AO・推薦入試エクストラ5月10日号
事前対話型AOのエントリーから合格までのポイント
AO入試情報
◆私立大・短大:事前対話型AOのエントリーから合格までのポイント
受験生と大学側との双方向の事前対話(コミュニケーション)を中心に選考するパターンは、私立大では全体の1割程度と少ないが、私立短大では大多数を占める。
まず注意すべきは、その実施時期。エントリーが5~6月の早い段階から始まるケースが多い。これらの大学は、文科省が実施要項で定める出願開始期(8月1日以降)にエントリーは該当しないと考えているわけだが、実際には実施要項改訂以降、エントリー日程を8月1日以降に変更する大学が増えた。
エントリーが早いケースでは、面談・面接も6~7月に活発に行われる。面談の回数は1~3回で異なるが、一般的には2回程度が多い。第1回目で受験生の志望動機や意欲、入学後の抱負や計画、将来の希望進路などに基づき試問が行われ、明確な進学スタンスを持っているかが評価される。同時に、大学側からは教育や進路支援などに関する丁寧な説明が行われ、第2回目の面談に向けての課題等を提示するケースも多い。
第2回目の面談では、課題等の内容が審査され、入学意志の確認が行われる。当然ながら、面談の中で基礎的な学力試問を行うケースもある。課題の仕上げにもベストを尽くすことが大切だ(8月以降のエントリーも手順は同じ)。
以上の審査を経て出願許可(合格内定)通知が届けば、正規の出願書類を所定期日(8月1日以降)までに提出し、合格通知後に入学手続きを取ることになる。正規出願の段階から専願とするケースが一般的だ。
この事前対話型を活用する場合、人とのコミュニケーションを苦にせず、積極的に楽しめる位の生徒が一番適している。それに加えて、(1)早い段階で第1志望が確定していること、(2)エントリーシート・課題の作成に万全を期すこと、(3)的確な応答ができるよう面談・面接対策を徹底すること、の3点が大切である。
◆私立大AO入試の選考パターン
弊社では2013年度の私立大AO入試に関して、その選考方法を7パターンに分け、統計調査を実施した。その結果を示すと、下記グラフの通りとなる。
上記グラフの通り、私立大で事前対話型は少数派だが、授業参加型と共にAOならではの選考法として用いられている。全般的には一般推薦と同じ書類・面接型が中堅私立大群では最も多い。それに対して、難関・有名私立大や中堅上位群では2段階型という、きびしい選考法が導入されていることも、AO入試の大きな特徴といえよう。また、学科試験を課すのは、医・薬・理工系で目立っている。
推薦入試情報
◆私立大:推薦区分の多様化と概要
私立大における公募制推薦入試のありようは、1990年代に入るころから大きく変貌し始めた。それまで、推薦入試といえば、学習・生活の両面でまじめであり、一定程度以上の成績水準にある生徒を学校長が推薦するものが中心で、いわば学力重視型であった。
ところが、90年代以降になると、まずスポーツ推薦や有資格者推薦、課外活動推薦などが活発化し始め、次に一芸一能推薦、特定教科推薦、宗教関連推薦など多様化し、近年では自己推薦、専門課程推薦が大幅に増加した。これらを弊社でユニーク推薦と総称しているが、このユニーク推薦は一般推薦と比べ、多様な個性・資質・キャリアに対応する入試として、今日の大学入試の中で重要な役割を果たしていることが特筆される。
2000年代に入ると、一般推薦を主軸としながらも、多様な推薦入試区分を設定する複線化が激増し始め、今日では1大学が3~5区分にわたる推薦入試を実施するケースが珍しくなくなった。
現在、弊社ではユニーク推薦を13タイプに分類している。注目すべきは一般推薦を実施しない難関・有名私立大群でも、このユニーク推薦は活発に導入していることだ。学術・文化・芸術・スポーツ・生徒会・ボランティア活動などで実績とキャリアを積んだ受験生には、有名私立大群の攻略にこの受験ルートを活用できる。
成績基準を問わないユニーク推薦としては、自己推薦が代表格。生徒自身の意欲、進学目的、将来の計画などを重視して選考するこの入試は、高校時代の成績をさほど気にせず、だれもが活用できる。一般入試では不利が大きい専門・総合学科出身でも、専門課程推薦を活用すれば、大学の門戸はひらける。
以上のとおり、推薦入学者が全体の4割を占める今日、私立大の公募制推薦入試は、多様化している受験生のあらゆる能力、資質、個性に対応するものとなっている。一般入試で第1志望合格を目ざす受験生は別として、推薦実施校群の中に第1志望がある受験生なら、公募推薦入試は避けては通れない受験ルートといえよう。
◆私立大:ユニーク推薦の地域別実施状況
弊社では、私立大ユニーク推薦のタイプを13種類に区分し、毎年度、その実施状況を調査統計としてまとめている。2013年度の実施状況は、下表に示す通りとなっている。
北海道 東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国 四国 |
九州 | (計) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
特定教科推薦 | 11 | 20 | 10 | 4 | 6 | 6 | 57 |
専門課程推薦 | 9 | 29 | 28 | 29 | 9 | 17 | 121 |
スポーツ推薦 | 5 | 28 | 28 | 34 | 11 | 14 | 120 |
有資格者推薦 | 9 | 33 | 16 | 15 | 7 | 13 | 93 |
課外活動推薦 | 15 | 32 | 15 | 21 | 10 | 8 | 101 |
一芸一能推薦 | 0 | 3 | 1 | 2 | 1 | 3 | 10 |
女子学生推薦 | 0 | 1 | 4 | 3 | 0 | 0 | 8 |
宗教関連推薦 | 2 | 11 | 3 | 10 | 2 | 2 | 30 |
同窓子女推薦 | 5 | 17 | 1 | 11 | 1 | 2 | 37 |
奨学生推薦 | 1 | 3 | 3 | 4 | 4 | 6 | 21 |
