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AO・推薦入試エクストラ5月25日号

ゼミ・授業・ワークショップ参加型のエントリーから合格までのポイント

AO入試情報

◆国公私立大:ゼミ・授業・ワークショップ参加型のエントリーから合格までのポイント

AO入試ならではの選考法として、ゼミナナール(演習)や体験授業、体験入学へ参加させ、その受講における態度、理解力、表現力、ノートまとめなどを総合的に評価して、自学の学生として適切かどうかを判定するパターンは、国公私を問わず広く導入されている。美術系では実技制作を主としたワークショップ形式、音楽系ではレッスン形式での実技水準評価が多い。

ポイントとしては、まず比較的にエントリー(申込み)が早い時期に設定されていること。国公立大の場合、エントリーも8月1日以降が一般的だが、私立大ではそれより早いケースも多いので注意してほしい。

そして最も大切なことは、ゼミ、講義、実験、ワークショップ、スクーリングなどの内容は事前に要項等で公表されるので、それぞれに関連する事柄・分野を専門の入門書や資料で十分下調べし、生徒自身の興味・疑問を整理させ、プレゼンテーションのテーマ等もしっかり準備させておくべきだろう。

このゼミ・授業参加型では、受講レポートを作成させるケースも多いので、小論文とは形式・趣旨が異なるレポートの基本的な作成方法も指導しておく必要がある。レポートらしい形式・記述を備えていないと、当然ながら評価は低くなる。また、ゼミ・講義の後、各テーマでディスカッションをさせるケースもかなりある。この際、前述した幅広い下調べ(自主研究)を実行するのとしないのでは、実際の討論の場で自ずと発言に違いが表れてくる。

いずれにしろ、この選考パターンは自主的な学習に積極的な姿勢を持ち、独創的なヒラメキや個性的なセンスを備え、研究志向型の生徒に適していると言えよう。

◆私立大でゼミ・授業参加型は関東・近畿地区が活発

2013年度にAO入試の選考方法でゼミ・講義・スクーリング等を実施した国立大は、弘前大医、埼玉大工、お茶の水女子大、東京海洋大、東京農工大農、山梨大工(普通枠)、信州大理(地質科学)・農(森林科学)、金沢大、福井大工(生物応用化学)、名古屋工大(工学創成プログラム)、京都工芸繊維大、奈良女子大文(人間科学‐教育学・人間学)、和歌山大観光、鳥取大工、島根大総合理工(地球資源環境)、広島大人文・生物生産、山口大全学部、愛媛大教育(スーパーサイエンス)、高知大人文、九州大(21世紀プログラム)など相当数にのぼる。中でも京都工繊大は全学的に実施し、スクーリング型の代表格といえる存在だろう。

公立大では、首都大東京(ゼミナール入試)、大阪府立大(機械系)、鳥取環境大、島根県立大、北九州市立大地域創生、熊本県立大総合管理などが導入している。

一方、私立大では全選考パターンの約1割を占める。2段階型で2次に講義・実験を含むケースを加味するとさらに増加し、全体の5分の1にゼミ・講義等が導入されていることになる。これらの選考パターンでは、複数(3~5人)の教官が立ち会い、それぞれの評価マニュアルに従って、参加者の受講態度、意欲、理解度、発言などを採点する。講義ノートも提出させるのがふつうで、レポート作成もしくは講義理解力試験等を行うケースも多い。

2013年度の地区別実施状況(弊社調査)は下記グラフのとおりで、特に関東・近畿地区の2地区にこの選考パターンが集中している。大学側としてはきわめて労力を要する選考法で、このパターンを廃止するケースも出始めているが、今日ではAO入試における独自の選考方法として定着している。

 

2013年度の地区別実施状況

 

推薦入試情報

◆私立大:地区別公募推薦の特徴と動向の把握が必要

一口に推薦入試といっても、私立大の場合はそれぞれの地区によって特徴があることを知っておく必要がある。それがはっきり出ているのが、専願区分、成績基準の設定、選考方法の3点で、これらの状況によって推薦入試のありようが大きく異なるので注意しなければならない。

