AO・推薦入試エクストラ8月10日号
AO入試の志願者数は関東地区が群を抜く
AO入試情報
~私立大:2012AO戦線の動向分析(1)~
AO入試の志願者数が10万人の大台に接近しつつある段階を迎えて、弊社「AO入試年鑑」では本格的な統計作業を開始した。その重要ポイントを今号と次号の2回でご紹介する。
まず、AO入試を実施する大学数・学部数を地区ごとに見てみよう。
北海道 東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国 四国 |
九州 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
大学数 | 40 | 169 | 78 | 99 | 38 | 43 | 467 |
人文科学 | 13 | 87 | 30 | 60 | 19 | 20 | 229(17.7%) |
社会科学 | 42 | 169 | 76 | 115 | 37 | 35 | 474(36.7%) |
教育(教員養成) | 7 | 38 | 18 | 26 | 16 | 7 | 112( 8.7%) |
理工 | 11 | 60 | 15 | 26 | 15 | 12 | 139(10.8%) |
農・水産・獣医 | 0 | 10 | 1 | 3 | 1 | 1 | 16( 1.2%) |
保健・医療 | 9 | 48 | 16 | 22 | 12 | 9 | 116( 9.0%) |
生活(栄養) | 4 | 28 | 14 | 19 | 9 | 7 | 81( 6.3%) |
芸術 | 6 | 23 | 10 | 19 | 7 | 6 | 71( 5.5%) |
スポーツ(健康) | 4 | 14 | 13 | 16 | 3 | 3 | 53( 4.1%) |
実施学部数は前年の1,230学部から1,292学部へ増加。推薦入試の1,616学部と比べると少ないが、年々増加傾向を示している。推薦入試と決定的に異なるのは、理工系が保健・医療系をまだ上回っている点だろう。芸術・スポーツ系の実施学部数は推薦入試とほぼ同レベルで、社会科学系のAO実施率も高い。人文・教育・理工・保健系では、まだ実施学部数にかなり開きがある。
AO実施率では、中国・四国地区がトップだが、実施学部の豊富さではやはり関東地区が群を抜いている。
◆AO入試の志願者数は関東地区が群を抜く
弊社では本年度初めてAO入試の志願者数・合格者数を各地区ごとに集計した。むろん、文科省の資料と異なり、データ公表校のみの集計であるが、驚くべき結果になっている(推薦を含むデータは統計から除外した)。2011年度の結果は下記グラフのとおりとなった。
関東地区における志願者数が群を抜き、公募推薦が「東低西高型」であるのとは対照的に「東高西低型」となっている。その最大の要因は、関東地区の推薦では全般に成績基準が厳しいのに対して、AO入試は出願のハードルが低いことによる。こと成績基準に関しては、近畿の公募推薦と同様の状況が形成されている。
推薦入試情報
~東日本私立大:2012新規推薦入試情報(速報)~
東日本の私立大について、推薦入試の主な新規実施情報をまとめてお伝え する(カッコの新設は平成24年4月新設予定、人数は募集人員を示す)。
- (1)札幌大 自己推薦B・C日程を新設(法学部以外)
- (2)千歳科学技術大 自己推薦(併願入試‐15人)を新規導入
- (3)北海商科大 公募推薦(課外活動)を復活(10人)
- (4)北海学園大 工学部生命工学科(新設)が推薦実施(4人)
- (5)八戸大 全学部で奨学生推薦を導入
- (6)仙台大 現代武道学科で同窓生教員推薦を実施
- (7)東北文化学園大 リハビリテーション学科で自己推薦を導入
- (8)いわき明星大 全学部で自己推薦を導入
- (9)群馬医療福祉大 リハビリテーション学部(新設)が推薦実施
- (10)共栄大 教育学部が新規実施
- (11)浦和大 全学部で専門課程推薦を導入
- (12)日本医療科学大 看護・臨床工学科(新設)が推薦実施
- (13)淑徳大 栄養学科(新設)が推薦実施
- (14)千葉経済大 専門課程推薦(商業科特別)を導入(10人)
- (15)千葉工大 全学部で一般推薦・専門課程推薦を導入(一般=工40人、情報科学10人、社会システム11人、専門=工20人、情報科学4人、社会システム6人)
- (16)明海大 歯学部が公募推薦を新規実施(5人)
- (17)青山学院大 文学部比較芸術学科(新設)がスポーツ・自己推薦を実施
- (18)亜細亜大 国際関係学部多文化コミュニケーション学科(新設)が推薦実施(一般=15人)
- (19)嘉悦大 ビジネス創造学部(新設)が推薦実施
- (20)実践女子大 生活環境学科で自己推薦を導入(1人)
- (21)帝京平成大 健康メディカル・地域医療各学部の作業療法学科が推薦実施
- (22)東京聖栄大 食品学科が2期を新設(4人)
- (23)東京未来大 モチベーション行動科学部(新設)が推薦実施
- (24)東京薬科大 男子・女子部とも同窓子女推薦を導入(各2人)
- (25)東邦大 理学部化学科が新規実施
- (26)東洋大 理工学部都市環境デザイン学科が新規実施
- (27)法政大 グローバル教養学部がB日程(1月入試)を新設(6人)
- (28)神奈川大 工学部総合工学プログラム・経営工学科(各新設)が推薦実施(各5人)
- (29)松本大 総合経営学部で自己推薦(10人)、全学部で専門課程推薦を導入(8人)
- (30)新潟医療福祉大 理学療法学科で基礎学力試験を課す特別推薦を導入(8人)
◆公募推薦の志願者は2.1%増、合格者は1.2%減
