AO・推薦入試エクストラ7月25日号
私立大・短大:2017AO入試の出願条件の設定状況
AO入試情報
◆私立大・短大:2017AO入試の出願条件の設定状況
弊社では例年AO入試に関する出願条件を(1)成績基準、(2)取得資格・活動実績の2区分で統計を取り続けている。最近の動向を展望してみよう。
- <成績基準>
- ■私立大
- 2017年度の場合、成績基準を必須条件とするケースが82校(15.6%)で、前年の76校から6校増加して、2011年度の実施要項改訂以降、増加傾向をたどり続けている。ただし、高基準の設定は少ない。複数条件の1つとしているケースは12校で前年と変わらず。成績基準を設けないケースは、前年の83.1%から82.1%へやや減少した。
- ■私立短大
- 成績基準を必須条件としているのは全体のうちわずか21校(前年22校)、複数条件の1つとして設定しているのは4校のみで、両方を合わせても10%弱で、この状況はほとんど変動していない。私立短大最大の重視項目は「入学熱意」といっても過言ではない。
- <取得資格・活動実績>
- ■私立大
- 2017年度の場合、必須条件としているのは126校(20.4%)と多い(前年度は112校‐18.7%)。さらに複数条件の1つとして設定しているケースも99校(16.1%)にのぼり、両方を合せると全体の約36.5%で4割近くを占めるまでになっている。この資格・活動実績重視の設定状況はAO発足以来、着実に鮮明化しており、AO入試の大きな特徴となっている。
- ■私立短大
- 活動実績・取得資格を必須条件としているケースは、わずか20校(7.3%)どまり(前年度は15校‐5.7%)。複数条件の1つとして設定しているケース25校(9.1%)を加えても45校(16.4%)で、4大と比べてかなり差異がある。こうした状況は、AO発足以来ほとんど変化しておらず、このハードルの低さが私立短大でAO入学率が2割余を占める大きな要因といえよう。
◆私立大:2017AO入試の地区別出願条件設定の概要
2017全国版「AO入試年鑑」で成績基準、取得資格・活動実績に関する地区別統計がまとまったのでご紹介する(入試区分・学部等で異なる場合は複数扱いで集計)。
地区 | 必須条件 | 複数条件の1つ | 設けない |
---|---|---|---|
北海道・東北 | 6校(14.0%) | 0 | 37校(86.0%) |
関東 | 24校(12.2%) | 8校(4.1%) | 164校(83.7%) |
中部 | 14校(16.5%) | 0 | 71校(83.5%) |
近畿 | 25校(21.4%) | 3校(2.6%) | 89校(76.0%) |
中国・四国 | 7校(17.1%) | 0 | 34校(82.9%) |
九州 | 6校(13.6%) | 1校(2.3%) | 37校(84.1%) |
上記の一覧表に示す通り、必須条件としての設定率が最も高いのは近畿地区。その他の地区はいずれも1割強で、推薦入試と比べて成績基準のハードルはきわめて低い。
地区 | 必須条件 | 複数条件の1つ | 設けない |
---|---|---|---|
北海道・東北 | 5校(11.6%) | 11校(25.6%) | 27校(62.8%) |
関東 | 53校(22.3%) | 39校(16.4%) | 146校(61.3%) |
中部 | 12校(13.8%) | 8校(9.2%) | 67校(77.0%) |
近畿 | 36校(24.5%) | 23校(15.6%) | 88校(59.9%) |
中国・四国 | 6校(13.3%) | 5校(11.1%) | 34校(75.6%) |
九州 | 14校(25.0%) | 13校(23.2%) | 29校(51.8%) |
必須条件としての設定率が高いのは九州、近畿、関東の3地区。複数条件の1つとして設定率が高いのは、北海道・東北、九州の2地区だろう。また、九州地区は「設けない」ケースが約半分にすぎない点も注目される。
推薦入試情報
◆2017年度公募制推薦入試の実施状況が判明
現在、弊社では9月初旬発行予定の全国版「推薦入学年鑑」の制作に全力を注いでいるが、このほど全ての大学・短大の推薦実施状況が判明したので、速報でご紹介する。
募集校 | 公募実施校 | 指定校のみ | 公募実施率 | 実施せず | |