(1)専願区分 東日本(北海道・東北、関東)では大部分が専願制なのに対して、西日本では近畿の大部分、中部、中国・四国の過半数、九州の相当数が併願制(專・併の2区分含む)で実施している。言うまでもなく、併願制の方が志願者がふくらむ傾向になる。

(2)成績基準 一般推薦における成績基準で、3.5以上の高基準を設けている大学数(2013年度)をみると、北海道・東北36校、関東92校、中部20校、近畿13校、中四国9校、九州25校で、基準設定に関しては完全に「東高西低型」となっている。特に近畿、次いで中部・中四国では基準撤廃型が主流を占める。

(3)選考方法 芸術・スポーツ系を除く一般学部では、全般的には書類・小論文・面接型が主流を占めるものの、近畿地区では書類・学科試験型(マーク式が主流)がだんぜん多く、次いで中四国・中部での学科試験実施率が目立つ。関東では学科試験実施率は26.8%で、最も低いのは北海道・東北の17.9%となっている。最近の受験生は小論文を敬遠しがちで、軽量型の基礎学力試験の方に受験生が集まる傾向が強い。

以上のような地区ごとの差異は、志願動向にもはっきり表れてくる。専願制・高基準型では少数精鋭戦、併願制・基準撤廃型ではマスウォーの傾向になる。各地区の特徴を十分踏まえて、生徒の指導に万全を期すことが大切だろう。

◆弊社「推薦入学年鑑」で地区別の私立大諸統計を毎年実施

生徒の進路指導に際して、各地区の特徴・動向を十分把握しておくことが大切であるため、弊社「推薦入学年鑑」では毎年、私立大について(1)実施学部数、(2)成績基準の設定状況、(3)現浪比、(4)学科試験実施状況、(5)評価方法(調査書・小論文・面接)、(6)学部系統別志願者数・合格者数などの調査・統計を実施している。

今号では地区別の学部系統別実施状況(2013年度)を紹介すると、次のようになっている(複合領域の学部は複数扱いで集計)。

地区別の学部系統別実施状況(2013年度)
北海道
東北
関東 中部 近畿 中国
四国
九州
人文科学 17学部
(12.9%)
100学部
(17.4%)
38学部
(14.8%)
76学部
(19.0%)
21学部
(15.1%)
21学部
(15.4%)
社会科学 49学部
(37.1%)
190学部
(33.2%)
96学部
(37.5%)
132学部
(33.0%)
37学部
(26.6%)
45学部
(33.1%)
教育(教員養成) 9学部
(6.8%)
56学部
(9.8%)
24学部
(9.4%)
34学部
(8.4%)
21学部
(15.1%)
11学部
(8.1%)
理・工学 11学部
(8.3%)
57学部
(10.%)
19学部
(7.4%)
29学部
(7.2%)
14学部
(10.1%)
17学部
(12.5%)
農・水産・獣医 2学部
(1.5%)
18学部
(3.1%)
2学部
(0.8%)
4学部
(1.0%)
1学部
(0.8%)
1学部
(0.7%)
保健・医療 22学部
(16.7%)
79学部
(13.8%)
37学部
(14.5%)
60学部
(15.0%)
21学部
(15.1%)
22学部
(16.2%)
生活科学(栄養) 11学部
(8.3%)
30学部
(5.2%)
16学部
(6.2%)
25学部
(6.3%)
13学部
(9.3%)
11学部
(8.1%)
芸術 6学部
(4.6%)
25学部
(4.4%)
11学部
(4.3%)
23学部
(5.8%)
6学部
(4.3%)
5学部
(3.7%)
スポーツ(健康) 5学部
(3.8%)
18学部
(3.1%)
13学部
(5.1%)
17学部
(4.2%)
5学部
(3.6%)
3学部
(2.2%)
132学部 573学部 256学部 400学部 139学部 136学部

ニュースフラッシュ

◆経済格差が国公立大進学にも影響/東京大研究グル-プが発表

このほど東京大の研究グループが、昨春高校を卒業した者の保護者を対象に、経済状況と進学状況の調査を行い公表した(保護者1,064人が回答)。

それによると、国公立大進学率は400万円以下の低所得層が7.4%。それに対して、所得階層が上がるにつれて進学率も上昇し、1,050万円以上の高所得層では20.4%となった。私立大の場合は、400万円以下が20.5%、1,050万円以上が42.5%であった。

