AO・推薦入試エクストラ9月10日号
私立大:2015AO入試全国統計レポート(1)
AO入試情報
私立大:2015AO入試全国統計レポート(1)
弊社が毎年実施しているAO入試に関する諸統計の結果について、数回に分けてレポートする。第1回は、私立大の学部別実施状況を中心にご紹介する。
まず、AO入試実施校は464校で、前年より5校減少し、これまでの増加傾向から一転して減少した。地区別の実施校数は次のとおりで、関東・中部地区での減少が目立つ。
北海道・東北 | 関東 | 中部 | 近畿 | 中国・四国 | 九州 |
---|---|---|---|---|---|
43校 | 168校 | 75校 | 101校 | 37校 | 40校 |
学部系統別の実施状況(複合学部は複数扱い)をみると、計1,329学部で前年より12学部増加している。昨今、学校数は伸び悩んでいるが、学部増は依然として増加傾向にある。内訳は次のとおり。
学部系統 | 2015年度学部数(比率%) | 2014年度比増減 |
---|---|---|
人文科学 | 229(17.2%) | +8(+0.4%) |
社会科学 | 478(36.0%) | -9(-1.0%) |
教育(教員養成) | 141(10.6%) | +13(+0.9%) |
理工 | 121(9.1%) | -2(-0.2%) |
農・水産・獣医 | 13(1.0%) | -3(-0.2%) |
保健・医療 | 132(9.9%) | +3(+0.1%) |
生活(栄養) | 80(6.0%) | ±0(-0.1%) |
芸術 | 74(5.6%) | ±0(±0%) |
スポーツ(健康) | 61(4.6%) | +2(+0.1%) |
本年度の実施学部数では、教育(教員養成)系の増加が最も多く、次いで人文科学系、保健・医療系の増加が目立った。近年、看護関係の学部新増設が際立っており、この系統では今後もAO実施校が増えると予測される。社会科学系の減少は、前年に続いて学部の統合・再編がかなりあったことも影響していよう。
全体の実施学部数は、推薦入試の計1,675学部と比べてまだ少なく、特に保健・医療系は実施数が推薦入試の半分程度にとどまっている。
◆私立大:2015地区別AO入試の学部実施状況
ここでは、私立大の2015年度AO入試に関する地区別の実施学部状況をご紹介する。私立大では地区ごとの実施状況にかなり差異があるので、進路指導に際しては十分留意してほしい。なお、弊社統計では複合領域の学部は複数で集計している。
系統 | 北海道 東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国 四国 |
九州 |
---|---|---|---|---|---|---|
人文科学 | 17 | 83 | 28 | 60 | 19 | 22 |
社会科学 | 40 | 178 | 76 | 115 | 32 | 37 |
教育(教員養成) | 8 | 55 | 21 | 31 | 17 | 9 |
理工 | 10 | 54 | 13 | 23 | 14 | 7 |
農・水産・獣医 | 0 | 8 | 1 | 2 | 1 | 1 |
保健・医療 | 12 | 52 | 16 | 27 | 16 | 9 |
生活(栄養) | 3 | 26 | 14 | 19 | 12 | 6 |
芸術 | 6 | 26 | 9 | 20 | 8 | 5 |
スポーツ(健康) | 4 | 18 | 14 | 16 | 4 | 5 |
(計) | 100 | 500 | 192 | 313 | 123 | 101 |
どの地区も社会科学系が最も多く、特に北海道・東北、中部の2地区では4割を超える。最も学部数の少ない農・水産・獣医系は、全13学部のうち8学部が関東地区に集中している。人気の高い教育系、保健・医療系は各地区とも相当数が実施している。
推薦入試情報
◆私立大:2014学部系統別公募推薦入試の志願動向(弊社集計)
弊社では全国版「推薦入学年鑑」の発刊と共に、私立大の公募推薦入試の動向を把握するため、多角的な統計作業を実施している。今回は、まず2014入試結果のまとめからレポートしておきたい(データ公表校を集計、一部は指定校制データを含む)。学部系統別の志願・合格状況は、次のとおりであった。
系統 | 志願者数 | 合格者数 | 倍率 |
---|---|---|---|
人文科学 | 44,802人 | 21,403人 | 2.1倍 |
社会科学 | 80,995人 | 40,264人 | 2.0倍 |
