AO・推薦入試エクストラ4月10日号
国公立大:2017AO入試の新規・変更点情報
AO入試情報
国公立大:2017AO入試の新規・変更点情報
前年度に各大学の選抜要項で予告された2017AO入試の新規実施や変更点についてご紹介する。今後の進路指導に際して留意してほしい。
<国立大>
- ■岩手大
- 理工学部でAO入試を新規実施(セ試免除型1学科、併用型3学科)。
- ■千葉大
- 2016新設の国際教養学部でAO入試を新規実施
- ■お茶の水女子大
- 文教育・理・生活科学の各学部で従来のAO入試を「新フンボルト入試」に変更。文系は「図書館入試」、理系は「実験室入試」として実施するので要注意。
- ■信州大
- 農学部の農学生命科学科(森林・環境共生学)でセ試免除AOを廃止。
- ■福井大
- 教育学部、工学部(機械・システム工)でセ試免除AOを廃止。
- ■京都大
- 農学部で1学科のみだった特色入試(学力型AO)を全学科に拡大
- ■大阪大
- 文・人間科学・外国語・法・経済・理の6学部でセ試を課す「世界適塾AO入試」を新規実施。出願要件中の成績基準は次のとおり。文=なし、人間科学=4.3以上、外国語=4.3以上または英検準1級など、法=4.3以上またはTOEFL‐iBT79点以上など、経済=4.3以上
- ■山口大
- 国際総合科学部でセ試免除AOを新規実施。
- ■香川大
- 医学部の看護学科でセ試免除AO「ナーシング・プロフェッショナル育成入試」を新規実施。
- ■熊本大
- 文・法・理・工の4学部でAO「グローバルリーダーコース入試」を新規実施。
◆公立大:2017AO入試の新規・変更点情報
公立大に関する情報は以下のとおり。
- ■宮城大
- 看護・事業構想・食産業の全学部でAO入試を新規実施。
- ■兵庫県立大
- 理学部でセ試併用型のAOを廃止。
- ■山口東京理科大
- 今年度から公立大へ移行。すでにAO・推薦とも志願増で要注意だ。
以上の結果、公立大の2017年度AO実施校は2校増加することになり、全体の実施率も若干上昇する見込みだ。
推薦入試情報
◆国公立大:2017推薦入試の新規・変更点情報
前年度に各大学の選抜要項で予告された2017推薦入試の新規実施や変更点についてご紹介する。今後の生徒指導に際して十分留意してほしい。
<国立大>
- ■筑波大
- 医学部医学科のセ試免除推薦で、英語外部検定試験(4技能)の成績が利用可能になる。
- ■埼玉大
- 経済学部(夜)でセ試免除推薦を廃止。
- ■千葉大
- 園芸学部(園芸・食料資源経済)セ試免除推薦を廃止。
- ■信州大
- 工学部の物質化学科のセ試併用型推薦で、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)枠を廃止。
- ■富山大
- 人間発達科学部(発達教育‐学校教育)でセ試併用型推薦を廃止。
- ■福井大
- 教育学部でセ試免除推薦を廃止。
- ■名古屋大
- 教育学部で「セ試免除→課す」に変更。農学部のセ試併用型推薦で選考法に面接を追加。
- ■大阪大
- 医(医・保健)・歯・薬・工・基礎工の5学部で、セ試を課す「世界適塾推薦入試」を新規実施。出願要件中の成績基準は以下のとおり。医=4.3以上(数学・理科4.5以上)かつTOEFL‐iBT80点以上など、歯=4.3以上かつ英検準1級以上など、薬=なし、工=国内の科学関係のコンテスト出場など、基礎工=なし。
- ■山口大
- 教育学部(学校教育‐小学校総合)でセ試を課す試験を新規実施。
- ■香川大
- 医学部看護学科でセ試免除推薦を廃止。
- ■愛媛大
- 工学部の電気電子工学科でセ試を課す推薦を新規実施。
- ■佐賀大
- 理工学部の物理科学科でセ試を課す推薦を新規実施。