弊社では9月初旬発行の「推薦入学年鑑」の編集作業が最終段階を迎えているが、このほど2011年度公募推薦の志願・合格状況を集計し終えたので速報しておきたい(公募制の動向を把握する目安として実施。データ公表校のみで一部はAO・指定校制を含む)。
全国の志願者数は計231,677人で、前年より4,679人、2.1%の小幅増であった。合格者数は109,337人、前年より1,305人減、1.2%減でAOで合格者を多めに取る分、推薦合格者を絞り込む傾向が続いている。
学部系統別の志願者・合格者数は下記グラフのとおりであった。
ニュースフラッシュ
~日本私立学校振興・共済事業団が2011志願動向を公表~
日本私立学校振興・共済事業団は、毎年度「学校法人基礎調査」を5月1日を基準に実施している。その調査をもとにこのほど2011年度入学志願動向に関する集計結果を公表した。株式会社設立による大学、募集停止の大学、通信教育課程のみの大学は集計対象外で、調査未提出が1校あったが、集計数は572校にのぼり、私立大のほぼ全てを網羅しており、全体の動向を把握できる資料として知られる(文科省の統計は11月ごろ公表)。
23年度 | 22年度 | |
---|---|---|
集計学校数 | 572校 | 569校 |
入学定員 | 452,997人 | 450,816人 |
志願者 | 3,210,059人 | 3,178,078人 |
受験者 | 3,091,332人 | 3,062,895人 |
合格者 | 1,079,522人 | 1,054,804人 |
入学者 | 481,955人 | 489,030人 |
志願倍率 | 7.09倍 | 7.05倍 |
合格率 | 34.92% | 34.44% |
歩留率 | 44.65% | 46.36% |
定員充足率 | 106.39% | 108.48% |
入学定員、志願者数、受験者数、合格者数は増加したが、入学者数は約7千人減少した。入学定員充足率は前年より平均で2.09ポイント低下し、未充足の大学は5校増加して223校となり、全体に占める未充足校の割合は39.0%にのぼる。学部系統別の志願動向では、社会科学・体育学・芸術系を除く全系統で志願倍率が上昇した。
◆私立大で充足率50%未満は13校から16校へ増加
日本私立学校振興共済事業団によると、定員充足率は、大学の規模、所在地域によってかなり異なる。23年度には、1校当たりの入学定員が100人未満、500人~600人未満の区分で充足率が好転した。地区別では、千葉・東海・四国で上昇している。
充足率の分布は下記グラフのとおりとなっている。
上記でまず目につくのは、50%未満が13校から16校に増加している点だろう。今後の2~3年で募集停止に追い込まれる私立大が増加する懸念がある。また、定員充足率120%以上の存在も問題で、これが大幅に減少したことは大学の教育環境の改善につながる。
【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座
~AO入試(5):私立大・短大の選考パターンの特徴~
ご存知のとおり、AO入試の選考パターンは、推薦入試より多様で、事前対話型、授業参加型など独自の選考法も導入されている。2段階選抜型(1次=書類、2次=面接等)は、国公立大の推薦入試ではポピュラーだが、私立大の推薦入試では少ない。ところが、AO入試では、この2段階選抜型も主要選考パターンの1つになっている。主要な選考パターンの特徴を簡潔にご紹介しておく。
- (1)事前対話型 エントリー後、複数回の面談によって、正規出願(合格内定)を許可する。課題を提示して、その取り組みぶりと成果を評価に加えるケースが多い。
- (2)授業参加型 体験授業・体験入学・セミナーなどに参加させ、その評価によって正規出願(合格内定)を許可する。1日~3日の日程で実施される。
- (3)書類・面接型 出願書類と面接の評価によって合否を判定。推薦入試と共通の選考法でこのパターンが最も多い。
- (4)書類・面接・学科試験型 出願書類・面接のほかに学力検査を行う。保健・医療系をはじめ自然科学系に目立つ。
- (5)書類・面接・小論文型 出願書類・面接のほか小論文を課す。文系・理系を問わず用いられるが、推薦入試と比較すると少ない。
- (6)2段階選抜型 1次=書類、2次=面接・小論文等と2段階で選抜を行う。有名私立大群でこのパターンが多く、大学によっては1次合格率が30~50%ときびしいので、提出書類の作成が重要なカギとなる。
- (7)書類・実技型 芸術系・スポーツ系で用いられ、面接や小論文を含むケースも多いが、実技力の水準や活動実績が中心になる。
また、弊社では2012年AO入試実施校の選考パターンを地域別累計にまと めたので参考にしてほしい。
北海道 東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国 四国 |
九州 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
(1)事前対話型 | 9 | 15 | 8 | 10 | 8 | 3 | 53 |
(2)授業参加型 | 3 | 23 | 9 | 20 | 8 | 2 | 65 |
(3)書類・面接型 | 18 | 76 | 35 | 44 | 16 | 26 | 215 |
(4)書・面・学科型 | 2 | 26 | 8 | 6 | 3 | 1 | 46 |
(5)書・面・小論文型 | 4 | 35 | 14 | 14 | 10 | 9 | 86 |
(6)2段階選抜型 | 8 | 44 | 21 | 35 | 5 | 10 | 123 |
(7)書類・実技型 | 3 | 16 | 5 | 10 | 5 | 3 | 42 |
なお、私立短大ではパターン(1)がだんぜん主流を占め、次いで(3)、 (2)、(5)の選考法を用いるケースが目立つ。