AO・推薦入試エクストラ8月25日号
2019国立大のAO志願者数が史上最高を更新
AO入試情報
◆国立大:2019国立大のAO志願者数が史上最高を更新
国立大AOの志願者数は、2016年度に初めて1万の大台に乗った後、2017・18年度も連続して増加し、2019年度1万3千人を超えたことが判明した(弊社集計)。 志願者数・合格者数を示すと次のとおり。
志願者数 | 合格者数 | 競争率 | |
---|---|---|---|
人文科学系 | 1,172 | 294 | 4.0 |
社会科学系 | 2,045 | 637 | 3.2 |
教育・教員養成系 | 1,373 | 446 | 3.1 |
理学系 | 1,058 | 340 | 3.1 |
工学系 | 4,019 | 1,187 | 3.4 |
農・水産系 | 1,185 | 339 | 3.5 |
保健・医療系 | 1,966 | 486 | 4.0 |
芸術・スポーツ系 | 434 | 110 | 3.9 |
(計) | 13,252 | 3,839 | 3.5 |
この統計をとったのは、実は弊社でも初めてのことである。これまでは私立大に比べて、人数が少ないことから詳細の調査を行わなかったが、データは雄弁に国立大AOの状況を示している。
最も志願者の集中が際立ったのは工学系で4千人を超え、理学系と合せると5千人超となる。第2位は社会科学系の2,045人だが、ほぼ同じレベルで保健・医療系の人気が続いている。
競争率からみると、保健・医療系と人文科学系の4.0倍をはじめ、芸術・スポーツ系の3.9倍、農・水産系の3.5倍、工学系の3.4倍などが高くなっている。
◆2019公立大のAO志願者数は微増
公立大のAO志願者数は、2018年度に大幅に増加して、3千人を超えたが、2019年度はそれを若干上回る形でさらに増加した(弊社集計)。
志願者数・合格者数を示すと次のとおり。
志願者数 | 合格者数 | 競争率 | |
---|---|---|---|
人文科学系 | 575 | 144 | 4.0 |
社会科学系 | 1,418 | 445 | 3.2 |
教育・教員養成系 | 93 | 30 | 3.1 |
理工学系 | 487 | 174 | 2.8 |
農・水産系 | 30 | 15 | 2.0 |
保健・医療系 | 249 | 52 | 4.8 |
芸術・スポーツ系 | 299 | 72 | 4.2 |
(計) | 3,151 | 932 | 3.4 |
公立大のAO実施学部は、社会科学系が全体の4割強を占め、次いで理工学系が19.0%、人文系15.5%で、保健・医療系も8.6%どまりで少ない。
志願者数をみると、社会科学系が全体の45%を占めて、断然多いのが目につく。次いで人文系の575人、理工学系の487人と続くが、その他の系統は少ない。
競争率をみると、群を抜くのは保健・医療系の4.8倍で、この系統はかなりの難関とみてよい。次いで、芸術・スポーツ系は4.2倍、人文系の4.0倍が高い。今後も公立大でAO(総合型選抜)が活発化する兆しはほとんどなく、現況のような入試動向が続くとみられる。
推薦入試情報
◆国公立大:2020推薦入試の新規実施速報
弊社では9月初旬に全国の高校へ2020全国版「推薦入学年鑑」をお届けする予定だが、本年度も国公立大で注目すべき新規実施のケースが若干あり、年鑑より一足早く新規実施情報を速報でご紹介する(学部改組のケースは除く。詳細は弊社年鑑を参照してほしい)。
<国立大>
- ■宇都宮大
- <一般推薦A>共同教育学部=学校教員教育人間科学系‐教育心理2人(3.5以上)
- ■群馬大
- 共同教育学部=学校教員自然科学系‐技術1人(工業・総合学科出身者)、芸術・生活・健康系‐音楽4人(全体3.5以上または音楽4.0以上)、教育人間科学系‐教育2人、教育心理2人(3.5以上)
- ■信州大
- <推薦入試II>経法学部=応用経済学科10人、総合法律学科10人(4.0以上)
- ■大阪教育大
- <CTを課す推薦>教育学部=学校‐小中理科5人、中等理科3人(3.8以上)
- ■広島大
- 教育学部=第三類‐国語文化系3人(全体3.8以上で国4.0以上)
- ■長崎大
- <推薦入試I>情報データ科学部=情報データ科学科5人(工業・情報・総合学科出身者)
- <推薦入試I>情報データ科学部=情報データ科学科5人(工業・情報・総合学科出身者)
- ■鹿児島大
- <推薦入試II>教育学部=学校教育‐初等一般10人(4.1以上)、初等音楽5人(3.8以上)、初等保体9人(3.8以上)
- ■琉球大
- <推薦入試II>理学部=物質地球科学科‐地学系2人(4.0以上)
- ■横浜市立大
- <特別推薦‐神奈川県指定診療枠>医学部=医学科‐県内枠2人、県外枠1人(4.3以上)
- ■新潟県立大
- 国際経済学部=国際経済学科25人(4.0以上、全国)
- ■富山県立大
- <普通科対象>工学部=電気電子工学科11人、情報システム工学科11人(全国、職業科対象は県内で若干)
- ■福井県立大