---|---|---|---|---|---|
国立大 | 82校 | 76校 | 0校 | 92.7% | 6校 |
公立大 | 86校 | 84校 | 0校 | 97.7% | 2校 |
私立大 | 578校 | 554校 | 21校 | 95.8% | 3校 |
公立短大 | 15校 | 15校 | 0校 | 100% | 0校 |
私立短大 | 303校 | 298校 | 4校 | 98.3% | 1校 |
7月上旬現在、募集停止は私立大0校、私立短大7校が判明しており、2017年度の学生募集校は上記のとおりとなっている。
国立大は弘前大がAO入試へ全面的に移行する。今年度に実施しないのは北海道大、弘前大、東北大、東京芸術大、京都工芸繊維大、九州大の6校となっている。
公立大は、福知山公立大、山陽小野田市立山口東京理科大の2校が新たに加わる。推薦入試を実施しないのは、京都市立芸術大と九州歯科大である。
私立大の学生募集校は、2校減少して578校。公募実施校は前年と同じ554校となった。公募の新規導入校は、開智国際大、芝浦工業大の2校。完全指定校制は前年よりさらに2校減少して21校だが、関東地区だけで20校(うち東京都が13校)を占める。公募・指定校制とも実施しないのは、東京慈恵会医科大、日本医科大、立命館アジア太平洋大の3校である。
公立短大は15校全てで実施。私立短大は募集停止が7校で、学生募集校数は303校と前年より8校減。その98.3%に当たる298校で公募制を実施する。完全指定校制は北海道武蔵女子短大、城西短大のほか、立教女学院短大、今治明徳短大が増えて計4校。公募・指定校制とも実施しない短大は東京農業大短大部で、今年度から推薦を廃止する。
◆私立大:2017地区別公募推薦実施校と完全指定校制一覧
弊社の全国版「推薦入学年鑑」で実施した2017年度の実施状況等の調査から、地区別の実施状況および完全指定校制の私立大・短大をレポートしておこう。
実施校数 | |||||
---|---|---|---|---|---|
国立大 | 公立大 | 私立大 | 公立短大 | 私立短大 | |
北海道・東北 | 11校 | 16校 | 57校 | 4校 | 35校 |
関東 | 18校 | 10校 | 190校 | 1校 | 83校 |
中部 | 15校 | 19校 | 88校 | 4校 | 55校 |
近畿 | 12校 | 13校 | 124校 | 1校 | 61校 |
中国・四国 | 10校 | 15校 | 43校 | 3校 | 28校 |
九州 | 10校 | 11校 | 52校 | 2校 | 36校 |
計 | 76校 | 84校 | 554校 | 15校 | 298校 |
私立大の場合、やはり関東地区が群を抜き、次いで近畿・中部地区の大都市圏に集中するが、その他の地区もほぼ全てが公募推薦を実施している。
私立短大の場合、大都市圏で短大数が減少しているのが特徴(4大に吸収など)で、各地区の実施状況は4大ほど差がない点が注目される。
次に完全指定校制で実施するのは、自治医科大、文星芸術大、日本薬科大、秀明大、国学院大、国際基督教大、白百合女子大、成蹊大、成城大、聖心女子大、東京女子大、東京神学大、東京造形大、武蔵大、武蔵野音楽大、明治学院大、立教大、関東学院大、聖マリアンナ医科大、洗足学園音楽大、南山大の21校で、前年よりさらに2校減となった。また、北海道・東北、近畿、中国・四国、九州の4地区に完全指定校制が皆無なのも注目される。
ニュースフラッシュ
◆平成29年4月設置の届出受理状況を公表(28年4月分)
文部科学省はこのほど設置届出を受理した大学の学部等(平成28年4月分)を以下のとおり公表した。
- <公立大学の学部の設置>1校
- ■宮城大
- 事業構想学群=事業プランニング学類60、地域創生学類60、価値創造デザイン学類80、食産業学群=食資源開発学類62、フードマネジメント学類63
- <私立大学の学部の設置>20校
- ■常磐大
- 総合政策学部=経営学科85、法律行政学科75、総合政策学科85(国際学部・コミュニティ振興学部は募集停止)
- ■芝浦工業大
- 建築学部=建築学科240(工学部=建築学科、建築工学科は募集停止)
- ■昭和女子大
- 国際学部=英語コミュニケーション学科199、国際学科100(人間文化学部の同学科は募集停止)
