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総合型・推薦型選抜エクストラ10月25日号

私立大における公募制の併願・複数受験の戦略と注意点

総合型選抜情報

◆国公立大の共テ併用型はラスト3か月の基礎学力強化がカギ

文科省の令和2年度大学入学者選抜の概要によると、AO入試でセンター試験(セ試)を課したのは、国立大が38校111学部、公立大が11校14学部となっている。国立大では実施学部の50%、つまり5割がセ試併用型で実施する。

言うまでもなく、共通テストの用い方は次の3パターンに分かれる。

  • (1)最終合否で共通テストの一定得点以上を合格対象とする
  • (2)書類・面接・小論文等との総合点で合否を決定
  • (3)共通テストで一定得点以上に2次選抜を実施

国立大では(1)(3)の用い方も相当数にのぼるので、共テ併用型では共通テスト得点力が志望校の合格水準に達するかどうかが出願の分岐点になる。一般的に医学系では80~85%以上と基準が高いが、薬学系は70~75%程度(一部に80%)、その他では平均レベルの60~65%前後の設定が多いが、できるだけ高得点を取るのが望ましいことは無論である。特に「書類+共テ型」のケースは、共通テスト得点が合否の決め手になる。

そこで、面接・小論文対策と併行して、ラスト3か月は共通テスト対策にベストを尽くす必要があることを生徒には十分周知徹底し、助言とフォローに万全を期したい。10月を迎えたこの時期になると、実力が伸び始める生徒も多い反面、長期の受験学習と思うように学習成果があがらないために心が折れかけている生徒も決して少なくないはずである。

生徒の学力と志望校の合格水準をよく検討して、個別にラスト3か月の取り組みを話し合い、生徒の奮起を促してほしい。総合型選抜を志望する生徒には、必ずそれぞれの夢がある。それを原動力として、基礎学力を効率的・集中的に身につける努力を継続できれば、総合型選抜で共通テスト基準点をクリアすることは決して難しくはない。ひいては、それが一般選抜へのベスト対策ともなる。進路指導部と生徒の皆様の今後のご健闘をお祈り申し上げている。

◆2021年総合型選抜で共通テストを課す主な国公立大と基準点一覧

今年度の総合型選抜で共通テストを課す大学・学部の一覧をご紹介する。詳細は弊社の「総合型選抜年鑑」及びWebサイトを参照してほしい(カッコ内は基準点がある場合の数値を示す)。


<国立大>

■旭川医科大
医=医(北海道特別選抜=75%以上/900点、国際医療人特別選抜=1,020点以上/1,200点)
■北海道大
理、歯、医=医学系(765/900点)、保健学系、応用理工系(520/800点)、環境社会工(225/300点)、水産
■弘前大
教育=学校教育-小学校・特別支援教育・養護教諭、医=医、保健、農学生命科学
■岩手大
先端理工学特別プログラム(1次+共通テストが560点以上/840点)
■福島大
人文社会=経済経営(2科目が60点以上)
■茨城大
理=化学・生物科学・地球環境科学・学際理学
■筑波大
医=医(研究型人材入試)
■東京工大
工=工学院、情報工学院、情報理工学院、生命理工学院、建築・社会理工学院
■東京農工大
農=環境資源科学(420/600点)
■横浜国大
教育=学校教育、経済、経営、理工=機械・材料・海洋系(海洋空間のシステムデザインEP、材料工学EP)、都市科学=都市基盤・環境リスク共生
■山梨大
工=全学科、生命環境=全学科
■富山大
人間発達科学=人間環境システム(325/500点)、経済昼(300/600点)、理=物理(260/500点)、生物(450/800点)
■金沢大
医薬保健=薬(750/1,000点)、融合、人間社会、理工(生命理工=440/800点、物質化学・数物科学・機械工学・電子情報通信=585/900点)
■福井大
工=機械・システム工、電気電子情報工、建築・都市環境工、応用物理、物質・生命化学
■三重大
工=情報工
■滋賀大
経済昼(課題図書型)=全学科(630/900点)、データサイエンス=データサイエンス(550/900点)
■京都大
総合人間(85%/800点)、文(760/900点)、教育(80%/900点)、経済(80%/900点)、理(70%/900点)、医=人間健康科学(75%/950点)、薬(80%/900点)、農=資源生物科学(720/900点)、応用生命科学(630/900点)、食料・環境経済(720/900点)、森林科学(720/900点)、食品生物科学(600/900点)、地域環境工(640/800点)
■大阪大
文(75%以上)、人間科学(80%以上)、外国語(総点80%・外国語85%以上、かつ2次含む総点が60%以上)、法・経済(80%以上)、理=研究奨励型(化学・生物科学)、挑戦型(数学・物理)
■神戸大
国際人間科学=発達コミュニティ・環境共生、理=生物・惑星、医=医
■奈良教育大
教育=教育(音楽・保体・家庭・技術・書道=275/500点、その他=330/600点)
■広島大(II型)
文(390/600点)、教育=初等教育(600/900点)、特別支援教育・自然系・社会系(585/900点)、教育学系(600/900点)、心理学系(600/900点)、法昼(360/600点)、医=医(720/900点)、保健(600/900点、看護専門型560/900点)、薬=薬(700/900点)、歯=歯(650/900点)、口腔健康(500/800点)、工=第一類(420/600点)、第二類・第三類・第四類(420/600点)、生物生産(540/900点)、情報科学(630/900点)
■徳島大
医=医(80%/900点)
■愛媛大
法文=人文社会、教育=学校教育・特別支援教育、社会共創(産業マネジメント)、医=医、農
■九州工大
工・情報工
■佐賀大
理工、農
■長崎大
教育=学校(小学校教育)、経済=総合経済(昼)
■宮崎大
教育=学校教育
■鹿児島大(自己推薦型選抜)
法文=人文、理、医(保健‐看護)、歯(70%/900点)、工=建築(70%/600点)、農、水産(60%/1,100点)、共同獣医(60%/1,000点)
■琉球大