◆公立大:2017推薦入試の新規・変更点情報
公立大に関する情報は以下のとおり。
- ■宮城大
- 看護・事業構想・食産業の各学部で推薦を「学群一括募集」(2016年は学科募集)に移行し、選考法を「セ試免除→課す」に変更するので要注意。
- ■金沢美術工芸大
- 美術工芸学部の工芸学科でセ試免除推薦を新規実施。
- ■山口東京理科大
- 今年度から公立大へ移行。すでに2016年度から推薦入試で大幅志願増となっているので要注意。
- ■宮崎公立大
- 人文学部でセ試を課す推薦を新規実施。管内枠(地域枠)のほか全国枠も新設する。
ニュースフラッシュ
◆2017年度国公立大等の新設・改組および一般入試等の変更点情報
前年度の選抜要項における予告から、国公立大の学部等の新設・改組や一般入試に関する変更点などについてご紹介する。なお、新設・改組等の名称は全て仮称である。
<国立大の学部等の新設・改組>
- ■茨城大
- 教育学部で情報文化・人間環境教育の2過程を募集停止。
- ■東京海洋大
- 海洋資源環境学部を設置構想中(海洋環境科学・海洋資源エネルギーの2学科構成)。
- ■横浜国立大
- (1)都市科学部を新設予定、(2)教育人間科学部を教育学部に改組し、学校教育課程に特化。人間文化課程は新設学部に移行予定、(3)理工学部を4→3学科に改組し、学科名称を変更、(4)経済学部を2→1学科に統合、(5)経営学部を4→1学科に統合し、夜間主コースを募集停止。
- ■新潟大
- (1)教育学部で学習社会系ネットワーク・生活科学・健康スポーツ科学・芸術環境創造の4課程を募集停止、(2)学部横断型の教育プログラム「創生学舎」を新設。
- ■京都大
- 医学部の人間健康科学科で現行の4専攻を3コース(総合医療科学・看護科学・リハビリテーション科学)に再編し、定員減(143→100人)の予定。
- ■神戸大
- 国際文化・発達科学の2学部を再編・統合し、国際人間科学部を新設。
- ■熊本大
- (1)教育学部で地域共生社会・生涯スポーツ福祉の2課程を募集停止、(2)文・法・理・工の各学部に「グローバルリーダーコース」を新設。
- ■鹿児島大
- 教育学部で生涯教育総合課程を募集停止。
- ■琉球大
- 工学部を4→1学科(7コース)に統合し、夜間主コースを廃止。
◆公立大:2017年度学部等の新設・改組および一般入試等の変更点情報
公立大に関する情報は以下のとおり。
<学部等の新設・改組>
- ■宮城大
- 学部・学科を「学群・学類」に改編。看護学部→看護学群(看護学類)、事業構想学部(2学科)→事業構想学群(事業プランニング・地域創生・価値創造デザインの3学類)、食産業学部(3学科)→食産業学群(食資源開発・フードマネジメントの2学類)に改組。
- ■富山県立大
- 工学部に医療品工学科を新設。
<一般入試の日程変更>
2017年度はなし(ただし山口東京理科大学の日程は要注意)
<募集人員の大幅変更>
- ■宮城大
- 看護学群=前期40人→48人、推薦36人→24人、AO8人(新規)/事業構想学群=前期75人→100人、後期40人→20人、推薦70人→40人、AO24人(新規)/食産業学群=前期59人→62人、後期24人→12人、推薦36人→28人、AO16人(新規)
- ■福島県立医科大
- 医=前期一般枠47人→42人、前期地域枠20人→25人
- ■兵庫県立大
- 経営=前期152人→130人、後期25人→50人、推薦53人→50人
- ■宮崎公立大
- 人文=前期100人→90人、後期50人→40人、推薦50人→70人
<一般入試の日程変更>
2017年度は約10校ほどで出題教科・科目の変更があるので十分留意してほしい。
【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座
