総合型・推薦型選抜エクストラ9月10日号
私立大:2023総合型選抜全国統計レポート(1)
総合型選抜情報
◆私立大:2023総合型選抜全国統計レポート(1)
弊社が毎年実施している総合型選抜に関する諸統計の結果について、数回に分けてレポートする。第1回は、私立大の学部別実施状況を中心にご紹介する。
まず、総合型選抜実施校は536校となり、前年度と同様、公募制推薦よりも実施校数が多くなっている。公募制で実施していたユニーク推薦(スポーツ・課外活動推薦など)、また公募制推薦をそのまま総合型選抜に移行したケースなども若干あったためだ。
北海道・東北 | 関東 | 中部 | 近畿 | 中国・四国 | 九州 |
---|---|---|---|---|---|
50校 | 197校 | 87校 | 115校 | 40校 | 47校 |
学部系統別の実施状況(複合学部は複数扱い)をみると、計1,862学部でこれも公募制推薦より多い数字となっているが、保健・医療系に関しては、まだ公募制推薦の方が多い実施状況となっている。
学部系統 | 2023年度学部数 | 2023年度学部比率 |
---|---|---|
人文科学 | 313 | 16.8% |
社会科学 | 579 | 31.1% |
教育・教員養成 | 207 | 11.1% |
理工 | 177 | 9.5% |
農・水産・獣医 | 27 | 1.5% |
保健・医療 | 272 | 14.6% |
生活科学(栄養) | 115 | 6.2% |
芸術 | 80 | 4.3% |
スポーツ(健康) | 92 | 4.9% |
(計) | 1,862 | 100% |
本年度の実施学部数では、社会科学系、保健・医療系の増加が目立ち、生活科学系とスポーツ系を除くすべての学部系統で増加している。近年、国際・教育・医療・情報・データサイエンス・建築系の新増設が目立っており、これらの系統では今後も総合型実施校が増えると予測される。
全体の実施学部数も、学校推薦型選抜より多い数字になってきている。その要因の1つとして、学校推薦型選抜において指定校制のみへ移行している大学が増加していることがあげられる。
◆私立大:2023総合型選抜の地区別学部実施状況
ここでは、私立大の2023総合型選抜に関する地区別の実施学部状況をご紹介する。私立大では地区ごとの実施状況にかなり差異があるので、進路指導に際しては十分留意してほしい。なお、弊社統計では複合領域の学部は複数で集計している。
系統 | 北海道 東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国 四国 |
九州 沖縄 |
---|---|---|---|---|---|---|
人文科学 | 22 | 128 | 42 | 74 | 24 | 23 |
社会科学 | 42 | 240 | 85 | 135 | 35 | 42 |
教育・教員養成 | 13 | 74 | 31 | 52 | 22 | 15 |
理工 | 9 | 84 | 15 | 37 | 13 | 19 |
農・水産・獣医 | 1 | 18 | 2 | 3 | 2 | 1 |
保健・医療 | 23 | 96 | 51 | 64 | 23 | 15 |
生活(栄養) | 10 | 35 | 19 | 24 | 16 | 11 |
芸術 | 8 | 32 | 8 | 20 | 7 | 5 |
スポーツ(健康) | 5 | 31 | 21 | 19 | 8 | 8 |
(計) | 133 | 738 | 274 | 428 | 150 | 139 |
全般的には関東地区の学部数が群を抜いている。どの地区も社会科学系が最も多いが、特に関東地区では32.5%を占める。最も学部数の少ない農・水産・獣医系は、全27学部のうち18学部が関東地区に集中している。人気の高い教育系、保健・医療系は各地区とも相当数が実施している。
学校推薦型選抜情報
◆私立大:2022学校推薦型選抜の学部別志願動向(弊社集計)
弊社では全国版「学校推薦型選抜年鑑」の発刊以来、私立大の公募推薦入試の動向を把握するため、多角的な統計作業を毎年実施している。今回は、まず2022入試結果のまとめからレポートしておきたい(データ公表校を集計、一部は指定校制データを含む)。学部系統別の志願・合格状況は、次のとおりであった。
学部系統 | 志願者数 | 合格者数 | 倍率(前年度) |
---|---|---|---|
人文科学 | 48,505人 | 24,074人 | 2.0倍(2.4倍) |
社会科学 | 123,197人 | 50,160人 | 2.5倍(2.7倍) |
教育・教員養成 | 13,975人 | 7,461人 | 1.9倍(1.8倍) |
理工 | 45,469人 | 20,120人 | 2.3倍(2.3倍) |
農・水産・獣医 | 9,799人 | 5,735人 | 1.7倍(2.0倍) |
