 生徒が志望する大学への出願書類の最終チェックが必要。大学や推薦区分により、それぞれ提出書類は異なる。高校側で事前に統一の出願書類チェック表を用意し、生徒に記入・提出をさせるぐらいの周到さが必要で、どれか1つの書類が欠けただけでも出願不受理となるので十分注意したい。調査書では成績基準や履修状況および履修条件の確認、特記事項等が適切に記入されているかを綿密にチェックしておきたい。推薦書については、特に推薦理由を明確かつ効果的に表現する必要がある。生徒が作成する書類(志願理由書、活動報告書、自己推薦書等)については、当然ながら誤字・脱字を含む下書きの事前チェックが欠かせない。ただし、過度の添削は禁物で、生徒の個性を尊重すべきだろう。
- <面接力の最終チェック>
- 大学での試問事項を想定して、すでに何回かの面接トレーニングを実施されているはずだが、この直前期にはどの程度面接力が向上しているか、最終確認をし、欠点が残っていないか確認してほしい。国公私を問わず、面接は学校推薦型選抜の根幹をなすので、面接力の向上はきわめて大切だ。また、学力の3要素を把握するための選考方法として、口頭試問がかなり増加しているので、口頭試問対策も入念に準備しておく必要がある。
- <小論文作成力や基礎学力の最終チェック>
- 小論文や基礎学力試験における弱点、不十分さが残っていないか確認して、適切に指摘・指導することによって、短期間でも十分生徒のフォローはできる。
以上の点を総合したうえで、受験生の合格可能性が60%程度以上と判断されれば、出願へゴーサインを出してよいが、合格可能性が50%を切るようなら、専願制の鉄則にふれない第2志望校(併願校)も準備しておくべきだろう。
◆推薦区分ごとの主要書類と併願手順の鉄則
学校推薦型選抜では、推薦区分によって提出書類にも差異があるが、学校長の推薦書、調査書は必須の提出書類となる。ただし、近畿地区の一部では推薦書を要しない公募推薦も目立つ。各区分の主要書類を整理しておこう。
- (1)一般・特定教科・専門課程・女子学生・奨学生推薦
- この5区分では推薦書・調査書が中心。ただし大学によっては志願理由書のほか自己推薦書、活動報告書等の提出を求めるケースもある。国公立大の共テ併用型では学校推薦型選抜用の成績請求票も必要になる。
- (2)スポーツ推薦
- 学校長と部活動指導者の両方の推薦書が必要になるケースがあるので要注意。調査書も必須でほかに競技成績証明書、スポーツ競技歴書、活動報告書(資料)など。
- (3)有資格者推薦
- 推薦書、調査書のほか大学が指定する資格・検定の取得証明書(原本提出のケースもあるので要注意)、活動報告書など。
- (4)課外活動推薦・一芸一能推薦
- 推薦書、調査書のほか課外活動報告書、活動歴書、活動実績・検定取得証明などが必要で、なるべく詳細な資料を時系列方式で添付したほうがよい。
- (5)宗教関連推薦
- 学校長推薦書、調査書のほか洗礼証明書、宗教関係者の推薦書、宗教活動報告書などが必要になる。
- (6)地域推薦
- 学校長推薦書、調査書のほか地方自治体の首長や指定機関の推薦書が必要になる場合があるので注意したい。
- (7)その他の推薦
- 学校長推薦書、調査書のほか入試内容に応じて、関係団体・同窓会・OB教員等の推薦書等が必要になる。
また、どの区分であれ志願理由書、活動報告書等を提出させるケースもかなり多いので、大学の指定内容には十分注意しなければならない。
最後に学校推薦型選抜における併願手順については、専願制のみ注意すればよい。組合せは次の3パターンになる。(1)専願制第1志望+専願制第2志望(第1志望の合格発表後に試験を実施する大学がベスト)、(2)専願制第1志望+併願制第2志望(両方合格の場合は専願制に入学)、(3)併願制第1志望+併願制第2志望(入学手続締切日に注意して志望順位を決め、納付金を節約する)。専願制と併願制を組合わせて、両方に合格した場合、専願制に入学するのが鉄則である。詳細は弊社「学校推薦型選抜年鑑」の解説ページを参照してほしい。
ニュースフラッシュ
◆国立大授業料の自由化は見送り
先般、国立大の授業料の自由化(値上げ)を図ろうとする案が議論となり、受験生・高校・保護者間で懸念する声が広がっていた。ところが、文部科学省が国立大の授業料の自由化を当面は見送ると決めたことが、9月下旬に判明した。国立大の経営のあり方を検討する有識者会議にこの件をはかっていたが、新型コロナウイルス禍の中で学生から授業料減免を求める声が強く出る中、値上げが可能となる自由化の議論がさすがに進まなかったことが背景にある。
国立大の授業料は、国が標準額として年間53万5,800円と定めている。2007年から大学の判断で2割増の64万2,960円まで増額することを認めており、昨年度以降、千葉大等5大学が値上げを実施している。
一方、大学の収入の柱である国からの運営交付金は法人化した2004年度より漸減し(年1%)、大学側から経営基盤強化のために授業料の自由化を求める声が上がっていた。
文部科学省は、外部資金の獲得など国立大の自律的な経営を検討するため、今年2月に有識者会議を設立し、授業料自由化も検討事項になっていたが、会議では自由化に関しては意見が出ず、今月25日の中間まとめにも盛り込まれることはなかった。
私立大の学費格差を是正するという名目で上がり続けてきた国立大の授業料だが、自由化(値上げ)の議論より、無償化の議論は出てこないものだろうか。その方が、国の未来をはるかに豊かにする可能性があるだろう。