AO入試(1):AO入試制度の沿革・概要・現状
第2次大戦後の昭和24年、新制大学制度が発足して以来、わが国の社会は急速に発展を遂げ、大学進学率も上昇の一途を辿り続けてきた。1990年代に入ると、大学を中心とする高等教育はユニバーサル化の様相を強めてきた。そうした社会現象と連動して、大学入学者選抜の多様化を推進するため、1997年、中央教育審議会がAO入試の導入と拡大を提言したのを受けて、文科省は正式に入試制度として実施要項に明記することとなった。
翌1998年度にまず同志社大が導入し、1999年度から桜美林大・立命館大など、2000年度から国立・私立大が続々と導入し始めて急速に拡大し、2016年度の実施状況(弊社調査)は次のとおりとなっている。
- (1)国立大=82校中47校(57.3%)
- (2)公立大=84校中23校(27.4%)
- (3)私立大=580校中468校(80.7%)
- (4)公立短大=15校中5校(33.3%)
- (5)私立短大=311校中262校(84.2%)
公立大・公立短大での実施率が低いのは、入試スタッフに余裕がないことなどが主な要因とみられるが、AO入試の重要性そのものに対する認識もいまだに十分ではないようだ。国立大では後期日程の廃止と連動してAO入試の導入がやや進んだが、まだ実施学部・学科数が推薦入試と比べると格段に少なく、受入定員も小さい。ただ、2016年度から京都大が、2017年度から大阪大が導入することによって、促進の気運は多少出てくるかもしれない。それに対して、私立大・短大ではこの10年余で急速に拡大し、その多くでAO・推薦・一般の3段階型日程が定着しつつある。
中央教育審議会は、当初、AO入試の基本として次の5点を挙げている。
- (1)受験生が自らの意志で出願できる公募型の入試であること。
- (2)求める学生像や、受験生に求める能力・適性等を明確にし、それに応じた選抜法を工夫・開発すること。
- (3)受験生の能力、適性、意欲、関心等を多面的、総合的に評価すること。
- (4)高校側との相互コミュニケーションを重視するものであること。
- (5)専門的な(入試)スタッフの充実等、十分な態勢を整備すること。
これらのガイドラインに沿って、高校教育と大学教育のスムーズな教育的接続を主眼として、AO入試は次第に成熟化への道を辿ってきた。
その反面、入試日程に一定の歯止めがなかったことから、5~6月からスタートするAO入試も多く、「青田買い」「学力不問入試」などの批判も絶えなかった。折しも、学士力の向上が高等教育の重要な課題として議論され始め、文科省は「大学入学者選抜実施要項」を2010年度に改訂し、2011年度から全大学に義務づけ、AO入試は新しい段階へ移ることになった。
その重要な変更点は、次の4点である。
- (1)大学入学者選抜の基本方針では、「学力の要素を適切に把握」するよう転換を図った。
- (2)入学者受入方針の明確化と、高校で履修すべき科目や取得が望ましい資格等をできる限り明示するよう求めた。
- (3)AO入試で初めて「8月1日以降」と願書受付始期が設定された。
- (4)AO入試における学力把握措置として、(ア)各大学が実施する検査(筆記、実技、面接等)、(イ)大学入試センター試験の成績、(ウ)資格・検定試験などの成績等、(エ)高等学校の教科の評定平均値、のいずれかを出願要件や合否判定に用いることとし、(ア)~(ウ)を行う場合には(エ)を積極的に活用することとした。また、合格後から入学までの「学習喚起」(入学前教育)についても、AO入試の分野が最も活発に実施されている。
改訂7年目となる2017年度入試では、上記の方針がさらに多くの大学へ浸透するのは確実で、AO入試の指導に際して十分留意してほしい。