AO・推薦入試エクストラ9月25日号
国公立大:2018推薦入試の学部系統別志願動向(統計レポート2)
AO入試情報
私立大:2019AO入試全国統計レポート(1)
弊社が毎年実施しているAO入試に関する諸統計の結果について、数回に分けてレポートする。第1回は、私立大の学部別実施状況を中心にご紹介する。
まず、AO入試実施校は480校で、前年度に続き7校増え、AO実施率は82.5%となった。地区別の実施校数は次のとおりで、やはり関東・中部・近畿地区での実施が目立つ。
北海道・東北 | 関 東 | 中 部 | 近 畿 | 中国・四国 | 九 州 |
---|---|---|---|---|---|
43校 | 179校 | 77校 | 102校 | 36校 | 43校 |
学部系統別の実施状況(複合学部は複数扱い)をみると、計1,519学部で前年より65学部増加している(前年度68学部増)。昨今、学校数はやや頭打ちの傾向にあるが、学部数は依然として増加傾向にある。内訳は次のとおり。
学部系統 | 2019年度学部数 | 2019年度学部比率 |
---|---|---|
人文科学 | 261 | 17.2% |
社会科学 | 494 | 32.5% |
教育(教員養成) | 188 | 12.4% |
理工 | 129 | 8.5% |
農・水産・獣医 | 14 | 0.9% |
保健・医療 | 181 | 11.9% |
生活(栄養) | 93 | 6.1% |
芸術 | 74 | 4.9% |
スポーツ(健康) | 85 | 5.6% |
本年度の実施学部数では、保健・医療系の増加数が最も大きく、次いで教育(教員養成)系の増加が前年に続いて目立ったが、人文・社会系の増加ぶりも注目される。近年、教育・医療など資格型学部の新増設が際立っており、これらの系統では今後もAO実施校が増えると予測される。社会科学系は、学部の統合・再編が一段落して増加に転じたとみられる。 全体の実施学部数は、推薦入試の計1,837学部と比べてまだ少なく、特に保健・医療系は実施数がまだ推薦入試の6割弱程度にとどまっている。
◆私立大:2019AO入試の地区別学部実施状況
ここでは、私立大の2019年度AO入試に関する地区別の実施学部状況をご紹介する。私立大では地区ごとの実施状況にかなり差異があるので、進路指導に際しては十分留意してほしい。なお、弊社統計では複合領域の学部は複数で集計している。
系統 | 北海道 東北 | 関東 | 中部 | 近畿 | 中国 四国 | 九州 |
---|---|---|---|---|---|---|
人文科学 | 16 | 104 | 36 | 62 | 21 | 22 |
社会科学 | 40 | 188 | 73 | 114 | 37 | 42 |
教育(教員養成) | 14 | 69 | 28 | 44 | 19 | 14 |
理工 | 8 | 60 | 12 | 24 | 13 | 12 |
農・水産・獣医 | 0 | 8 | 2 | 1 | 2 | 1 |
保健・医療 | 14 | 72 | 30 | 37 | 19 | 9 |
生活(栄養) | 6 | 31 | 15 | 21 | 13 | 7 |
芸術 | 8 | 27 | 8 | 18 | 7 | 6 |
スポーツ(健康) | 5 | 26 | 21 | 20 | 6 | 7 |
(計) | 111 | 585 | 225 | 341 | 137 | 120 |
全般的には関東地区の学部数が群を抜いている。どの地区も社会科学系が最も多いが、特に北海道・東北地区では4割近くを占める。最も学部数の少ない農・水産・獣医系は、全14学部のうち8学部が関東地区に集中している。人気の高い教育系、保健・医療系は各地区とも相当数が実施している。
推薦入試情報
◆国公立大:2018推薦入試の学部系統別志願動向(統計レポート2)
これまで弊社では私立大の公募推薦入試に関する様々な統計を実施しているが、本年度も国公立大の学部系統別志願動向の調査統計もまとめたのでレポートしておきたい。
<国立大>
国立大の学部系統別志願動向は次のとおりであった。
学部系統 | 志願者数 | 合格者数 | 競争率(前年度) |
---|---|---|---|
人文科学 | 1,457人 | 529人 | 2.8倍(2.7倍) |
社会科学 | 5,146人 | 2,157人 | 2.4倍(2.5倍) |
教育・教員養成 | 6,319人 | 2,284人 | 2.8倍(2.7倍) |
理学 | 1,097人 | 505人 | 2.2倍(2.1倍) |
工学 | 6,053人 | 2,724人 | 2.2倍(2.2倍) |
農・水産 | 2,248人 | 988人 | 2.3倍(2.6倍) |
保健・医療 | 6,410人 | 1,885人 | 3.4倍(3.5倍) |
生活科学 | 236人 | 58人 | 4.1倍(3.9倍) |
芸術・スポーツ | 788人 | 313人 | 2.5倍(2.5倍) |
(計) | 29,754人 | 11,443人 | 2.6倍(2.6倍) |