保健・医療 | 40,527人 | 19,563人 | 2.1倍(2.2倍) |
生活科学(栄養) | 9,522人 | 5,356人 | 1.8倍(1.8倍) |
芸術 | 5,218人 | 2,718人 | 1.9倍(1.6倍) |
スポーツ(健康) | 7,764人 | 5,315人 | 1.5倍(1.5倍) |
(計) | 303,976人 | 140,502人 | 2.2倍(2.3倍) |
学校推薦型選抜戦線は、2013年度以降は一貫して志願増が続いていた。2019年度には実に約34万人もの志願者数となったことが特筆される。ただ、入試改革を迎えた2021年度から2年連続で志願減となったが、今年度はほぼ前年並みとなっている。全体の平均倍率も2.9倍→2.7倍→2.3倍→2.2倍とピークだった2019年度に比べるとかなり下がっている。学部系統別の平均倍率では、教育・教員養成、理工、芸術を除くすべての学部系統で下がっており、これは志願減にも関わらず、合格者数が増加していることが大きな要因となっている。
◆私立大:2022学校推薦型選抜の地区別志願動向(弊社集計)
弊社で独自に集計した2022学校推薦型選抜の地区別志願状況についてご紹介する(データ公表校を集計、一部は指定校制を含む)。
地区 | 2022年度 | 2021年度 | 増減数 |
---|---|---|---|
北海道・東北 | 6,130人 | 6,264人 | -134人 |
関東 | 35,523人 | 37,065人 | -1,542人 |
中部 | 23,254人 | 23,625人 | -371人 |
近畿 | 223,467人 | 219,484人 | +3,983人 |
中国・四国 | 8,308人 | 8,822人 | -514人 |
九州 | 7,294人 | 7,791人 | -497人 |
(計) | 303,976人 | 303,051人 | +925人 |
入試改革初年度の2021年度は、受験者数の減少、公募制推薦から総合型選抜に移行したケースも若干あり、前年度の志願者数よりも約1万3千人減だったが、2022年度は925人増と2年ぶりの志願増に転じた。ただし、総合型・一般選抜では志願減となっており、推薦型だけが志願増となっている。地区別に見てみると、近畿地区のみが志願増、その他の地区はすべて志願減となっている。近畿地区の志願増の内訳では、理工系が約6千人増と大幅に増加していることが注目される。また、近畿地区は全国の志願者数の約7割を占めており、学校推薦型選抜に関しては「西高東低」の構図は変わっていない。
ニュースフラッシュ
◆教員免許の授与件数が特に高校・中学で大幅減
全国の学校で教員不足が目立つなか、教員免許状の授与件数が大幅に減少。文部科学省が6月に発表した2020年度は計19万6357件(前年度比7440件減)で、統計データのある2003年度以降で初めて20万件を割り、最少となっている。特に中学や高校の落ち込みが際立ち、教員の長時間労働の実態が広く知られ、教職が敬遠されている大きな要因といえそうだ。
衆知のとおり、司法試験や国家公務員総合職採用試験なども志願者の減少が続き、教職も加えた社会基盤を支える人材の確保が揺らいでいる。
文科省の諮問機関である中教審の部会では、免許件数の減少に歯止めをかけるため、教職課程の履修負担を軽減する案が議論されており、文科省は年内に答申を受け、制度改正に乗り出す方針だ。
2020年度の普通免許の授与件数の内訳をみると、小学校が2万8187件(前年比146件減)、中学校が4万4297件(同1712件減)、高校が5万2629件(同2355件減)、特別支援学校が1万2300件(同1094件減)、幼稚園が4万4225件(同1928件減)などとなっている。特に落ち込みが目立つ高校は2006年度の8万3千件から4割近くも減少。中学校は2006年度の約5万8千件から2割余減少した。
教員免許のうち、小学校は主に教員を養成する教育学部などでしか取れない。それに対して、中学・高校は理工学部・文学部・社会学部など一般学部でも取得できるため、その年度の教職人員や民間企業の採用状況に左右されやすい傾向が目立つ。
公立学校の教員採用試験の受験者はここ数年減少傾向にある。高校は2021年度採用試験で2万6163人と過去最低となり、中学校も8年連続減の4万4105人だった。免許授与件数の減少と同時に、特に2017年度以降は大きく減少した点が注目される。2017年に文科省が発表した実態調査により、中学教諭の約6割の時間外労働が「月80時間」の過労死ラインを超えていたことが知られ、これが広く影響を及ぼしたとみる向きもある。同時に留学の増加やインターンの長期化などで学生に余裕がなくなり、教職課程の履修を難しくした背景もある。
いずれにしろ、国家の基盤を支える教育分野の専門職の育成が、弱体化・退化することは許されない。この重要課題に真剣に向き合いたいものだ。