AO・推薦入試エクストラ4月25日号
AO入試対策:2017生徒指導スタートのポイント
AO入試情報
AO入試対策:2017生徒指導スタートのポイント
2017年度入試に向けスタートを切るに当たり、AO入試対策に関する基本的な指導ポイントを整理しておこう。言うまでもなく、大学によりAO・推薦の実施状況は異なる。AO入試のみでは志望校の選択範囲は限られる(特に国公立大)。AO・推薦・一般入試の3区分を通して受験態勢を確立し、最終的には一般入試のための学習対策を貫徹する姿勢が大切であることを早い段階から十分生徒に周知しておくことが肝心だろう。
その上で、AO入試を活用させる際のキーポイントとして、次のような事柄があげられる。
- (1)第1志望校(学部・学科)を早期に確定すること。AO入試の多くは専願制で実施される(私立大では8割程度が専願制)。入学して悔いのない大学・短大であることが、生徒の将来にとって重要である。
- (2)AO入試は、個性豊かな学習や活動に取り組んでいる生徒に向く。多様な生徒の中には、いわゆる受験のための学習にはさほど熱意はないが、ユニークな自主研究や課外活動・資格取得には情熱を注ぐ者も多い。そうした生徒にとって、人物重視型のAO入試は最適の受験ルートになる。
- (3)大学入学後、また大学卒業後にやりたいことが明確であること。AO入試では大学入学の目的や計画、将来のビジョンがきびしく問われるので、高3の早い段階で、将来を含めた進路計画ができている生徒に向く。中堅私立大群の場合、推薦入試の成績基準や合格者レベルには届かなくても、入学熱意や大学生活への目的観などによって、AO入試で合格できるケースも多々ある。
- (4)AO入試の選考法は多彩で、生徒に向くパターンの選択に留意させること。多くの書類のほか、面談・面接、課題レポート、小論文、集団討論、スクーリング、センター試験など様々な選考法があり、生徒の個性・能力に適した選考法のチェックにも注意させる必要がある。特に国立大志望者にとっては、年間を通してセ試対策を貫徹することが大切であるが、今年度は大阪大(6学部)が拡大導入、熊本大(グローバルリーダーコース)が新規実施することもあって、AO戦線には新たな展開がみられそうだ。
なお、7月上旬には弊社の全国大学・短期大学「AO入試年鑑」が発行されるので、これも生徒の啓発に役立ててほしい。
◆AO入試による大学入学状況
この10数年で、AO入試の実施状況は格段に進展したが、設置者別にみると、それぞれの入学者比率・入学者数には大きな差異がみられる。2015年度の文部科学省統計によると、AO入学者が全体に占める比率は、下記グラフのとおりとなっている。
文科省による入試結果の統計は、例年秋ごろ公表されるので、ここでは2015年度の統計を示した。前年の2014年度と比べ、国立大は全体の入学者は微減、AO入学者数は微増で、AO入学者比率は前年より0.1ポイント上昇して2.7%であった。公立大は全体の入学者数、AO入学者数ともかなり増加して、AO入学者比率は2.0%→2.2%へ若干上昇した。
私立大の場合、全体の入学者数が約8千5百人、AO入学者数が約2千人増加し、AO入学者比率は、前年の10.3%から10.5%へ増加し、初めて5万人の大台に達している。
一方、短大では公立・私立とも入学者数が減少し続けているが、私立短大におけるAO入学者比率はこの3年で19.8%→21.2%→21.9%と大幅に高まっていることが注目される。
推薦入試情報
◆推薦入試対策:2017生徒指導スタートのポイント
2017年度入試に向けてスタートを切るに当たり、推薦入試に関する基本的な対策・指導の主要ポイントを整理しておこう。言うまでもなく、推薦入試は国公私を問わず、導入率が高く、実施学部も豊富なので、現役合格の確保には欠かせない受験ルートだが、最終的には一般入試の学習対策も貫徹する姿勢が大切であることを早い段階から十分生徒に周知しておくことがきわめて大切である。
その上で、推薦入試を活用させる場合のキーポイントとして、次のような事柄があげられよう。
- (1)国公立大は全て専願制だが、私立大には専願制・併願制の2タイプがあること。当然ながら、専願制のケースは第1志望であることが望ましく、入学して悔いの生じない大学・短大であることが、生徒の将来を大きく左右する。併願制のケースは、中部・近畿・中四国に多く、複数校の併願も可能だが、やはり志望熱意の高い大学・学部を選択するのが原則だ。