- ■東京電機大
- システムデザイン工学部=情報システム工学科130、デザイン工学科110(情報環境学部は募集停止)
- ■東京農業大
- 生命科学部=バイオサイエンス学科140、分子生命化学科115、分子微生物学科115(応用生物科学部=バイオサイエンス学科は募集停止)
- ■東邦大
- 健康科学部=看護学科60
- ■東洋大
- 国際観光学部=国際観光学科366、国際学部=グローバル・イノベーション学科100、国際地域学科(国際地域専攻昼主210、地域総合専攻夜主80)、情報連携学部=情報連携学科400(文学部=英語コミュニケーション学科、国際地域学部は募集停止)
- ■日本体育大
- スポーツ文化学部=武道教育学科100、スポーツ国際学科100(体育学部=武道学科は募集停止)
- ■明星大
- 心理学部=心理学科120(人文学部=心理学科は募集停止)
- ■北陸大
- 国際コミュニケーション学部=国際コミュニケーション学科80(未来創造学部=国際教養学科は募集停止)
- ■名古屋外国語大
- 世界共生学部=世界共生学科100
- ■名古屋芸術大
- 芸術学部=芸術学科445(音楽学部、美術学部、デザイン学部は募集停止)
- ■南山大
- 国際教養学部=国際教養学科150
- ■人間環境大
- 松山看護学部=看護学科80(人間環境学部=人間環境学科は募集停止)
- ■大阪工業大
- ロボティクス&デザイン工学部=ロボット工学科90、システムデザイン工学科90、空間デザイン学科100(工学部=空間デザイン学科、ロボット工学科は募集停止)
- ■大阪産業大
- スポーツ健康学部=スポーツ健康学科150、国際学部=国際学科100(人間環境学部は募集停止)
- ■兵庫大
- 看護学部=看護学科90(健康科学部=看護学科は募集停止)
- ■岡山理科大
- 経営学部=経営学科(総合情報学部=社会情報学科は募集停止)
- ■九州国際大
- 現代ビジネス学部=地域経済学科250、国際社会学科100(経済学部、国際関係学部は募集停止)
- ■九州産業大
- 生命科学部=生命科学科110、建築都市工学部=建築学科75、住居・インテリア学科65、都市デザイン工学科60、理工学部=情報科学科140、機械工学科130、電気工学科100(情報科学部、工学部は募集停止)
- <短期大学の学科設置>1校
- ■西九州大短大部
- 地域生活支援学科100(食物栄養学科、生活福祉学科は募集停止)
- <大学の学部の学科設置>24校
- 東北学院大
- 工学部=情報基盤工学科110(電子工学科は募集停止、電気情報→電気電子工学科に名称変更)
- ■群馬パース大
- 保健科学部=放射線学科70、臨床工学科50
- ■高崎商科大
- 商学部=会計学科70、経営学科130(商学科は募集停止)
- ■浦和大
- こども学部=学校教育学科30
- ■埼玉学園大
- 人間学部=心理学科100
- ■文教大
- 文学部=外国語学科70
- ■玉川大
- 工学部=情報通信工学科60、農学部=先端食農学科70、生産農学科165、環境農学科70、文学部=国語教育学科60(文学部=人間学科、農学部の既設3学科、工学部=機械情報システム学科は募集停止)
- ■東京電機大
- 工学部=先端機械工学科100、応用化学科80、電子システム工学科90(情報環境学部、工学部=環境化学科は募集停止)
- ■東京農業大
- 国際食糧情報学部=国際食農科学科100、地域環境科学部=地域創成科学科80
- ■東洋大
- 文学部第1部=国際文化コミュニケーション学科100(英語コミュニケーション学科は募集停止)
- ■二松学舎大
- 文学部=都市文化デザイン学科50
- ■武蔵野音楽大
- 音楽学部=音楽総合学科40、演奏学科270(既設7学科は募集停止)
- ■昭和音楽大
- 音楽学部=音楽芸術表現学科175(既設3学科は募集停止)
- ■新潟医療福祉大
- 医療技術学部=救急救命学科55
- ■静岡理工科大
- 理工学部=建築学科50(総合情報→情報学部、人間情報デザイン→情報デザイン学科へ名称変更)
- ■人間環境大
- 人間環境学部=心理学科120、環境科学科80(人間環境学科は募集停止)
- ■京都精華大
- 芸術学部=造形学科240(既設3学科は募集停止)
- ■立命館大
