総合型・推薦型選抜エクストラ10月10日号
2023学校推薦型選抜出願時の必須チェック事項
総合型選抜情報
◆私立大:2023総合型選抜の全国統計レポート(3)
私立大2023総合型選抜における選考パターン・提出課題に関する弊社の統計レポートをお届けする(比率は少数第2位を四捨五入。ただし計は100%に調整)。
<選考パターン:全国> | (大学数) | (比率) |
---|---|---|
事前対話型 | 42校 | 4.5% |
授業参加型 | 106校 | 11.3% |
書類・面接型 | 240校 | 25.7% |
書類・学科試験・面接型 | 157校 | 16.8% |
書類・小論文・面接型 | 192校 | 20.5% |
2段階型 | 145校 | 15.5% |
書類・実技型 | 53校 | 5.7% |
(計) | 935校 | 100% |
(注)学部・学科により複数カウント。面談・面接にはプレゼンテーション・口頭試問を含む
総合型選抜の選考形態は多岐にわたっている。近年はオーソドックスな書類・面接型がやや増加傾向にあるが、書類・小論文・面接型に次いで、書類・学科試験・面接型や2段階型も多く、独自の授業参加型も全体の1割強を占めている。私立短大では事前対話型が主流を占めるが、私立大では全体の5%程度と少なく、やはり十分な入試対策を実行する必要がある。
<提出課題:全国> | 大学数(比率) |
---|---|
提出あり | 232校(43.4%) |
提出なし | 302校(56.6%) |
(計) | 534校 |
総合型選抜では、選考形態の多様さと同時に、出願時に一定の課題を提出させるケースが全体の43.4%を占める。課題は一般的に小論文、レポート、作文などが主流だが、特に書類・面接型、2段階型、授業参加型、事前対話型などでの提出が目立っている。調査書、活動報告書などの出願書類と同等の重みを持つので、課題の作成には十分時間を分けて準備したい。
◆私立大:2023総合型選抜の地区別選考パターン・提出課題の状況
ここでは2023総合型選抜の選考パターン・提出課題に関する地区別の弊社統計をご紹介する。各地区の特徴を十分把握しておいてほしい。
北海道 ・東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国・ 四国 |
九州 | 全国 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
事前対話型 | 4 | 10 | 7 | 10 | 4 | 7 | 42 |
授業参加型 | 10 | 28 | 15 | 35 | 12 | 6 | 106 |
書類・面接型 | 21 | 89 | 38 | 60 | 15 | 17 | 240 |
書類・学科試験・面接型 | 8 | 64 | 23 | 40 | 11 | 11 | 157 |
書類・小論文・面接型 | 18 | 65 | 38 | 39 | 13 | 19 | 192 |
2段階型 | 7 | 68 | 21 | 36 | 7 | 6 | 145 |
書類・実技型 | 3 | 20 | 7 | 17 | 2 | 4 | 53 |
(計) | 71 | 344 | 149 | 237 | 64 | 70 | 935 |
(注)学部・学科により複数カウント。事前面談・面接にはプレゼンテーション・口頭試問を含む
関東地区と近畿地区における上位3つの選考形態をみると、関東地区=(1)書類・面接型、(2)2段階型、(3)書類・小論文・面接型、近畿地区=(1)書類・面接型、(2)書類・学科試験・面接型、(3)書類・小論文・面接型という状況になる。特に近畿地区は授業参加型が全国の中でも際立っている。その他の地区では全形態とも幅広く実施されているが、どの地区においても事前対話型がかなり減少している(ここ3年はコロナ禍の影響もかなりあると思われる)。
北海道 ・東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国・ 四国 |
九州 | 全国 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
提出あり | 17(34.0) | 98(49.7) | 37(43.0) | 55(47.8) | 11(27.5) | 14(30.4) | 232(43.4) |
提出なし | 33(66.0) | 99(50.3) | 49(57.0) | 60(52.2) | 29(72.5) | 32(69.6) | 302(56.6) |
(計) | 50 | 197 | 86 | 115 | 40 | 46 | 534 |
全国平均では、出願時の課題提出のケースは約43.4%だが、それを上回っているのは関東地区の49.7%と近畿地区の47.8%で、この2地区では十分留意する必要がある。次いで中部地区の43.0%が高い。その他の地区もほぼ3割の大学が課題提出を義務づけている。
学校推薦型選抜情報
◆2023学校推薦型選抜出願時の必須チェック事項
いよいよ2023年度学校推薦型選抜への出願が目前に迫ってきた。一般選抜と異なり、高校側が責任を持って送り出す学校推薦型選抜の場合、担任や進路指導にはこの時期必ずやっておきたいチェック事項がある。その主要事項を簡潔に整理しておこう。
- <提出書類のチェック>
- 生徒が志望する大学への出願書類の最終チェックが必要。大学や推薦区分により、それぞれ提出書類は異なる。高校側で事前に統一の出願書類チェック表を用意し、生徒に記入・提出をさせるぐらいの周到さが必要で、どれか1つの書類が欠けただけでも出願不受理となるので十分注意したい。調査書では成績基準や履修状況および履修条件の確認、特記事項等が適切に記入されているかを綿密にチェックしておきたい。推薦書については、特に推薦理由を明確かつ効果的に表現する必要がある。生徒が作成する書類(志願理由書、活動報告書、自己推薦書等)については、当然ながら誤字・脱字を含む下書きの事前チェックが欠かせない。ただし、過度の添削は禁物で、生徒の個性を尊重すべきだろう。