- 生物資源学部=創造農学科7人(国・数・理・英の平均4.0以上)
- ■福知山公立大
- 情報学部=情報学科‐全国枠20人、地域枠10人、専門学科枠5人(3.8以上)
- ■高知工科大
- <センターあり‐全国枠>環境理工学群5人
◆公立大:2020推薦入試の新規実施速報
ここでは公立大の2020推薦入試のうち新規実施情報をまとめてご紹介する(学部・学科改組のケースは除く。詳細は弊社年鑑を参照してほしい)。
<公立大>
ニュースフラッシュ
◆令和2年度「大学入学者選抜実施要項」は「電磁的記録の調査書」を認める
本年6月4日付けで出された「令和2年度大学入学者選抜実施要項」は、中教審答申「高大接続・入試改革」の提言をふまえ、前年とほぼ同じ内容で具体的な内容を示すものになっており、専門職大学・短大を含む点も同じである。ここでは、要項の項目ごと、主要な事項を整理しておこう。
- <第1 基本方針>
- 「大学入学者選抜は、各大学(専門職大・短大含む)がそれぞれの教育理念に基づき、生徒が高等学校段階までに身につけた力を、大学において発展・向上させ、社会へ送り出すという大学教育の一貫したプロセスを前提として~(中略)~大学への入口段階で入学者に求める力を多面的・総合的に評価・判定することを役割とするものである」と明快に規定。選考の際、「各大学は、年齢、性別、国籍、家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮する」という一文も継続されている。
- さらに「学力を構成する特に重要な以下の三つの要素をそれぞれ適切に把握するよう十分留意する」と明記している。
- (1)基礎的・基本的な知識・技能
- (2)知識・技能を活用して、自ら課題を発見し、その解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力
- (3)主体性を持ち、多様な人々と協働しつつ学習する態度
- <第2 アドミッション・ポリシー>
- ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシーそれぞれを明快に示して、各大学の努力を促す内容になっており、高等学校で履修すべき科目や取得が望ましい資格なども「入学後の教育課程を踏まえ」を示すこととされている。
- <第3 入試方法>
- 一般入試の選抜法に、集団討論、プレゼンテーションその他の能力・適性等に関する検査、活動報告書、大学入学希望理由書及び学修計画書、資格・検定試験等の成績などが加えられ、入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価・判定する入試方法と規定している。
- また、アドミッション・オフィス入試は詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって、入学志願者の能力・適性や学習に対する意欲・目的意識等を総合的に判定する入試方法、と定義。各大学が実施する検査内容のうち、従来の面接は口頭試問に変わっているので注意したい。推薦入試に関しては、出身高等学校長の推薦に基づき、原則として学力検査を免除し、調査書を主な資料として判定する入試方法、と規定している。 一般・AO・推薦入試のいずれも、令和2年度は従来どおりの日程で実施される。
- <第4 調査書>
- 従前の「調査書を十分活用することが望ましい」から「調査書を十分活用する」に改められている。また、大学で評価する事項を調査書にどう盛り込むのかという記載方法等を具体的に募集要項に記載することも義務づけている。なお、今年度から大学と高校が個別に合意した場合には、「電磁的記録による調査書」の提出が認められることになった。この場合は校長および記載責任者の押印は不要となる。合否判定にあたっては、未履修科目があることをもって、不利益な取り扱いがないよう配慮する点も同じである。
- <第5 学力検査等>
- 個別学力検査の実施に関しては、「複数教科を統合して学力を判断する総合的な問題の出題など、工夫に努めることが望ましい」とし、職業に関する科目の出題にも言及している。また、資格・検定試験等の成績の活用については、平成27年3月31日付文部科学省初等中等教育局長・高等教育局通知「英語力評価及び入学者選抜における資格・検定試験の活用について」を踏まえ、外国語のコミュニケーション能力を適切に評価する観点から4技能を測ることのできる資格・検定等の結果を採用するとし、国際科学オリンピック等、国際バカロレア成績等も一層の活用を図るよう促している。
- <その他留意事項>
- その他留意事項の第4項では、医学系の不適切入試の影響もあって、「入学者選抜の公正確保」について、きめ細かな指示を打ち出していることが注目される。
この3点は今後の大学入試の核になると予測される。
大学入試改革がスタートする2021年度入試では、これまでの選抜実施要項の内容を踏まえながらも、かなり変化すると思われる。高校教育の段階でも、それに対応した脱皮・変革が求められることは言うまでもない。