- (2)一般推薦・ユニーク推薦の2タイプがあること。募集枠からみれば一般推薦が主流で、このタイプではやはり一定程度以上の成績水準(3.0~3.5以上)が必要になるので、前期や1学期の校内テストにはベストを尽くすよう指導しておきたい。ただし、学力試験を主要な選考法とするケース(特に近畿地区)は、成績基準を設けないのが一般的だ。いずれにしても、第1志望校の成績基準は、3年次の早い段階で確認させておく必要がある。
一方、ユニーク推薦は、自主的な特別・課外・社会活動や各種の検定資格等の実績を持つ者に向く。推薦入試が多様な個性・資質・キャリアを受け入れる入試ルートであること、上位私立大群も活発に導入していることを周知しておきたい。 - (3)学習・生活の両面でまじめさが必要なこと。推薦入試は調査書によって、高校時代の学習状況(所見含む)と出席状況その他の生活態度をきびしく検証する入試である。成績が志望校の基準を満たさない者はむろん、欠席日数がきわめて多い者、出席停止の記録がある者などは推薦入試の活用は難しい。
- (4)主要な選考法は、調査書プラス面接(口頭試問含む)、小論文、学力試験、実技の4タイプ。志望校の選考法を十分研究し、ふだんから基礎学力強化を含め万全の対策を徹底することが大切である。また、国公立大志望者は年間を通してセ試対策にもベストを尽くすことも肝要だろう。
◆推薦入試による大学入学状況(入学者比率)
推薦入試制度の歴史は長く、国公私立大・短大それぞれで定着している。2015年度文科省統計によると、指定校制を含む入学者比率(推薦入学者数)は、下記グラフのとおりとなっている(2016統計は秋ごろ公表)。
国立大は2012~14の推薦入学者比率が12.4%→12.3%→12.2%と若干低下傾向がみられ、年度ごと100人程度ずつ減少していたが、2015年度も減少し、比率は12.1%となった。公立大は、前年度に続き、全体・推薦入学者数ともにやや増加し、推薦入学者比率は24.1%→24.0%と若干低下した。私立大の場合は、かなり変動している。全体の約8千5百人増に対して、推薦入学者数も約5千人増加して、推薦入学者比率は39.7%→40.1%と再び4割を回復した(一般入学比率が低下)。
一方、短大の方は公私とも全体の入学者数、推薦入学者数が減少しているが、入学者比率は公立が41.5%→42.3%、私立が61.3%→62.1%へ上昇している。
ニュースフラッシュ
◆3月末申請の29年4月開設予定の学部・学科
文科省は本年3月末に申請のあった「平成29年度開設予定の学部等の設置認可」に関する諮問状況を以下のとおり公表した。
<大学の学部の設置>19校
- ■岩手医科大
- 看護学部=看護学科90
- ■いわき明星大
- 看護学部=看護学科80
- ■国際医療福祉大
- 医学部=医学科140(千葉県成田市)
- ■平成国際大
- スポーツ健康学部=スポーツ健康学科100
- ■開智国際大
- 教育学部=教育学科初等教育専攻48・中等教育専攻24(リベラルアーツ学部は募集停止)
- ■秀明大
- 看護学部=看護学科80
- ■中央学院大
- 現代教養学部=現代教養学科100
- ■東京情報大
- 看護学部=看護学科100
- ■津田塾大
- 総合政策学部=総合政策学科110
- ■北陸大
- 医療保健学部=医療技術学科60
- ■松本大
- 教育学部=学校教育学科80
- ■中部学院大
- スポーツ健康科学部=スポーツ健康科学科80(経営学部は募集停止)
- ■日本福祉大
- スポーツ科学部=スポーツ科学科180
- ■鈴鹿大
- こども教育学部=こども教育学科幼児教育学専攻40・養護教育学専攻40
- ■京都産業大
- 現代社会学部=現代社会学科300、健康スポーツ社会学科100
- ■京都ノートルダム女子大
- 現代人間学部=福祉生活デザイン学科70、心理学科100、こども教育学科70
- ■大阪歯科大
- 医療保健学部=口腔保健学科70、口腔工学科30
- ■広島修道大
- 健康科学部=心理学科80、健康栄養学科80
- ■久留米大
- 人間健康学部=総合子ども学科50、スポーツ医科学科70
<短期大学の学科を設置するもの>2校
- ■東京経営短大
- こども教育学科60
- ■東大阪大短大部
- 実践介護福祉学科80