地域推薦 | 1 | 4 | 2 | 3 | 3 | 1 | 14 |
自己推薦 | 13 | 43 | 26 | 25 | 13 | 6 | 126 |
その他の推薦 | 4 | 20 | 6 | 11 | 2 | 3 | 46 |
(計) | 75 | 244 | 143 | 172 | 69 | 81 | 784 |
ユニーク推薦の草分けとなったのは、スポーツ推薦、課外活動推薦、有資格者推薦だが、今日、タイプ別に見て多いのは、自己推薦、専門課程、スポーツ、課外活動、有資格者の5タイプ。女子学生推薦は、近年、幅広い学部系統で女子の4大進学率が上昇していることに伴って減少傾向にある。一芸一能推薦も以前と比べるとかなり減少した。逆に増加しているのは、地域推薦とその他で、その他が増加していることは推薦入試の多様化が進んでいることを反映している。
地区別に見ると、やはり大都市圏を含む関東・近畿・中部地区での実施が目立つが、特に地域的な偏りはなく、全国的に展開されていることが分かるだろう。
ニュースフラッシュ
◆文科省が24年度私立大の学生納付金調査を公表
文部科学省は日本私立学校振興・共済事業団からデータの提供を受け、私立大・短大の昼間部における平成24年度初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果を公表した。その概要をご紹介する。
(1)授業料、入学料及び施設設備費の状況
区分 | 授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 合計(円) | 増減率(%) |
---|---|---|---|---|---|
文科系学部 | 741,945 | 250,910 | 160,424 | 1,153,279 | △0.2 |
理科系学部 | 1,035,955 | 265,942 | 189,582 | 1,491,479 | △0.4 |
医歯系学部 | 2,803,165 | 1,034,844 | 883,265 | 4,721,274 | △1.7 |
その他の学部 | 939,245 | 273,690 | 244,735 | 1,457,671 | 1.4 |
全平均 | 859,367 | 267,608 | 188,907 | 1,315,882 | 0.1 |
理科系の中では、薬学系の納付金が約208万円で最も高い。ただ、全般的に納付金は「その他の学部」を除き、前年より若干下がっているのが特徴だ。
区分 | 授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 合計(円) | 増減率(%) |
---|---|---|---|---|---|
全平均 | 694,777 | 248,770 | 177,971 | 1,121,517 | △0.1 |
(2)実験実習料・その他の納付金
区分 | 実験実習料 | その他 | 統計((1)を含む) | 増減率(%) |
---|---|---|---|---|
文科系学部 | 10,672 | 63,707 | 1,227,147 | △0.5 |
理科系学部 | 66,784 | 67,287 | 1,625,500 | △0.6 |
医歯系学部 | 181,760 | 2,076,688 | 6,979,722 | △9.9 |
その他の学部 | 80,737 | 76,190 | 1,614,598 | 1.5 |
全平均 | 35,337 | 91,878 | 1,443,097 | △0.7 |
歯学部では「その他」の納付金が前年の大幅減に続いて44.7%減で、以前の半額程度になり、受験生の保護者の負担軽減が進んでいる点が注目される。
【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座
AO入試(2):国公私立大・短大別実施状況、入学者比率
文科省が「大学入学者選抜実施要項」に初めてアドミッション・オフィス入試の制度を規定したのは1998年度で、その導入第1号は同志社大であった(慶大は1990年度から先行)。2000年度以降、国公私を問わず増え続け、弊社調査によると2013年度における実施状況は次のとおりとなっている。
設置者 | 学校数 | AO実施校数 | AO実施率 |
---|---|---|---|
国立大 | 82校 | 47校 | 57.3% |
公立大 | 81校 | 21校 | 25.9% |
私立大 | 576校 | 466校 | 80.9% |
公立短大 | 17校 | 5校 | 29.4% |
私立短大 | 325校 | 257校 | 79.1% |
国公立大・短大での実施率はまだ低いものの、私立大・短大ではこの10年余でめざましく拡大した。その結果、今日では大多数の私立大・短大でAO・推薦・一般の日程順で実施する3段階型入試が定着している。各入試の特徴を十分把握し、3区分全体を視野に入れた受験戦略を検討することが大切だろう。
一方、AO入学者数を文科省資料(2012年度統計)で示すと、次のようになっている。
設置者 | 全入学者数 | AO入学者数 | AO入学比率 |
---|---|---|---|
国立大 | 100,019人 | 2,855人 | 2.9% |
公立大 | 29,750人 | 561人 | 1.9% |
私立大 | 465,589人 | 47,210人 | 10.2% |
公立短大 | 3,425人 | 66人 | 1.9% |
私立短大 | 60,186人 | 11,673人 | 19.4% |
最もAO入学者比率が高いのは、私立短大の19.4%(前年18.9%)、次いで私立大の10.2%(前年10.4%)、特に私立短大ではAO入学者が一般入学を上回るのは、もう時間の問題とみられる。国公立大の場合、全体に占めるAO入学者比率は小さいが、実施する大学・学部における比率は10~20%程度を占めるので、適性・能力を備えた生徒には貴重な受験ルートになるだろう。