<公立大>

■青森公立大
経営経済=全学科(入学前教育の一環)
■山形保健医療大
保健医療=看護
■前橋工科大
工=綜合デザイン工
■東京都立大
人文社会=人間社会・人文、システムデザイン=情報科学
■横浜市立大
データサイエンス=データサイエンス
■都留文科大
教養(3期)=学校教育‐自然環境科学
■大阪市立大
医=医
■大阪府立大
工=機械系(海洋システム工学)
■兵庫県立大
環境人間=環境人間
■九州歯科大
歯=歯(590/900点)、口腔保健(420/800点)

学校推薦型選抜情報

◆私立大における公募制の併願・複数受験の戦略と注意点

言うまでもなく公募制推薦入試は、第1志望校に限って受験するのが鉄則だが、生徒によっては合格校を確保するために、第2・第3志望を受験せざる得ないケースも生じる。ここでは、一般推薦(学校長推薦)を中心に併願・複数受験のポイントを整理しておこう。

(1)志望校の難易度を把握する
一般選抜のように模試等の合格難易度はないが、学校推薦型選抜の難易度も、過去の合格実績、合格者の評定平均値の平均、合格最低点などからほぼ難易度の判断はできる。合格者の評定平均値等を公表していない大学でも、進路指導部からの問合せにはある程度応じてくれるケースもある。いずれにしろ、第2・3志望の設定は、第1志望より難易度の低い大学を選択したほうが安全であることは言うまでもない。
(2)同系列の試験方法で受験できる大学を選択
第1志望が書類・面接・小論文であれば、これと同系列の入試方法を取る併願校もしくは受験負担の軽い併願校を選択するのがベター。第1志望が書類・面接なのに、第2志望以下は小論文や学科試験といった併願には大きなリスクが伴う。
(3)専願制を破らないで済む併願・複数受験を徹底
志望校が全て併願制(特に西日本)であれば、何校受験しても問題は生じないが、専願制と併願制の複数受験なら、専願制優先に徹して臨む必要がある。併願校の方が知名度が高くても、専願校合格なら、専願校に入学するのが原則だ。
(4)専願リレー受験の場合は日程に注意
専願制間の複数受験も必ずしも不可能ではないが、十分注意する必要がある。第1志望の合格発表後でも出願の間に合う併願校をあらかじめ検討しておき、第1志望の合格発表から第2志望校の出願開始までに余裕がない場合はあらかじめ出願書類を用意しておく必要がある。
(5)納付金を無駄にしないで済む併願を実行
推薦入試の場合、専願・併願を問わず、一括納入のケースが多い。併願制の場合は、一定期間までに入学を辞退すれば、入学金以外は返還するが、複数受験では納付金をできるだけ無駄にせずに済む日程上の戦略に特に留意する必要がある。