- <面接力の最終チェック>
- 大学での試問事項を想定して、すでに何回かの面接トレーニングを実施されているはずだが、この直前期にはどの程度面接力が向上しているか、最終確認をし、欠点が残っていないか確認してほしい。国公私を問わず、面接は学校推薦型選抜の根幹をなすので、面接力の向上はきわめて大切だ。また、学力の3要素を把握するための選考方法として、口頭試問がかなり増加しているので、口頭試問対策も入念に準備しておく必要がある。
- <小論文作成力や基礎学力の最終チェック>
- 小論文や基礎学力試験における弱点、不十分さが残っていないか確認して、適切に指摘・指導することによって、短期間でも十分生徒のフォローはできる。
以上の点を総合したうえで、受験生の合格可能性が60%程度以上と判断されれば、出願へゴーサインを出してよいが、合格可能性が50%を切るようなら、専願制の鉄則にふれない第2志望校(併願校)も準備しておくべきだろう。
◆推薦区分ごとの主要書類と併願手順の鉄則
学校推薦型選抜では、推薦区分によって提出書類にも差異があるが、学校長の推薦書、調査書は必須の提出書類となる。ただし、近畿地区の一部では推薦書を要しない公募推薦も目立つ。各区分の主要書類を整理しておこう。
- (1)一般・特定教科・専門課程・女子学生・奨学生推薦
- この5区分では推薦書・調査書が中心。ただし大学によっては志願理由書のほか自己推薦書、活動報告書等の提出を求めるケースもある。国公立大の共テ併用型では学校推薦型選抜用の成績請求票も必要になる。
- (2)スポーツ推薦
- 学校長と部活動指導者の両方の推薦書が必要になるケースがあるので要注意。調査書も必須でほかに競技成績証明書、スポーツ競技歴書、活動報告書(資料)など。
- (3)有資格者推薦
- 推薦書、調査書のほか大学が指定する資格・検定の取得証明書(原本提出のケースもあるので要注意)、活動報告書など。
- (4)課外活動推薦・一芸一能推薦
- 推薦書、調査書のほか課外活動報告書、活動歴書、活動実績・検定取得証明などが必要で、なるべく詳細な資料を時系列方式で添付したほうがよい。
- (5)宗教関連推薦
- 学校長推薦書、調査書のほか洗礼証明書、宗教関係者の推薦書、宗教活動報告書などが必要になる。
- (6)地域推薦
- 学校長推薦書、調査書のほか地方自治体の首長や指定機関の推薦書が必要になる場合があるので注意したい。
- (7)その他の推薦
- 学校長推薦書、調査書のほか入試内容に応じて、関係団体・同窓会・OB教員等の推薦書等が必要になる。
また、どの区分であれ志願理由書、活動報告書等を提出させるケースもかなり多いので、大学の指定内容には十分注意しなければならない。
最後に学校推薦型選抜における併願手順については、専願制のみ注意すればよい。組合せは次の3パターンになる。(1)専願制第1志望+専願制第2志望(第1志望の合格発表後に試験を実施する大学がベスト)、(2)専願制第1志望+併願制第2志望(両方合格の場合は専願制に入学)、(3)併願制第1志望+併願制第2志望(入学手続締切日に注意して志望順位を決め、納付金を節約する)。専願制と併願制を組合わせて、両方に合格した場合、専願制に入学するのが鉄則である。詳細は弊社「学校推薦型選抜年鑑」の解説ページを参照してほしい。
ニュースフラッシュ
◆「情報」教員不足や際立つ地域格差
2025年度からの大学入学共通テストに出題される「情報」に関して、全国の公立高校で専門免許を持たない教員が教えている現状が朝日新聞の調査で明らかになった。
専門免許を持たない公立高校教員が多い都道府県は次のとおりであった。
<臨時教員免許> 栃木県47人、鹿児島県35人、茨城県31人、福井県16人、広島県16人、長崎県10人
<免許外> 長野県76人、福島県45人、北海道37人、岐阜県33人、広島県27人、高知県27人
上記の中で、今年度113人の教員が情報を教える栃木県の場合、正規の免許を持つのは41人どまり。他は臨時免許や他教科の免許を持つ教員が教える。正規免許所有者でも、取得年次が古いと最新の情報科内容には不安がある。
一方、東京都では今年度、都立高で情報科を教える教員235人全員が情報科の免許を持っている。臨時免許や他教科の免許しか持たない教員は皆無である。さらに都教委は、免許があっても他教科を主に指導していた教員の不安を払しょくするため、昨年度から研修を実施している。
情報Iを設置もしくは設置予定の高校は全国で計2,902校。高1で実施が2,211校、高2で実施が626校、高3が150校だった。高3で実施した場合、とても情報IIの開設はおぼつかない。
さらに情報Iを発展させた情報IIの設置も、地域格差が大きい。開設を予定するのは、わずか502校。高2が111校、高3が394校だった。東京都は情報Iの設置校の5割余にあたる84校が開設予定だが、神奈川県・埼玉県・千葉県が4割強で、都市部では比較的高いが、その他の地域は2~3割と低いのが目立つ。特に石川県の情報IIの開設予定校はゼロで、富山県、山梨県、滋賀県、鳥取県、香川県、宮崎県、鹿児島県の7県が各1校どまりとなっている。
従来の情報免許で情報IIの高度な内容について十分指導ができるのか、戸惑う教員も多い。近年の大学入試では情報系やデータサイエンスなどの学部・学科の人気は高く、これらでは情報IIの履修生を前提にした入試も検討する動きがあるようだ。
来年度からいよいよ情報教育が本格化する状況の中で、地方では学ぶ選択肢さえないというのは、余りにもお寒い入試環境ではないだろうか。