国立大は全て公募制で入試結果の非公表校もないので、弊社集計と11月公表される文科省統計の誤差も小さいとみられる。まず全体的に志願者数の上位をみると、保健・医療系、工学系、教育・教員養成の3分野が6千人を超えてベスト3を占める。次いで社会科学系の5,146人、農・水産系の2,248人が続いている。理系(理・工・農・保健)の志願者数は約1万6千人で、全体の53.1%を占める。教育・教員養成系が第3位に入っていることは、この分野の志望者は女子が多いこともあり、推薦志向が強いとみられている。
一方、合格者でみると、工学系、教育・教員養成、社会科学系、保健・医療系の順に多い。最も合格者数が少ないのは生活科学系でわずか58人にとどまっている。
その結果、競争率では生活科学系の4.1倍が最も高く、次いで保健・医療系の3.4倍、人文科学系の2.8倍、教育・教員養成系の2.8倍、芸術・スポーツ系の2.5倍、農・水産系の2.3倍の順となっている。理・工学系は倍率が低く、推薦入試活用の余地がまだ大きいと言ってよい。
◆公立大:2018学部系統別志願動向
ここでは公立大の2018公募推薦入試の志願動向をレポートする。衆知のとおり、公立大は一部で指定校制を実施しており、全体の数値は弊社統計と文科省統計では若干差異が生じることをおことわりしておく。公立大の2018公募推薦入試結果の集計状況は以下のとおり。
学部系統 | 志願者数 | 合格者数 | 競争率(前年度) |
---|---|---|---|
人文科学 | 2,270人 | 839人 | 2.7倍(2.6倍) |
社会科学 | 5,918人 | 2,859人 | 2.1倍(2.1倍) |
教育・教員養成 | 571人 | 231人 | 2.5倍(2.8倍) |
理・工学 | 2,133人 | 945人 | 2.3倍(2.1倍) |
農・水産 | 600人 | 289人 | 2.1倍(2.3倍) |
保健・医療 | 5,669人 | 1,995人 | 2.8倍(2.9倍) |
生活科学 | 884人 | 232人 | 3.8倍(4.5倍) |
芸術・スポーツ | 991人 | 313人 | 3.2倍(3.3倍) |
(計) | 19,036人 | 7,703人 | 2.5倍(2.5倍) |
公立大における推薦実施学部数は、保健・医療系と社会科学系の2分野が群を抜いて多いのが特徴だが、志願者数も保健・医療系が5,669人、社会科学系5,918人とこの2分野だけが5千人を超えている。また、人文・社会科学系を合わせた文系2分野の志願者数は国立大を上回っている。
合格者数をみると、社会科学系、保健・医療系の2分野が突出しており、最も少ないのは国立大と同じく生活科学系の232人となっている。
競争率をみると、生活科学系の3.8倍(前年4.5倍)が最も高く、次いで芸術・スポーツ系の3.2倍、保健・医療系の2.8倍、教育・教員養成系の2.5倍の順となっている。
公立大では地元型が多いこともあって、平均倍率は2.5倍と国立大より若干低いが、全国枠では倍率が高くなる傾向にあることに留意したい。
ニュースフラッシュ
◆文科省が全医学科81校の男女別合格率を調査
東京医科大の入試問題を受けて、文科省は全国81校の医学科の入学者選抜を調べ、その結果を今月4日に公表した。過去6年間の平均で男子の医学科合格率は女子の約1.2倍。毎年、6~7割の大学で男子の合格率が女子を上回っていた。文科省は今後、男女の合格率の差異などについて大学側に説明を求める。
この調査は、東京医科大が一部の受験生の点数を加算したり、女子や3浪以上の男子を一律に不利に扱っていたことが明らかになったことを受けて実施された。2013~2018年度の入学者選抜で、受験者に対する合格者の割合は、男子は11.25%で、女子の9.55%の1.18倍だった。毎年、46~57大学で男子の合格率が女子より高く、全体の合格率で男子が女子を上回る傾向は同じだった。ただし、この調査で一般入試と推薦入試の内訳などは調査されていない。
6年間で女子と比べて男子の合格率が最も高かったのは順天堂大の1.67倍で、次いで昭和大1.54倍、日本大1.49倍、九州大1.43倍と続く。1.3倍台には国公立も多く、渦中の東京医科大は1.29倍。開学3年目の東北医科薬科大は1.54倍。
一方、17大学は6年間の平均で女子の合格率が男子より高く、弘前大は女子の方が男子の1.34倍だった。無論、女子を優遇しているわけではない。
また、年齢別では主に1浪が多い19歳の合格率が最も高く、20歳以上になると合格率が下がる傾向にあった。東京医科大を除く全大学は、いずれの点についても「不当に扱いの差をつけた」という回答は皆無だった。
なお、2017年度学校基本調査で、志願者に対する入学者の割合を全学部学科でみると、女子は入学率が15.87%で、男子の13.15%に対して1.21倍。理学系や工学系の多くの学部でも女子の入学率は男子より高いが、医学系は男子が女子の1.11倍で、今回の調査結果と近い数値だった。
興味深いのは東京大で、合格率は男子25.89%、女子25.2%とほぼ拮抗(1.03倍)している。優れた女子受験生層が集まっていることの表れだろう。京都大は男子36.88%、女子28.98%で1.27倍。女子の合格率が男子を上回った16校のうち、私立大は6校で、残り10校は全て国立大だった。
今回の調査を通じて、東京医科大のような極端な男女差別が全体に広がっているような印象は持ちにくい。従って、今後も女子受験生は安心して医学の道を目ざしてほしい。