◆国公立大における併願・複数受験の留意点

国公立大の学校推薦型選抜に関しては、併願・複数受験にきびしい制約が伴い、原則として1校1学部しか受験できないが、複数受験が全く無理かと言えば、必ずしもそうではない。その具体的な手順、留意点を紹介しておこう。

(1)第1志望は共テ免除型、第2志望は共テ併用型で受験
国公立大の学校推薦型選抜は共テ免除型が11月出願、共テ併用型が12月~1月の出願となっているケースが多いので、第1志望を共テ免除型、その合格発表後の第2志望を共テ併用型にすれば複数受験が可能になるが、大学によってダブル受験はできない場合も多いので各要項の留意事項の記載に注意してほしい。ただし、第2志望の当該校学部に推薦決定者がいない場合に限られることは言うまでもない。
(2)共テ免除型間の併願も可能
国公立大の学校推薦型選抜は全て専願制である。入試日程が短期間に集中しているが、弊社の年鑑で検討すれば、第1志望の合否発表後でも出願の間に合う第2志望校を探すことは可能である。ただし、高校推薦枠にアキがある場合に限られる。
(3)共テ併用型間の併願は不可能
共通テストを課す大学の複数受験は、学校推薦型選抜用の共テ成績請求票が1枚しかないので、自動的に不可能ということになる。
(4)国公立大と私立大の併願
国公立大と私立大の学校推薦型選抜を併願する場合、第1志望が国公立大なら、第2志望の私立大は日程からみて、併願制校を選択せざるをえない。ただ、国公立大合格なら、私立大に納付した入学金は戻ってこないと覚悟しておく必要がある。私立大が第1志望なら、国公立大への出願はしてはならない。

その他、大学によっては学校推薦型選抜募集要項に「本学以外の学校推薦型選抜への出願は認めない」などの注意書きがある場合もあるので十分注意してほしい。

ニュースフラッシュ

◆私立大医学部で学費値上げの動きが目立つ

今年になって私立大の医学部で学費を値上げする動きが目立っている。東京女子医科大は、2021年度の入学生から6年間で計1,200万円の値上げに踏み切る。コロナ禍による大学病院の経営悪化の影響とみられる。

東京女子医科大がHPで公開している入学案内によると、6年間の学費は4,621万4千円で、年間200万円の施設設備費の項目が新たに加わった。しかし、値上げの詳細な理由は明らかにされていない。

河合塾が私立大医学部の2020年度募集要項などをまとめたところ、学費(6年間の総費用)の高い私立大は次のようになっている。

順位 大学名 学費
(1) 川崎医科大 4,736万円
(2) 金沢医科大 4,054万円
(3) 埼玉医科大 3,957万円
(4) 北里大 3,952万円
(5) 帝京大 3,938万円
(6) 福岡大 3,773万円
(7) 兵庫医科大 3,760万円
(8) 杏林大 3,759万円
(9) 獨協医科大 3,730万円
(10) 久留米大 3,637万円

総額が最も高いのは川崎医科大(岡山県)の4,736万5千円。東京女子医科大は今回の値上げで2021年度から金沢医科大を上回り、2番目に高い私立大となるだろう。

昭和大医学部(東京都)は、コロナ禍の前から値上げを決めており、今年4月の入学者から6年間の総額は計500万円高い2,817万2千円。2年次からの教育・施設充実費を年間50万円から150万円にした。

学費の変更は文部科学省への届け出が必要だが、私立大はそれぞれの判断で決められる。私立大医学部の6年間の総額は1,900万円~4,700万円と幅がある。国立大医学部は標準的な額で約350万円。これなら一般的な家庭からの進学も可能だ。

数年前までは、私立大の間でも値下げの動きが目立っていたが、その流れが最近は大きく変わりつつある。背景として、教育設備に費用がかかることに加え、コロナ禍で大学病院の経営が悪化したことがあげられ、病院の経営悪化は運営する大学の財務状況に直結している。私立大医学部の一学年の定員が100人前後で、学費値上げだけで病院の赤字を補うには不十分ながら、大学全体の経営改善には資するだろう。

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