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AO・推薦入試エクストラ10月25日号

私立大:AO合格から入学までの学習喚起指導の留意事項

AO入試情報

◆私立大:AO合格から入学までの学習喚起指導の留意事項

私立大AO入試の出願は8月1日以降と定められ、出願開始は8月~9月の2か月間に集中している。当然、合格発表・入学手続も早く、合格後、高校卒業と大学入学まで多くの生徒が半年程度の期間を経ることになる。高校3年間の生活の中で、AO合格後の学習と生活に生徒がどう向き合うかは、高校教育の立場からも重要な課題であろう。

大学入学者選抜実施要項には「入学までの学習喚起」を講ずることが義務づけられているが、その中身や質・量が具体的に定められているわけではなく、大学まかせにするのも心もとない点がある。長く進路指導に携わり、生徒を最もよく知っているのは高校側の担任や進路指導スタッフであり、大学側と連携して合格者の大学入学準備と人間的な成長をフォローすることがきわめて大切だろう。その主要ポイントを整理しておこう。

(1)まず大学側の入学準備教育プログラムを確認
合格者について個々に当該大学から通知してきた入学準備教育プログラムの内容を確認してほしい。入学までの期間とプログラムの質・量を点検する必要がある。不十分と考えられる場合は、生徒と十分話し合って、プラスαのプログラムを練る必要がある。
(2)期間中の学習・行動計画表を作成させる
ふだんの高校生活にまじめに取り組むのは無論だが、AO合格者は一般入試受験組と違って時間的なゆとりがあり、気がゆるみがちになる。生徒1人ひとりに入学までの高校生活・行動、自由研究、大学での生活などに関する計画表を作らせ、進路指導が適宜コミュニケーションを取りながらフォローすることが望ましい。
(3)授業をおろそかにする生徒の指導を徹底
高校現場では、早期合格者の中に1人でもクラスの雰囲気をこわすような生徒が出現すると、周囲に及ぼす影響が大きい。生徒が極端に授業をおろそかにするような態度が目につき始めたら要注意で、十分な話し合いを持ち、フォローを徹底する必要がある。
(4)大学側に生徒の取り組みぶりを最終確認
1~2月ごろになったら、生徒がプログラムにどう取り組んでいるか、大学側の準備教育スタッフに直接確認してみてほしい。電話でも文書でも大学側からは必ず回答があるはずで、不十分な事項やさらに深めるべき事項の確認に役立つだろう。

◆私立大:2014AO選考パターンの地区別統計

弊社では私立大AO入試について多角的な独自統計を毎年実施しているが、ここでは2014年度の選考パターンについてまとめておこう。

<パターン> 北海道
東北
関東 中部 近畿 中国
四国
九州 全国
事前対話型 9校 19校 10校 9校 5校 1校 53校
授業参加型 5校 30校 14校 29校 12校 2校 92校
書類・面接型 15校 74校 30校 45校 14校 26校 204校
書・面・学科試験型 2校 29校 7校 6校 4校 2校 50校
書・面・小論文型 6校 36校 13校 18校 9校 9校 91校
2段階型 10校 46校 21校 32校 6校 8校 123校
書類・実技型 3校 19校 4校 8校 5校 4校 43校
50校 253校 99校 147校 55校 52校 656校

全般的には書類・面接型が最も多く、この点は推薦入試と共通している。次いで独自の2段階型、授業参加型が多く、AO入試の大きな特徴となっている。私立短大で主流を占める事前対話型は、私立大では少なく8%程度にすぎない。書類・面接・学科試験型は保健・医療系をはじめ、教育系、管理栄養士関係、理工系の一部で目立つ。小論文を課すのは、比較的に上位校グループに多い。前年度と比較すると、事前対話型と書類・面接・小論文型の増加がやや目立っている。

難関・上位私立大群の多くは、2段階型選抜が中心になる。1次の書類審査の突破率は、大学によっては30~50%ときびしいので、提出書類の作成には万全を期す必要がある。2次試験は、面接、面接+小論文、面接+講義理解力試験、など様々な選考方法に分かれるので要注意だ。

推薦入試情報

◆私立大における併願・複数受験の戦略と注意点

公募制推薦入試は、第1志望校に限って受験するのが鉄則だが、生徒によっては合格校を確保するために、第2・第3志望を受験せざる得ないケースも生じる。ここでは、一般推薦(学校長推薦)を中心に併願・複数受験のポイントを整理しておこう。