教育(教員養成) | 18,136人 | 8,098人 | 2.2倍 |
理工 | 28,633人 | 13,259人 | 2.2倍 |
農・水産・獣医 | 5,826人 | 2,247人 | 2.6倍 |
保健・医療 | 41,070人 | 14,261人 | 2.9倍 |
生活(栄養) | 12,634人 | 5,335人 | 2.4倍 |
芸術 | 5,306人 | 3,315人 | 1.6倍 |
スポーツ・体育(健康) | 9,074人 | 4,901人 | 1.9倍 |
(計) | 246,476人 | 113,083人 | 2.2倍 |
2012年度集計では約5千人、2.4%の志願減であったが、2013年度は約1万2千人、5.5%の大幅増加に転じ、2014年度も約8千人、3.3%と2年連続で増加したことが特筆される。社会科学系、農・水産・獣医系、芸術系の3分野は微減であったが、その他の分野では志願者が増加した。特に保健・医療系の大幅増が際立ち、次いで理工系でかなり増加した。過去3年、全体の平均倍率も2.0倍→2.1倍→2.2倍と若干きびしくなっているので、十分注意する必要がある。学部系統別の平均倍率では、保健・医療系が2.7倍→2.9倍と3倍台に迫っている点に注意する必要がある。次いで、農・水産・獣医の2.6倍が高い。
◆私立大:2014地区別公募推薦入試の志願動向(弊社集計)
弊社で独自に集計した2014公募推薦入試の地区別志願状況についてご紹介する(データ公表校を集計、一部は指定校制を含む)。
地区 | 2014年度 | 2013年度 | 増減数 | 増減率(前年) |
---|---|---|---|---|
北海道・東北 | 6,299人 | 6,412人 | -113人 | -1.8%(+5.5%) |
関東 | 43,856人 | 46,782人 | -2,926人 | -6.3%(+4.8%) |
中部 | 23,589人 | 24,621人 | -1,032人 | -4.2%(+4.7%) |
近畿 | 153,376人 | 141,999人 | +11,377人 | +9.7%(+6.8%) |
中国・四国 | 10,663人 | 9,634人 | +1,029人 | +10.7%(-3.5%) |
九州 | 8,693人 | 9,238人 | -545人 | -5.9%(+1.7%) |
(計) | 246,476人 | 238,686人 | +7,790人 | +3.3%(+5.5%) |
2012年度は中国・四国地区のみが志願増、その他の地区は全て志願減であったが、2013年度は全く逆の志願動向となり、2014年度は近畿・中四国を除く4地区で再び志願減となった。推薦戦線でも隔年現象が生じることがあるので十分留意する必要があることを示している。
特に注目されるのは、例年、全国志願者の5~6割が集中する近畿地区が前年に続き約1万1千人、9.7%の大幅増となった点だろう。2014年度の志願増は、この近畿地区の大幅増が主要因といってよい。中国・四国地区の志願増は、これまでデータ非公表だった徳島文理大が情報公開したことが大きい。少数精鋭戦の関東地区が1.5倍なのに対して、マスウォーの近畿地区は3倍を超える激戦区となっている。
ニュースフラッシュ
◆27年度新学部等の設置届出受理(6月分)を公表
文部科学省は、このほど6月分の学部等の設置届出受理状況を公表した。それによると、私立大の学部設置が7校、私立大の学科設置が9校で、私立短大の設置届出は皆無でとあった。
<私立大の学部設置>7校
- ■東北福祉大
- 教育学部=教育学科250(初等教育専攻210、中等教育専攻40)
- *総合福祉学部社会教育学科と子ども科学部子ども教育学科は募集停止
- ■青山学院大
- 地球社会共生学部=地球社会共生学科190
- ■工学院大
- 先進工学部=生命化学科70、応用化学科95、環境化学科70、応用物理学科65、機械理工学科65(工学部第1部の応用化学科・環境エネルギー学科、工学部第2部、グローバルエンジニアリング学部は募集停止。工学部1部→工学部へ名称変更)
- ■龍谷大
- 国際学部=国際文化学科330、グローバルスタディーズ学科120(国際文化学部は募集停止)
- ■追手門学院大
- 地域創造学部=地域創造学科150(経済学部ヒューマンエコノミー学科は募集停止)
- ■神戸芸術工科大
- 芸術工学部=環境デザイン学科70、プロダクト・インテリアデザイン学科70、ファッションデザイン学科50、ビジュアルデザイン学科80、まんが表現学科45、映像表現学科45、アート・クラフト学科40(デザイン学部・先端芸術学部は募集停止)