- 情報理工学部=情報理工学科475(情報工学部は募集停止)
- ■大阪芸術大
- 芸術学部=アートサイエンス学科80
- ■大阪産業大
- デザイン工学部=環境理工学科80
- ■神戸松蔭女子学院大
- 人間科学部=都市生活学科100、食物栄養学科60(生活学科は募集停止)
- ■川崎医療福祉大
- 医療福祉学部=子ども医療福祉学科80、医療技術学部=臨床検査学科60、診療放射線技術学科60
- ■徳島文理大
- 保健福祉学部=口腔保健学科40
- ■中村学園大
- 栄養科学部=フード・マネジメント学科100
- [国立大]
- どのようなタイプの推薦であれ、全て専願制で実施する。出身課程については、全課程対象と対象課程を限定する2タイプがあり、どちらも履修条件を設けるケースがあるので要注意。現・浪区分については、現役ないし1浪までが中心になっている。私立大と異なり、ユニーク推薦の導入はごく少なく、取得資格・活動実績が必要なケースも少ないが、教員養成系の保体関係は競技等の実績基準を設けているケースが多い。つまり、全般的には一般推薦が中心で、出願要件のカギは成績基準ということになる。多くがA段階を対象とするが、やや低いケースで4.0以上、ごく一部にB段階の3.5以上で出願できるケースもある。成績基準は、セ試併用型より免除型での設定率が高く、専門課程型ではマルAを要求するケースも少なくない。
- なお、医学部では県内高校を対象とする地元枠がかなり導入されており、その定員枠も比較的大きい。次いで教員養成系や看護系で地元枠の設定が目立つ。近年では学部ごとに「求める学生像」や「特定要件」を詳細に設定するケースも増加しているので注意したい。
- [公立大]
- 国立大と同様、全て専願制で実施される。出身課程については、全般的に全課程対象が多く、一部に専門課程対象がある。大事な点は、地元型か全国型かで、全般的に地元型が主流だが、近年は全国型(枠)も増加しつつあるので、他県(市)の高校でも活用できる余地は十分ある。
- 成績基準については、国立大より若干緩やかで、一般学部では3.6~4.0のゾーンでの設定が目立つ。むろん、医学系や一部の学部では4.3以上の高基準を設定している。
- [私立大]
- 公募推薦の場合、地区ごとにかなり差異があるので、十分注意してほしい。まず専願区分だが、全体をみると東日本は専願制、西日本(中部・近畿・中四国)は併願制主流と大きく異なる。ただ、対象課程は国公立大と異なり、ほぼ出身課程の制限はない。一般・ユニーク推薦を合せて多様な入試区分が設けられており、今日の多様な受験生に対して、柔軟な出願要件が設定されているのが、私立大ならではの大きな特徴だろう。
- 一般推薦における成績基準の設定状況(2016)をみると、基準なしが33.9%(前年34.2%)、2.7~2.9が1.0%、3.0~3.4が37.4%(前年35.3%)、3.5~3.9が24.6%(前年26.3%)、4.0以上が3.1%といったところだが、実施要項の改訂以降「基準なし」は徐々に減少し、3.0~3.4の設定が増加する傾向を示している。
- [公立短大]
- 全て専願制で実施される。公立の4大と比べ、予想外に全国型(枠)の導入率も高い。有資格者・活動実績者や専門課程を対象とする特別推薦の実施も活発だ。成績基準については、3.5~4.0のゾーンが主流で、私立短大より格段にハードルが高い。
- [私立短大]
- 専願区分・対象課程については、ほぼ私立大と同様の傾向だが、ユニーク推薦では自己推薦が群を抜いて多い。地元中心の指定校制に依存する割合が高いのも特徴だろう。公募制の一般推薦では、基準なしが全体の51.2%(前年54.4%)、2.7~2.9が6.5%、3.0~3.4が37.7%(前年34.7%)を占め、3.5以上の高基準設定はわずか4.6%にすぎない。ただ、実施要項の改訂以降は新たに3.0以上を中心に基準を設定するケースが若干増える傾向にあるので留意しておきたい。
【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座
◆推薦入試(4):国公私立大・短大別にみる出願要件の概要
推薦入試(公募制)における出願要件(推薦条件)は、国立・公立・私立ごと独自の特徴や傾向がある。それらを十分ふまえた上で、適切な指導を行うことが大切だ。