(1)志望校の難易度を把握する
一般入試のように模試等の合格難易度はないが、推薦入試の難易度も、過去の合格実績、合格者の評定平均値の平均、合格最低点などからほぼ難易度の判断はできる。第2・3志望の設定は、第1志望より難易度の低い大学を選択したほうが安全であることは言うまでもない。
(2)同系列の試験方法で受験できる大学を選択
第1志望が書類・面接・小論文であれば、これと同系列の入試方法を取る併願校もしくは受験負担の軽い併願校を選択するのがベター。第1志望が書類・面接・小論文なのに、第2志望以下は学科試験といった併願には大きなリスクが伴う。
(3)専願制を破らないで済む併願・複数受験を徹底
志望校が全て併願制(特に西日本)であれば、何校受験しても問題は生じないが、専願制と併願制の複数受験なら、専願制優先の戦略で臨む必要がある。
(4)専願リレー受験の場合は日程に注意
専願制間の複数受験も必ずしも不可能ではない。この場合は、第1志望の合格発表後に試験を実施する大学を第2志望に設定し、あらかじめ出願しておき、第1志望合格なら第2志望校は受験を欠席するという方法が採れる。
(5)納付金を無駄にしないで済む併願を実行
推薦入試の場合、専願・併願を問わず、一括納入のケースが多い。併願制の場合は、一定期間までに入学を辞退すれば、入学金以外は返還するが、複数受験では納付金をできるだけ無駄にせずに済む日程上の戦略に特に留意する必要がある。

◆国公立大における併願・複数受験の留意点

国公立大の推薦入試に関しては、併願・複数受験にきびしい制約が伴い、原則として1校1学部しか受験できないが、複数受験が全く無理かと言えば、必ずしもそうではない。その具体的な手順、留意点を紹介しておこう。

(1)第1志望はセ試免除型、第2志望はセ試併用型で受験
国公立大の推薦入試はセ試免除型が11月出願、セ試併用型が12月~1月の出願となっているケースが多いので、第1志望をセ試免除型、その合格発表後の第2志望をセ試併用型にすれば複数受験が可能になる。ただし、第2志望の当該校に推薦決定者がいない場合に限られる。
(2)セ試免除型間の併願も可能
国公立大の推薦入試は全て専願制である。入試日程が短期間に集中しているが、弊社の年鑑で検討すれば、第1志望の合否発表後に試験を実施する第2志望校を探すことは可能である。ただし、高校推薦枠に空きがある場合に限られる。
(3)セ試併用型間の併願は不可能
セ試を課す大学の複数受験は、推薦入試用のセ試成績請求票が1枚しかないので、自動的に不可能ということになる。
(4)国公立大と私立大の併願
国公立大と私立大の推薦入試を併願する場合、第1志望が国公立大なら、第2志望の私立大は日程からみて、併願制校を選択せざるをえない。ただ、国公立大合格なら、私立大に納付した入学金は戻ってこないと覚悟しておく必要がある。私立大が第1志望なら、国公立大との併願はしてはならない。

その他、大学によっては推薦募集要項に「本学以外への出願は認めない」などの注意書きがある場合もあるので十分注意してほしい。

ニュースフラッシュ

◆教育再生実行会議の大学入試改革素案の概要が判明

かねてから大学入試の改革について検討していた政府の教育再生実行会議の素案が煮つまってきたようだ。1つは大学入試センター試験の改革、2つめは基礎学力テストの創設である。いずれも5~6年後からの実施を想定しているが、重要な改正と考えられるので、それぞれの概要をレポートしておこう。

(1)大学入試センター試験の衣替え

本年度の大学入試センター試験は、国公私立あわせて840校の大学・短大が利用し、約54万人が受験した。改革案では、成績を1点刻みではなく、何段階かに分けたランク表示を採用するとしている。わずかな点差で合否が分かれる現在の入試のあり方を見直し、受験生の意欲や潜在能力に軸足を置いた選抜に踏み出すべきだという理念に立っている。実行会議で11月にも提言をまとめた後、中教審で具体的な制度設計などを議論する。

素案などによると、センター試験から衣替えする新テストは、受験生の成績を5~10段階にランク分けして志望大学に通知する。試験実施は年1回、マークシート方式で、科目数は現行より減らして6教科程度とする。思考力や活用力をみるため、将来的には複数の教科を横断する総合的な科目も検討する。英語については、TOEFLなど外部の試験結果での代替も検討するとしている。

そして、大学側は新テストで学力をみた後は、面接など人物本位の選抜を行うとするが、受験生が多数にのぼる大学では丁寧な面接などを実施するのは事実上困難だ。選抜する側の主観が入って、入試の公正さを欠く危険もあるとの意見もあり、大学側には慎重論も根強い。