<学部の学科を設置するもの>8校
- ■札幌保健医療大
- 看護学部=栄養学科80(看護→保健医療学部へ名称変更)
- ■仙台大
- 体育学部=子ども運動教育学科40
- ■流通経済大
- スポーツ健康科学部=スポーツコミュニケーション学科100
- ■日本保健医療大
- 保健医療学部=理学療法学科80、作業療法学科40
- ■松蔭大
- コミュニケーション文化学部=子ども学科48
- ■朝日大
- 保健医療学部=健康スポーツ科学科120
- ■愛知淑徳大
- 健康医療科学部=健康栄養学科80
- ■聖カタリナ大
- 人間健康福祉学部=看護学科80
【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座
推薦入試(1):入試制度の沿革・概要・現状
昭和30年代、推薦入学制はすでに私立大の一部で導入されていたが、文科省は1966年(昭和41年)に推薦入学制と能研テストを柱とする国立大学入試実施要項を発表した。つまり、戦後の大学入試で正規に推薦入試が実施されるようになったのは、1967年度入試からということになる。ちなみに、1970年当時の実施校は、国立大6校、公立大3校、私立大114校に過ぎなかった。その後、次第に増加し、今日では大学入試の主要区分として重要な役割を果たしている。
この間、推薦入試に関する文科省施策の重要な軌道修正をみると、次のようになっている。
(1)1995年度:推薦規制策の実施
公募推薦だけで私立大の志願者が軽く50万人を超える熱狂ぶりと無秩序なありように対し、文科省は1.推薦定員の制限(大学3割、短大5割以内)、2.実施時期の制限(出願開始11月1日以降)、3.学力検査免除の徹底、という3つの歯止めをかけた。これによって、西日本を中心に「地すべり的な志願減現象」が広がったが、一方ではユニーク推薦拡大の契機ともなった。
(2)2000年度:定員規制の緩和
18歳人口の減少につれて、私立大・短大の定員割れを危惧した文科省は、定員規制を大学5割、短大は撤廃と大幅に緩和。再び推薦入試へのシフトが強まった。
(3)2007年度:入試区分名称と学力検査に関する修正
文科省は入試実施状況の統計等で用いていた「推薦入学」の名称を「推薦入試」へ変更。「学力検査の免除を徹底」という項目を「原則として免除」という緩やかな表現に改めた。
(4)2008年度:国大協が推薦定員枠を拡大
それまで推薦定員枠を3割以内としていた国大協は、後期日程の廃止を容認すると同時に、推薦単独または推薦+AOの上限定員を5割へ引き上げた。
(5)2011年度:学力把握措置を明確化
大学入学者選抜実施要項の大幅な改訂によって、推薦入試でも初めて具体的な学力把握措置が義務づけられることになった。各大学は高校の教科の評定平均値を出願要件や合否判定に用いることとし、その旨を募集要項に明記することを義務づけたほか、推薦書・調査書だけで志願者の能力・適性等の判定が困難な場合は、個別検査(筆記、実技、面接等)、セ試成績、資格・検定等の成績、のうち少なくとも1つを講ずることが望ましいとした。
制度の発足から半世紀近い歴史を持つ推薦入試は、高校側の見識に基づき、生徒の高校教育と大学教育とのスムーズな接続を図る上で重要な役割を担い続けてきた。今日の公募推薦は、ユニーク推薦(上位私大群も活発に導入)の拡大と共に複線化・多様化の一途を辿っている。
そして、公募制推薦入試の実施状況(2016年度/弊社調査)と推薦入学者比率(2015年度/文部科学省統計)は次のようになっている。
<実施状況>国立大82校中77校(93.9%)、公立大84校中82校(97.6%)、私立大580校中554校(95.5%)、公立短大15校中15校(100%)、私立短大311校中309校(99.4%)
<推薦入学者比率>国立大12.1%、公立大24.0%、私立大40.1%、公立短大42.3%、私立短大62.1%
国立大の推薦入学枠は、実施校に限れば20~30%にのぼる。国公私立大・短大を問わず、推薦入試が大きな比重を占めており、高校進路指導でも推薦入試対策の充実化が不可欠である。推薦入試は「高校3年間の充実した生活」が決め手。できる限り、高校1・2年次の早期からガイド・助言を徹底するのが望ましい。また、国公私ごと、推薦入試の実施形態は異なるが、それに関しては弊社の全国版「推薦入学年鑑」(9月初旬発行)を参照してほしい。