- ■広島国際大
- 心理学部=心理学科90(心理科学部は募集停止)
<私立大の学科設置>9校
- ■東北福祉大
- 総合福祉学部=福祉行政学科100(同学部社会教育学科は募集停止)
- ■帝京大
- 福岡医療技術学部=医療技術学科80(理工学部=ヒューマン情報システム学科→情報電子工学科へ名称変更)
- ■新潟工科大
- 工学部=工学科200(既設4学科の改編)
- ■新潟薬科大
- 応用生命科学部=生命産業創造学科60
- ■名古屋外国語大
- 外国語学部=世界教養学科100
- ■京都産業大
- 文化学部=京都文化学科100
- ■立命館大
- 薬学部=創薬科学科60
- ■神戸山手大
- 現代社会学部=観光文化学科140
- ■京都橘大
- 現代ビジネス学部=経営学科130(現代マネジメント学科は募集停止)
【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座
◆AO入試(6):AO入試で生きる生徒の個性・資質のチェック
大学入試のメインは一般入試、次いで推薦入試である。その2つと比較すれば、AO入試の受験市場は小さいが、大学入試の多様化を促進し、多彩な人材を発掘する上で、AO入試は独自の役割を担っている。2016年度からは京都大が8学部で導入する予定で、さらにAO入試への関心は高まると予測される。各高校の進路指導部をAO相談に訪れる生徒も少なくないはずである。高校側では、国公立大、私立大それぞれのAO入試の現状・特質を十分把握したうえで、入試のマッチングを検討する必要がある。
ここでは、どのような生徒がAO入試に向き、どのような個性・資質がAO入試で生きるか、(1)共通事項、(2)国公立大、(3)私立大の3つの観点から考察しておこう。
(1)共通事項
まず志願理由書、自己推薦書、活動報告書等の提出書類を通して、自分の進学目的や適性・能力・意欲等を明確に大学側へアピールできる内容性(学習・課外活動・取得資格など)と表現力を備えていることがポイントになる。とりわけ志望校の教育・研究における特性や卒業後の進路状況に関する十分な理解と、生徒自身との適合性を認識して、「明確な進学目的」を持っているかどうかを重視すべきだろう。 次に大多数の大学では、面接によって学力水準や適性・能力を判定する。面接の場で、明快に応答できる能力が不可欠になるので、応答・対話を苦手とする受験生の場合は、積極的に発言・対話・討論ができるよう指導する必要がある。
第三に、大学側が設定している「求める学生像」と生徒のマッチングを十分に検証することが大切になる。明らかに学究型や高度専門職業人の候補を求めるタイプのAO入試に、それらへの志向が希薄な生徒を送り込んでも徒労に終わる。近年は各大学とも綿密にアドミッションポリシーを明示しているので十分注意したい。
(2)国公立大
成績基準の有無にかかわらず、できる限り高学力層が適している。特に専攻教科に関連する成績水準は高い方がよい(最低でも4.3以上)。募集枠が小さい学部・学科が多いので、調査書の学習記録は合否判定できわめて重要になる。
セ試併用型では、過去の当該校の入試データ(セ試)を調べて、合格者の平均点か、悪くても受験者の平均点以上の得点を見込める学力が必要になる。言うまでもなく、医・歯・薬学系では70~80%以上の得点力が見込めないと合格は難しい。セ試の予測得点ラインが出願の可否を左右する。
また、面接や小論文に対応できる力も不可欠で、いわゆる受験勉強にはさして身を入れていなくても、個性的・自主的な学習・研究活動には熱中するタイプなら、AO入試は最適の受験ルートといえる。国公立大では志望する学問領域への高い適性および資質が不可欠といえる。
(3)私立大
私立大で最も基本的なことは、専願区分のいかんに関わらず、第1志望としての入学熱意になる。生徒が志望校を十分研究した上で、入学を希望しているかどうかが前提条件で、単に早期合格を確保したいという動機なら、再考を促す必要がある。
私立大のAO入学者比率が10%を超えている今日、私立大におけるAO入試は高度人材発掘型、高学力型、課外活動型、有資格型、入学熱意型など様々に多様化しているが、各タイプに向く生徒の個性、能力、資質等の判断はさほど困難ではないだろう。各大学のアドミッション・ポリシーに沿って、各選考パターンへの適性をチェックすればよい。特に中堅私立大群にあっては、一般入試に対応できる学力、あるいは推薦入試にふさわしい成績水準を備えていなくても、生徒の目的志向やチャレンジ姿勢次第でAO入試の門戸は広く開かれている。