段階評価となると、例えば次のようなランク分けになると考えられる。
<段階> 5 6 7 8 9 10
<CT成績> 40%以下 41~50% 51~60% 61~70% 71~80% 81%以上

仮にこの段階評価を大学側が入手したとして、どのように役立つだろうか。教科・科目別の成績明示も必須条件のはずである。さらに、2~3教科を利用している私立大への配慮はどうなるのか。実現までには相当の曲折が予想される。

(2)基礎学力テストの創設

上記とは別途に、基礎学力を問う試験は、国語、数学、英語の3教科で、高校2年の夏の実施を想定している。1年後に高3で再受験することも認める方向だ。高校段階までの学力達成を促すためのもので、一般入試の資料とはしないが、AO・推薦入試で受験生のレベルを判定する資料としては、活用できるようにする。

高校の教育課程が多様化している今日、果たしてこの3教科でよいのか、高2夏ではなく高3の5月実施ならば、広く私立大のAO・推薦入試に活用できる道が開けるはずだが、いずれにしても高校現場も含めた多様な声が集約されるよう祈りたい。

【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座

◆推薦入試(7):推薦入試に適した生徒の個性・資質のチェックポイント

公募制推薦入試の出願を目前に控える時機となったが、これまで進路指導の先生方は生徒に推薦入試を受験させるべきか否か、判断に迷われるような経験をされたことも多々あるのではないだろうか。現役生はとかく将来を十分考えることなく早期合格を望みがちで、保護者にもその傾向は根強い。

しかし、公募推薦を実施しない上位大学への志望意志が強く、その学習姿勢や学力伸張に十分期待できる生徒なら、最後まで一般入試への挑戦を支援すべきだろう。ただ、国公私立大とも公募推薦を実施しない大学は、全体からみれば数少ない。推薦入試によっても国立・公立そして私立上位グループをも目標にできるという点は十分認識しておいてほしい。

問題は、どのような生徒が推薦入試に適しているかである。ここでは、国公立大と私立大に分けて、その主要ポイントを整理しておこう。

<国公立大>
(1)A段階もしくは準A段階の成績が望ましい
国公立大は全般に成績基準が高いので、まずはそれをクリアできる成績層であることが前提条件になる。国公立大への進学実績が一定程度以上ある高校なら基準通りでよいが、そうでない高校の場合は最上位クラスの生徒を推薦すべきであろう。
(2)向学心旺盛な生徒であること
前記の成績基準に加え、学習活動に個性があり、探究心と向学心の旺盛な生徒がベストである。面接や小論文等において、個性的な資質がアピールできる生徒ほど推薦入試に向いている。
(3)志望進路が明確な生徒であること
志望校の内容をよく研究した上で、第1志望校に定めている生徒であり、学生生活での希望や目標、大学卒業後の進路などを明確に定めている生徒であることが望ましい。
(4)セ試併用型では一定の得点力が必要
推薦入試でセ試を導入しているタイプでは、当該校の合格者層の得点水準を調べた上で、慎重に対処しなければならない。当然ながら、必要な得点水準は大学・学部によって異なり、それをクリアできる可能性を秘めた生徒にしか推薦入試は勧められない。
<私立大>

私立大はきわめて数が多い上、その推薦入試は一般推薦からユニーク推薦まで多彩である。大切なポイントを絞り込んでみると次のようになる。

(1)入学後に悔いの生じない志望校であるか否かを確認
早期合格に気をとられ、大学ならどこでもよいと考える受験生ほど、実際には大学入学後の学生生活にマッチせず、中退する者が多い。難易度を別とすれば、推薦入試で合格校を確保するのは決して難しくはないが、要は入学して悔いの生じない大学であるかどうか、事前に十分研究した上で志望校として生徒が決定しているかどうかを確認すべきだろう。原則として、推薦入試は第1志望に限って活用すべき入試であることを周知徹底しておく必要があり、志望校として明確に決定している生徒の決意の強さが大切になる。
(2)一般推薦では学習状況や出席状況が良好であること
一般推薦では、まず学習成績や出席状況が優良以上であることが望ましい。面接や小論文、基礎学力試験等への対応力をチェックし、生徒それぞれに適した選考法を取っている大学を選択しているかどうかを確認することが大切になる。その上で、大学生活や将来に前向きに取り組める資質を備えていればなおよい。
(3)ユニーク推薦
私立大のユニーク推薦には、スポーツ、有資格者、課外活動、自己推薦など多様な区分がある。学習成績や出席状況が極端に悪くない限り、各区分の実績を優先して選考が行われる。そして、それらの経験や実績を大学生活に積極的に生かし、人間形成に努力しようとする意志の強さを確認して送り出すよう努めることが大切だろう。

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