2006年次時の同種調査では、私立大ではほぼ同じ傾向が出ていたが、国公立大に関しては9.1%と11.9%で、その格差は小さかった。国公立大の年間授業料の平均額は約54万円(2011年度)で、私立大の約86万円よりかなり低い。東京大研究グループは、当時の進学状況について「国公立大は低所得層への高等教育の機会の提供というミッションを果たしていた」と評価する一方、今回の調査結果は「教育機会の格差拡大を示唆している」と結論を結んでいる。

衆知のとおり、2009年以降に雇用情勢や経済状況が悪化したことに伴い、高所得層でも国公立志向が強まり、それが低所得層の進学に影響を及ぼしている。

また、保護者が子どもの成績を「上位」と評価している場合の大学進学率も調査している。2006年は低所得層が67%、高所得層が72.9%だったが、今回はそれぞれ53.3%、76.9%で、低所得層での落ち込みが目立つ。自分の子どもは成績がいい、と考えていても、進学させるための経済的な余裕がなくなっていきている可能性を示唆するデータと言えよう。

ちなみに、昭和38年当時、おぼろげな記憶だが国立大の学費は入学金1千円、授業料年額12,000円で、奨学金月額8千円(うち3分の2は返還免除)でまかなえた。経済大国と称する日本が、教育の経済負担を軽減できないわけはないが、「私立大との学費格差を縮小する」という名目で、国立大の納入学費は次第に上昇し、今日のように高額なものに変化している。

【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座

◆推薦入試(2):国公私立大・短大別実施状況、入学者比率の推移

推薦入試はほぼ半世紀の歴史を持つが、国立大では共通一次試験の導入を境に増え始め、1998年度にはピークの86校に達する。その後、統廃合などで減少し、2013年度現在76校が実施する。公立大では1989年度まで20校に満たない状況だったが、公立短大の4大化が進み始めたころから急速に増加し始め、2013年度の実施校数は79校と国立大を上回る状況になっている。

一方、私立大は戦後の新設ラッシュと共に増え続け、1988年度に300校台、1996年度に400校台、2003年度に500校台に乗り、2013年度には573校(公募・指定校制合計)に達している。

弊社調査による公募制の実施状況(2012年度)は、次のとおりとなっている。

公募制の実施状況(2012年度)
設置者 募集校数 公募実施校数 公募実施率
国立大 82校 76校 92.7%
公立大 81校 79校 97.5%
私立大 576校 544校 94.4%
公立短大 17校 17校 100%
私立短大 324校 319校 98.5%

公募推薦の実施率は、国公私を問わずきわめて高く、今日では大学入試の主要な入試区分となっている。

そして、推薦入試による入学者の状況(2012年度)をみると、次のようになっている。

推薦入試による入学者の状況(2012年度)
設置者 全入学者数 推薦入学者数 推薦入学者比率
国立大 100,019人 12,428人 12.4%
公立大 29,750人 7,153人 24.0%
私立大 465,589人 187,361人 40.3%
公立短大 3,425人 1,464人 42.7%
私立短大 60,186人 37,380人 62.1%

推薦定員の規制の変動に伴って、推薦入学者比率は変動したが、今日では大学が5割以内と定められているだけで、短大についての制限は撤廃されている。国立大における入学者比率は全体では小さいが、推薦を実施しない旧帝大・有力総合大を除いてみると、その比率は30%程度になるのは確実で、推薦実施校の場合、その推薦入試は受験機会の複線化の観点からも貴重な受験ルートと言えよう。公立大では年ごとに推薦入学者比率が上昇しており、25%を突破するのは時間の問題とみられる。

私立大・短大では、現役生がAO入試へ分散する傾向が続いていたが、この1~2年、再び推薦シフトが強まりつつあるので十分注意する必要がある。

そして、2016年度からは東大・京大が推薦戦線に参入する。それが有力国立大や超難関私立大にかなりインパクトをもたらすのは確実だろう。

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